TOPPAN’s Impact

TOPPANグループでは、“Digital & Sustainable Transformation”をキーコンセプトに「DX」と「SX」によってワールドワイドで社会課題を解決するリーディングカンパニーを目指しています。医療の高度化や社会構造の変化により、求められる医療・サービスが複雑に変化していく中、ヘルスケア事業においては、他の企業様とのパートナーシップも柔軟に進めながら様々な社会の課題、ニーズに応えていくことを目標としています。
今回ご紹介するのは、ファミリーマート様との協業による「ファミマシー」の取り組みです。どのような思いが両社を結び付け、協業によりどのような未来が開かれてゆくのか。協業を通じてともに社会課題解決を目指す取り組みについて、ファミリーマート様との対談を通じてご紹介します。

⻄本 圭介 様(右)株式会社ファミリーマート クリエイティブオフィス&8

苅部 将人(左)TOPPANホールディングス株式会社 事業開発本部 事業開発統括
オンラインヘルスケア事業推進センター

オンライン×リアル店舗によるサービス展開
必要な薬を必要な方へ、いち早く

苅部
「ファミマシー」との取り組み開始から約1年、改めて振り返ると、両社の協業検討が始まったのは2021年末頃でしたね。当社グループでヘルスケアDXを手掛けるおかぴファーマシーシステム株式会社では2020年から、薬局での受け取りにご不便のある方々の課題解決として、オンラインを活用して処方せん薬をご自宅に宅配するサービス「とどくすり」を展開していましたが、さらに進化させたいという思いを事業スタート後も常に持っていました。新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけに生活者のライフスタイルが急激に変化していく中で、自宅以外でも処方せん薬を手軽に受け取れる仕組みが必要だと考えていたのです。
私たちが配達先の選択肢を増やす方法を探していた頃、ファミリーマート様が処方せん薬を店舗で受け渡すサービスの実験を重ねていると知り、双方の課題解決の取り組みを進めるために最適な協業だと感じて、お願いさせていただきました。
西本様
私たちは、社会のインフラとして多様なサービスを提供し、地域の皆さまにとって便利の先にあるなくてはならない存在を目指しています。コンビニエンスストアにどのようなサービスを期待しているのかを消費者の皆さまに伺うと、「薬を受け取りたい」という声が多くありました。店頭で処方せん薬を受け渡すという構想は、こうした皆さまのお声を受けて生まれたものです。TOPPAN様の「とどくすり」の背景には、どんなお考えがあったのですか。
苅部
オンライン診療の普及が見込まれているのに対し、処方せん薬は従来通り薬局に行かなければ受け取れないことに疑問を感じたのが「とどくすり」立ち上げのきっかけです。オンライン診療により、自宅から診療は受けられるようになりますが、薬を受け取るためには外出をしなければならない、ということであれば、医療アクセスは十分に改善されないのではないか、という課題認識がありました。そこで、病院・薬局・患者様をオンラインで結び、自宅にいながら処方せん薬を受け取れるようにしたのが「とどくすり」です。
西本様
やはり、患者様側のご不便、課題が起点だったのですね。オンライン診療との組み合わせにより、診療から服薬指導、処方せん薬の受け取りまで、全てオンラインで完結できる「とどくすり」の仕組みが素晴らしいのは、患者様の思いに立脚していたからなのだとわかります。
苅部
しかし、オンラインだけではどうしてもサービスの範囲に限界があります。デジタルが苦手なご高齢の方もいらっしゃいますし、自宅ではなく会社の近くで受け取りたい方もいます。誰もが日常生活の動線上で手軽に処方せん薬を受け取れる方法を考えた時、コンビニエンスストアほど最適な場所はありません。ですから、ぜひファミリーマート様と協業を実現したいと思いました。
西本様
TOPPAN様には、病院・薬局・患者様をオンラインでつなぐスキームがある一方、当社には地域のハブとなるリアルな店舗がある。地域社会を想う両社が縁あってつながり、オンラインとリアルの良さをかけ合わせることで生まれたのが、今回の協業ということですね。

店舗に負荷のかからないオペレーションを構築
協業開始から約6カ月で「ファミマシー」との取り組みをリリース

西本様
処方せん薬を店舗に届けるまでのスキームは、TOPPAN様に構築いただきましたが、仕組みづくりは大変だったのではないでしょうか。
苅部
それに関しては、当社の「とどくすり」サービスでも活用した当社のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の経験とセキュリティ管理ノウハウを今回のスキーム構築でも活かすことができました。
ファミリーマート様にも、数千店舗単位で「ファミマシー」を展開していくにあたってのご苦労があったのではないでしょうか。
西本様
私たちが「ファミマシー」で目指したのは、処方せん薬を受け取れる“一部の店舗がある”というレベルではなく、地域内の店舗なら基本的には“どこでも”、営業時間中は“いつでも”受け取れるサービスの実現です。そのためには、加盟店様のご理解とご協力が不可欠です。各加盟店様に「ファミマシー」の意義と仕組みをご説明し、如何にご納得いただくかは、関係当局を含め、特に丁寧に進める必要がありました。
苅部
「ファミマシー」のご説明をされた際、加盟店様の反応はいかがでしたか?
西本様
「処方せん薬」ということもあって、最初は不安の声もありました。店舗には、今日入ったばかりというアルバイトの方もいますので、オーナーの不安は当然だと思います。それでも最終的にご納得いただけたのは、店舗の負荷が増えないよう、TOPPAN様にオペレーションを工夫いただけたことが何よりも大きかったですね。
御社のスキームにより、「ファミマシー」で処方せん薬を渡すオペレーションは、医薬品という特性から安全性が第一ということを考慮しながらも、以前から店舗で行ってきた一般的なECサイトで購入した商品を店頭で受け渡すオペレーションとほとんど同じにすることができました。そのおかげで、店舗のスタッフが「ファミマシー」のために0から新しい手順を覚える必要はありません。TOPPAN様に、店舗オペレーションに関する事情をご理解いただき協力いただけたからこそ、協業スタートから約6カ月というスピードで「ファミマシー」との取り組みをリリースすることができたのです。
苅部
こちらこそ、皆さまに「ファミマシー」との取り組みに賛同いただき大変感謝しております。西本様のご尽力なしには実現し得なかったと思います。
西本様
こちらこそ関係省庁とのやり取りをTOPPAN様にお任せできたのも助かりました。おかげで、私たちは加盟店様との連携に注力することができました。

1都3県、約4500店舗で「ファミマシー」との取り組みを展開
さらなるシナジーの追求と地域社会への持続的な貢献を目指して

西本様
2022年5月26日、東京都内約2400店で「ファミマシー」との取り組みをスタートしました。トラブルなく進んでいることで他地域からも信頼いただき、2023年2月には、埼玉県、千葉県、神奈川県を加えた1都3県約4500店舗に対象店舗を拡大しました。
プレス発表をするや否や、驚くほどたくさんのメディアに取り上げていただきました。数千店舗規模での処方せん薬の受け渡しの取り組みはコンビニエンスストア業界では類を見ないということに加えて、潜在的なニーズが非常に高いサービスだったからこそ、皆さまに注目いただけたのだと思います。
苅部
私たちも反響の大きさに驚いています。「ファミマシー」との取り組みのリリースにより「とどくすり」の認知度が向上し、会員数は約14倍に急増しました。
西本様
それは初めて聞きました。とてもうれしいニュースですね。
次のステップは対象地域の拡大です。地域のハブになれるというファミリーマートの強み・特長を活かして、他の地域にも拡大していくことを目指しています。
苅部
同感です。スタートは多様なライフスタイルに合わせた処方せん薬の受け取り方法の拡大が目標でしたが、サービスを続ける中で、仕事と治療を両立しながらの多様な働き方のサポートや配送の効率化を通じた物流業における人材不足解消といった社会課題解決にも貢献できていると感じています。今後は特に、医療資源の乏しい地域にこのサービスを如何に広げていくかが重要ではないでしょうか。薬局はないけれど、ファミリーマート様の店舗はある、という地域は多いと思います。デジタル化は多くの方の利便性を向上させますが、それだけでは取り残されてしまう人々がいます。ファミリーマート様のリアルな店舗が地域のハブとなって、デジタルが苦手なご高齢な方も含めて、遠隔医療の取り組みなどその地域全体の医療を支えていくような仕組みを当社グループも一緒に構築していけたらと思っています。
西本様
それはまさに、私たちが目指している店舗の姿に通じています。ファミリーマートは生活インフラとしても期待していただいています。便利の先にあるなくてはならない存在になるための施策のひとつが、今回の「ファミマシー」です。これからもTOPPAN様と協業し、幅広い社会課題の解決にアプローチしていきたいと考えています。
苅部
こちらこそどうぞよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。
掲載内容はすべて2023年7月時点(取材時)の情報です。

TOPPANグループでは、事業活動と全社活動を通じたサステナブル経営を実践し社会的価値を創出することを目的として、「TOPPAN Business Action for SDGs」を策定しており、その中で、「革新的なヘルスケアサービスによる健康への貢献」を注力分野として特定しています。さらに、2023年5月に策定した「トッパングループ新中期経営計画」でも、注力事業のひとつにヘルスケア事業を掲げています。
私たちが目指しているのは、誰もが適切な医療にアクセスでき、心身ともに豊かに暮らせる世界の実現です。グループ内での連携強化はもちろん、多様な企業、地域、自治体との協業も促進し、DX・SXを加速させることで、スピーディかつより高度な次元での事業を通じたサステナブルな社会の実現に向けて挑み続けていきます。

企画コーディネーターからのコメント

TOPPANホールディングス株式会社
広報本部ESGコミュニケーション部

船橋 南帆美

はじめまして。広報本部ESGコミュニケーション部の船橋です。
今回からスタートした連載企画「スペシャルコンテンツ」。ニュースリリースやレポートでは伝えきれなかったTOPPANグループのサステナビリティの取り組みや戦略について、現場の声とともにお伝えしていきたいと考えています。
記念すべき初回は、事業で社会課題解決に挑む事例として「ヘルスケア」事業をピックアップ。取材を通じて、2社協業の裏話や社会課題解決への思いなどを伺うことができ、私自身も企業の事業によるサステナビリティ貢献の大きな可能性を感じることができました!
これからもTOPPANグループは目指す姿の実現に向けて、「TOPPA!!!」していきます。次回もお楽しみに。