凸版印刷株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:麿 秀晴、以下 凸版印刷)と、株式会社 ブロードバンドタワー(本社:東京都千代田区、代表取締役会長兼社長CEO:藤原 洋、以下 ブロードバンドタワー)及び、株式会社テクノハウス(本社:東京都港区、代表取締役社長:榎本 隆二、以下 テクノハウス)は、凸版印刷が進めるデジタル視覚データ(※1)活用における要素技術確立の一環として、光ファイバー/IPによる高品質高精細映像の伝送実験を共同で実施し、映像送出機器への遠隔制御操作により、約7㎞超の長距離区間を経ても品質劣化が知覚できないレベル(ビジュアリーロスレス)で、高品質/高精細映像、低遅延の伝送/表示に成功しました。実装に向けた常時制御技術実証実験に成功しました。光高速通信を用いた本システム構成では専用表示設備を必要としないため、全国に展開するショールームなどの大型LEDビジョンへの伝送により実物大/等身大での非常に臨場感の高い商品訴求が実現し、今までにない新しい体験を可能にします。
凸版印刷は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、遠隔医療におけるデジタル視覚情報の伝送品質向上に取り組んでいます。また、おうち時間が増えている状況に対し、快適な生活環境の実現に向けて日本初の4K「スローテレビ」の番組として「ナチュラルウィンドウチャンネル」を2021年4月より試験放送しています。(※2)また、本番組の素材として用いられている、超臨場感環境ソリューション「Natural Window®」(※3)や、オリジナルの高品質/高精細映像コンテンツ「Meet Japan!®」などの4K高ビットレート高精細映像デジタル視覚データの更なる活用に向けて、特殊な機材や設備を使用しないシステム構成による長距離光IP伝送実証実験に2021年11月に成功しています。(※4)
今回、光ファイバー/高品質/高精細映像コンテンツの社会実装を加速させる取り組みとして、さらなる延伸伝送/遠隔制御の実証実験を実施しました。
具体的には、凸版印刷がローカル5G基地局や高速通信などを扱う実験施設「TOPPAN DIGITAL SANDBOX® HONJO(東京都 墨田区)」と、凸版印刷の共創スペース「NIPPON GALLERY TABIDO MARUNOUCHI®」(東京都:千代田区)(※5)の区間を、ブロードバンドタワーのデータセンター「第1サイト」(東京都 千代田区)と、丸の内地区全体に光ファイバー網を持つ丸の内ダイレクトアクセスを経由し、ゼロフレームレイテンシー(1ミリ/秒を大幅に縮めた伝送性能)の低遅延、かつ画質劣化のないビジュアリーロスレス品質で伝送し、1.5mmピッチ幅の大型高精細LEDビジョンへのリアルタイム表示に成功しました。
実証実験の実施背景
総務省が毎年発表を行っている「情報通信白書」の令和3年版によると、インターネットへの接続方法は光回線が全体の54.1%と他の接続方法に比べ圧倒的な割合を占めています。また、日常感じることのない接続インフラにおいてもFTTH(※6)が普及しています。同時に、固定系ブロードバンドサービス等の契約数推移によると、国内ではおよそ3,500万件がFTTHに移行し、CATV以外では従来の接続方法からシフトしていることが確認されています。さらに光ファイバーの整備率は、令和2年3月末時点の推計で、全国平均99.1%となっており、世界的にも日本全体のFTTHは上位にランクインしているとされています。(※7)
一方で国内の累計出荷台数が1,000万台を超えた(※8)4K対応テレビの普及を受け、4Kコンテンツの新たな活用ニーズも高まることが期待されています。しかし現時点では4Kなどの高精細映像は、データ容量が大きくなり電波等で伝送するため、データを圧縮する方向性がとられています。この圧縮方法によっては高精細映像の特徴である臨場感や精緻さが不足してしまうケースがあり、高精細映像活用の課題になっています。
高精細映像の活用例として、凸版印刷が30年以上前から培ってきたDTPに起源を持つ印刷テクノロジーを応用した、超臨場感環境ソリューション「Natural Window®」は、単に休息する場合と比べてストレスを軽減させる効果があることが確認されています。現在、広く提供されている4K衛星放送等のビットレート(※9)は約10~20Mbpsが多いのに対し、「Natural Window®」や「Meet Japan!®」などの凸版印刷オリジナル高品質/高精細4K映像コンテンツは、約10倍となる200Mbpsの高ビットレートでの制作を標準とし、非線形的特性(※10)によって高精細映像ならではの品質を実現しています。
これまでは、高ビットレートの高品質/高精細4K映像を伝送するには、特殊な機材や実験環境を必要とし、かかる費用も高額となっていました。本検証ではネットワークの広帯域化により、特殊な機材を使用せずに伝送実験を実施。具体的には、HDMIケーブル1系統の出力からダイレクトに光ファイバー/IPへ変換し10Gbpsの光ファイバーを通じて伝送。受信側でHDMIに出力する、SDVoE(Software Defined Video-over-Ethernet)(※11)アライアンスが提唱する「ビジュアリーロスレス」品質での伝送と表示を行いました。
各社の役割
・凸版印刷
実証実験の総合設計、実施計画と実行制御。高品質/高精細映像を活用した映像伝送システムの映像品質評価/実証の場の提供
・ブロードバンドタワー
高速通信環境整備及び最適な設定/実証の場としてのデータセンター、ネットワークの提供
・テクノハウス
高品質/高精細映像伝送における技術的ノウハウ提供/実証機材の提供
・丸の内ダイレクトアクセス
高品質/高精細映像伝送における光ファイバーの提供
今後の目標
今回の実験を踏まえ、今後更なる距離の延伸や、超低遅延性、インタラクティブ制御やフォトニクス(※12)に対応する技術などの開発を進めていきます。また、DX-E™(※13)で必須となる「正しい情報の正しい伝達」については、これまで高品質/高精細映像を伝送する際にデータ圧縮処理によって引き起こされる品質劣化リスクから活用に制約がありましたが、本実証実験の結果を受け、デジタル視覚データの活用を今まで以上に進めていきます。
凸版印刷では正しい情報の活用によってコミュニケーションの深度や精度の向上を裏付けする、データ真正性(※14)について、専門企業や大学、病院などの機関との共同研究(※15)を進めていきます。ブロードバンドタワーでは、DXセンター戦略として現在展開する都市型DCに加えリージョナルDC、エッジDCの整備を新事業領域としてとらえ、日本全体のデジタル変革に寄与していきます。
本検証を実施した4社は本取り組みを通じて、政府が提唱する「デジタル田園都市国家構想」(※16)を実現させるデジタル視覚データ領域の活用基盤となる高速/大容量/高精細でデータ真正性の高い、通信/伝送/表示制御のシームレスな技術融合を実現。都市DXなどの新しい街づくりをはじめ、医療/防災/自動制御/製造/グローバル言語レスコミュニケーションなど多くの場面において、安全安心な社会の実現へと研究開発と社会実装を推進していきます。
画像や映像などの視覚を用いる情報。
今後AIや遠隔コミュニケーション、メタバースなどのバーチャル空間との結節や、空間演出の超臨場感活用など、多彩な生活者のシーンで革新的な表現技術、解析技術の源泉として活用されるデジタル情報資源。
※2:ナチュラルウィンドウチャンネル
現在、凸版印刷とブロードバンドタワーとブロードバンドタワーの連結子会社であるジャパンケーブルキャスト株式会社による、日本初となる4Kスローテレビチャンネルを全国CATV局へ試験放送が行われている。
参照: https://www.toppan.co.jp/news/2021/02/newsrelease210225_1.html
※3:「Natural Window®」
凸版印刷が2017年3月より提供している高品質/高精細4K映像コンテンツを活用した超臨場感環境ソリューションです。心拍変動解析などによる効果検証の結果、ただ休息する場合に比べストレスを軽減させる効果があることが確認されている。
参照①: https://www.toppan.co.jp/solution/service/pmb/naturalwindow.html
参照②: https://www.toppan.co.jp/news/2017/03/newsrelease170301.html
※4:凸版印刷とブロードバンドタワーとテクノハウス、高精細4K映像の長距離光IP伝送による高品質伝送と表示実験に成功
凸版印刷がローカル5G基地局や高速通信などを扱う実験施設として開設した「TOPPAN DIGITAL SANDBOX® HONJO(東京都 墨田区)」と、ブロードバンドタワーのデータセンター「第1サイト」(東京都 千代田区)間(約3㎞)超の長距離区間にて実施し、FTTHを活用した高ビットレートの高品質/高精細4K映像(ピュア4K)の普及の可能性を示すもので、広く社会実装させる方法として期待される結果になりました。
参照:https://www.toppan.co.jp/news/2021/11/newsrelease211115_1.html
※5:NIPPON GALLERY TABIDO MARUNOUCHI
日本の新たな価値を生み出す、 共創・発信スペース。コンセプトは「日本の魅力を、共に探る。歴史的文化財や自然遺産をはじめ、伝統芸能、四季、食などのさまざまな日本の魅力。そのような日本全国の魅力を、先端のテクノロジーによって体験し、つなぎ、未来への新しい価値を共に創造することで、豊かな社会を築いていく。」
参照: https://www.toppan.co.jp/nippongallery/
※6:FTTH
Fiber To The Homeの略称。光ファイバーを伝送路として個宅やオフィスへ直接引き込む光通信網構成方式
※7:令和3年 総務省 情報通信白書
出典引用部分 PDF版 本編【全体】 P.11、14、52、359
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/pdf/01honpen.pdf
※8:4K対応テレビ国内累計出荷台数1,000万台を突破
JEITA(一般社団法人 電子情報技術産業協会)発表 2020年8月民生用電子機器国内出荷実績(速報値)から累計。
※9:ビットレート
bit rate 電気通信やコンピューティングにおいて、単位時間あたりに転送または処理されるビット数を表し、大きな数値ほど大量のデータ伝送を意味する。通常秒毎の単位を指す。
例100Mbps(Mega bit per second)とは、1秒間毎に100メガビットのデータ伝送という意味となる。
※10:非線形的特性
入力と出力が比例の関係にならない現象に特有の性質。全体として現れる効果が、原因となる因子の効果の和にならないことをいう。
※11:SDVoE(Software Defined Video-over-Ethernet)アライアンス
SDVoE(Software Defined Video-over-Ethernet)アライアンスは、イーサーネットを利用したAV信号伝送の標準化を目的として、ハードウェアおよびソフトウェアプラットフォーム企業により、SDVoE技術を利用したエコシステム構築のための非営利のコンソーシアム
※12:フォトニクス
フォトニクス(光工学)とは、「光子(photon)」等を用いた光によるデータ処理や伝送に関する光学活用技術。荷電粒子である電子が電流を構成するエレクトロニクス(電子工学)よりも、光の特性を生かした主に高速性を活用する用途開発や、従来のエレクトロニクス技術よりも省電力で効率的な制御が可能になる事などがら急ピッチで進んでいる。
※13:DX-E™
凸版印刷は DX に必要不可欠な各種要素・パラメーター・プロトコル等を DX- E™(Elements)と規定し、正しい色の再現や質感表現
などのデジタル視覚データの品質を管理する基盤構築に取り組んでいる。
※14:データ真正性
エンターテイメントや各種映像作品は制作者による演出を含む様々な加工や映像・画像処理がなされているのが一般的だが、凸版印刷では印刷テクノロジーの中核的な理念でもある「正しい情報を正しく伝える」ポリシーから、画像・映像などのデジタル視覚データの正しさについても追求を行っており、この知見を活かした遠隔診療などへ技術応用開発も実施しています。「ナチュラルウィンドウチャンネル」においても演出を極力抑え、まるでそこにいるかのような臨場感のある環境空間の再現性を目指して制作を行っている。
参考:CEATEC2020 https://www.toppan.co.jp/news/2020/10/newsrelease_201014_2.html
※15:凸版印刷と順天堂大学、共同研究講座を開設 2021年5月31日
「救急AI色画像情報標準化講座」を開設し医学領域における画像データの真正性に関する共同研究を開始
参考:https://www.toppan.co.jp/news/2021/05/nsrelease210531_1.html
※16:デジタル田園都市国家構想
地方からデジタルの実装を進め、新たな変革の波を起こし、地方と都市の差を縮めていくことで、世界とつながる「デジタル田園都市国家構想」の実現に向け、構想の具体化を図るとともに、デジタル実装を通じた地方活性化を推進させる国家構想。
引用出典:内閣官房HP https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_denen/index.html
以 上