凸版印刷株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:麿 秀晴、以下 凸版印刷)は、次世代コンピューティング技術への取り組みとして、量子ソフトウエアに関する研究を推進しています。今回、本研究に関する、2件の論文がIEEE(※1)の国際会議「International Conference on Quantum Computing and Engineering (以下 QCE)」(※2)のポスターセッションに採択され、2022年9月19日(月)から22日(木)にポスター発表を行います。
このたび発表する論文は、光量子計算(※3)と量子機械学習に関するもので、1件は凸版印刷とblueqat株式会社(本社:東京都渋谷区、代表:湊 雄一郎、以下 blueqat)が共同で開発している新しい計算手法に関するものです。この計算手法を用いることで、誤り訂正技術(※4)の確立につながり、光量子計算の高速化を実現することが期待されます。
また、2件目は凸版印刷が取り組んでいる量子機械学習に関する論文で、学習モデルの構築過程の新しい評価法であり、この評価法を用いることで、学習の傾向を可視化し、工場での検査工程における精度や効率の向上など、実課題への機械学習の適用が期待されます。
凸版印刷はこれらの技術開発により、量子コンピュータの産業応用を目指し、将来に向け安全・安心なデジタル社会の実現に貢献していきます。
「QCE」は量子産業に向けた量子コンピューティングとエンジニアリングの世界最大級の年次国際会議として、2020年から開催されています。量子コンピューティングの科学とそれを取り巻く産業の発展に向け、論文発表やポスターセッションが行われます。第3回目となる「QCE22」は2022年9月18日(日)から23日(金)、Omni Interlocken Hotel(Colorado, USA)で開催されます。
https://qce.quantum.ieee.org/2022/
論文について
(1)Optimization of non-Gaussian state generation using tensor networks and automatic differentiation
著者:Ryutaro Nagai (blueqat inc.), Takao Tomono (Toppan Inc.)
概要:光量子方式における計算手法を開発し、高速演算の可能性を示唆しました。
(2)The characteristic of Quantum Kernel in initial learning process
著者:Takao Tomono and Satoko Natsubori
概要:量子機械学習の学習モデルの評価法を開発し、量子機械学習の可能性を示唆しました。
研究の背景
近年、高い演算処理能力と高セキュリティ性を有する次世代のコンピュータとして、量子コンピュータへの期待が高まっています。現在、より高性能な量子コンピュータの実現を目指して、超電導方式、イオントラップ方式、光量子方式など、様々なタイプのハードウエアの研究・開発が進められています。特に、光量子方式は演算機能だけでなく、量子データの送受信に関わる通信に活用されるため、重要な技術の一つとなっています。
このような課題に対し、凸版印刷は量子コンピュータ向けのソフトウエア開発のリーダー的な企業であるblueqat社と連携して、量子ソフトウエアに関する研究を推進しています。このたび、量子コンピュータの演算の高速化に向けた取り組みにおいて、誤り訂正技術の確立につながる新しい光量子計算手法を開発し、その成果が認められ、QCE22のポスターセッションに採択され、発表することになりました。
また昨今では、古典量子ハイブリッド計算(※5)による量子機械学習が実用化に近いと想定され、量子コンピュータの演算処理を正確かつ適正におこなうための量子ソフトウエアの開発が期待されています。このような課題に対し、凸版印刷は新しい評価法を発見し、その提案がポスターセッションに採択され、発表することになりました。
凸版印刷では、量子コンピュータの時代に先んじ、光量子コンピュータの高速演算機能だけでなく、量子データの送受信に不可欠な光量子通信に関する研究、および社会課題解決に向けた量子機械学習の技術開発に取り組み、DX(デジタルトランスフォーメーション)事業を通し、将来に向け安全・安心なデジタル社会の実現に貢献していきます。
今後の展開
光量子計算手法やアルゴリズムなどの基礎研究と、量子機械学習などの技術開発を通し、量子コンピュータの普及と安全安心なデジタル社会の実現に貢献していきます。
blueqat株式会社について
本社:東京都渋谷区渋谷2-24-12 39F wework内
設立:2008年12月
代表者:湊 雄一郎
事業内容:量子コンピュータ向けのソフトウエア開発キットの提供
公式ウエブサイト:https://blueqat.com/
アメリカ合衆国に本部を置く電気・情報工学分野に関する世界最大の学術研究団体であり、世界160か国以上に423,000人以上の会員がいます。URL:https://jp.ieee.org/
※2 QCE(International Conference on Quantum Computing and Engineering)
https://qce.quantum.ieee.org/
※3 光量子計算
ここでは、光の粒子(光子)を使った量子コンピュータの方式の一つです。
※4 誤り訂正技術
データ通信において発生するデータの欠落を予測して置き換える技術で、この技術によって記憶装置やデジタル通信・信号処理の信頼性が確保されています。
※5量子古典ハイブリット計算
量子コンピュータと古典コンピュータが得意とする計算領域が異なるため、古典コンピュータを使って、量子コンピュータの計算領域を抽出し、量子計算を行う、量子計算と古典計算の特長を生かした効率のよい計算手法です。
* 本ニュースリリースに記載された内容は発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。
以 上