医療ビッグデータの利活用による研究成果を発表、
医療情報分析・提供サービス「DATuM IDEA®」の利用価値を証明

 TOPPANホールディングス株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長CEO:麿 秀晴、以下 TOPPANホールディングス)は、電子カルテデータを用いて全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus、以下SLE)の治療実態を解析した論文を2024年7月30日に発表しました。SLEは、10-30歳代の女性に好発し、発熱、倦怠感などの全身症状や皮膚、腎臓、脳、関節など多様な臓器病変が現れる全身性の自己免疫疾患です。日本では約6~10万人(※1)の患者がいると報告されています。
 SLE患者においてはステロイド投与が考慮されますが、長期間にわたる高用量のステロイド投与は長期的な損傷や病的状態が続く主な原因になることが知られており、ステロイド投与量の減量はSLE患者の健康状態改善に臨床的意義があります。今回の解析成果として、生物的製剤による有意なステロイド減量効果を確認することができました。
 本論文では、次世代医療基盤法(※2)に基づき、一般財団法人日本医師会医療情報管理機構(略:J-MIMO)が保持する医療ビッグデータを、TOPPANホールディングスが提供する医療情報分析・提供サービス「DATuM IDEA®」により解析しました。
 今後も高品質かつ効率的な研究開発を支援するサービスの展開により、健康寿命の延伸と持続可能な社会の実現に貢献していきます。

プレドニゾロン(PSL)換算したグルココルチコイド(※3)1日用量の経時変化 ステロイドの減量効果を検討するため、RTX(※4)およびBLM(※5)処方前後のグルココルチコイド1日あたりの用量を調査した
プレドニゾロン(PSL)換算したグルココルチコイド(※3)1日用量の経時変化
ステロイドの減量効果を検討するため、RTX(※4)およびBLM(※5)処方前後のグルココルチコイド1日あたりの用量を調査した

論文について

・タイトル
日本の電子カルテ由来データベースを用いた全身性エリテマトーデスにおけるリツキシマブおよびベリムマブの有効性ならびに安全性に関する後向き分析
・著者名
松下一鈴、清﨑若菜、大伴卓己、松浦繁
・URL
https://therres.jp/r-open/2024/open_202407_1.php
・掲載誌
Therapeutic Research vol.45 no.7 2024

研究の背景

 未だ治療法が見つかっていない疾患に対して新薬開発を加速させるには、あらゆる疾患の治療実態を正確に把握する必要があり、治療の効果に基づく分析が重要です。しかし治療実態の把握に関して、大規模な臨床研究ではコストや時間、小規模な臨床研究ではデータの偏り、希少疾患の研究ではデータの数量、などの問題があります。そこで日常の実臨床の中で得られる医療データの分析が注目されていますが、従来のレセプトデータ分析では診療報酬に関する情報が主であり、臨床検査値などの定量的な指標に関しては情報が不足していました。
 そのような問題に対し、TOPPANホールディングスは、診療イベント毎に診断・治療に関する情報を記録した電子カルテデータを用いて、処方された薬剤に加えて臨床検査項目・検査値などの定量的な情報を2023年より提供しています。2023年6月には、株式会社ヘルスケアコンサルティング(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:小久保 欣哉)と共同で、医療ビッグデータを用いた膵がんの予測因子を解析した論文を発表しました。
 今回、指定難病の1つとして、現在全国に約6~10万人の患者がいるとされているSLEを取り上げ、治療実態を解析し、診断の一助となる示唆の探索研究を実施しました。

研究の概要

 本研究は、電子カルテデータを用いて、実臨床で治療を受けている患者群における医薬品の有効性や安全性を定量的に解析し、実態を把握することを目的に実施しました。
 「DATuM IDEAⓇ」の電子カルテデータを使用し、①SLE患者における薬剤服用量の変化、②検査値データによる血中バイオマーカーの変動、③有害事象の発現を分析し、生物的製剤の処方によるステロイドの減量効果を評価しています。
 結果としては、生物的製剤によるステロイドの減量、血中バイオマーカーの改善、有害事象の発生割合の低下が示唆されました。また、電子カルテデータを用いて治療実態を詳細に解析できることが分かりました。

今後の展開

 TOPPANホールディングスは、未だ治療法が見つかっていない疾患や希少疾患などに対して、電子カルテデータを用いて治療実態を詳細に解析します。また、今後も高品質かつ効率的な研究開発を支援するサービスの展開により、健康寿命の延伸と持続可能な社会の実現に貢献していきます。

解析・レポートサービスの概要

  本研究では「DATuM IDEA®」の分析支援サービスを用いました。電子カルテデータを用いた時系列での患者の経過分析や、疾患ごとに治療経過を把握する診療フロー分析などが可能です。
「DATuM IDEA®」 サービスサイト:https://datumidea.jp/service/

・特長
①適切な要件定義:
 匿名加工医療情報を分析しやすい形に整備した医療データを用いて、顧客のリサーチニーズを詳細に確認した上で、綿密なデータ調査を実施し、適切な要件定義を行います。
②適切な分析提案:
 専門の分析スタッフにより、市場分析からエビデンス創出まで幅広いリサーチニーズに応じた適切な分析およびアウトプットを提案します。

・想定される利用ニーズ
 ・様々な薬剤を使用する疾患診療における、薬剤治療パターンの作成
 ・薬剤使用とその効果を時系列に表す、患者個々に合わせた治療フローの作成
 ・様々な検査結果を用いた疾患重症度の分析
 ・治療アウトカムの予測、治療アウトカムに影響する因子の特定

・解析・レポートサービスでの解析例
 解析例:潰瘍性大腸炎の治療介入状況とそのアウトカムの実態把握
 解析内容:数多くの治療パターンが存在する潰瘍性大腸炎における治療フローを特定。治療パターン毎にCRP(※6)値等の検査結果を分析し、治療経過を分類することで、患者の容態状況に合わせた治療方法を解析しました。

※1 難病情報センター https://www.nanbyou.or.jp/entry/53 (令和5年)
※2 次世代医療基盤法
 正式名「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律」は、医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関し、匿名加工医療情報作成事業を行う者の認定、医療情報及び匿名加工医療情報等の取扱いに関する規制等を定めています。
※3 代謝や免疫反応、ストレス応答の制御などに関わる、副腎皮質ホルモンの1つ。
※4 リツキシマブ。2017年に本邦にて、SLEを適応症として製造販売の承認を取得した抗体製剤。
※5 ベリムマブ。2023年に本邦にて、SLEに伴う腎臓病変であるループス腎炎を適応症として適応追加の承認を取得した抗体製剤。
※6 体内で炎症や組織細胞破壊が起こると増加する、C-リアクティブプロテインと呼ばれるたんぱく質。

* 本ニュースリリースに記載された商品・サービス名は各社の商標または登録商標です。
* 本ニュースリリースに記載された内容は発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。

以  上

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