3D細胞培養技術を活用し、ヒトに近い人工細胞組織を構築
抗がん剤の効果検証への利用を目指して共同研究を推進

  • 公益財団法人がん研究会
  • 凸版印刷株式会社

 公益財団法人がん研究会(所在地:東京都江東区、理事長:馬田一、以下 がん研)と、凸版印刷株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:金子眞吾、以下 凸版印刷)は、がん研の「がん化学療法センター」内にがん研究のための共同ラボを設立。2019年6月25日より本格稼働します。
 この共同ラボでは3D細胞培養技術を活用し、抗がん剤などの創薬基盤研究に寄与する、人工細胞組織の生体模倣性の実証を目指して共同で研究を推進します。

新しく設立した共同ラボ / がん研究会外観

設立の背景

 がんの診断や治療が日々進歩する中、基礎研究分野ではさまざまながんと、関係する遺伝子が解明・特定されつつあります。また、1980年代に始まった分子生物学の分野でも、がんの発生、増殖、転移の仕組みなどが飛躍的に解明されています。
 しかし、がんの治療薬として研究・開発されている分子標的薬(※1)などの開発成功率は非常に低くなっており、その理由の一つとして従来の細胞培養による薬剤テストでは、ヒトの臨床結果を予測することが困難である点が挙げられています。
 今回がん研と凸版印刷は、従来の細胞培養よりもヒトの細胞の生育環境を生体に近づけた人工組織の構築と、それを活用した抗がん剤の評価を実現するために共同ラボを設立。抗がん剤開発成功率向上を目指して共同で研究を推進します。

 がん研は「がん克服をもって人類の福祉に貢献すること」を基本理念として掲げ、がんの診断・治療・予防に貢献するとともに、がんの本体解明研究を追求することで、世界最高レベルのがんの研究と診療を行う施設として認知されることを目指しています。その実現に向けて、臨床への応用を踏まえた基礎・臨床の双方の分野でコミュニケーションを図る研究、いわゆる「トランスレーショナルリサーチ」を進め、患者さんが満足・納得いく医療の提供に取り組んでいます。
 凸版印刷は、新たな成長領域の一つと位置付けている「健康・ライフサイエンス」分野の研究開発を総合研究所(※2)で進めており、その取り組みとして国立大学法人大阪大学大学院工学研究科に「先端細胞制御化学(TOPPAN)共同研究講座」を2017年に設置し、3D細胞培養技術に関する基礎研究を同研究科 松崎典弥准教授と共同で行っています。
 この共同ラボ設立により、がん研の持つがんの先端研究成果の知見と凸版印刷のもつ3D細胞培養技術を融合させ、生体のがん組織に近い環境を再現した薬剤テストを共同で実現していきます。

3D細胞培養技術により作製した人工組織の標本切片 左図(切片の免疫染色結果):組織内に血管管腔が形成 (がん部は茶色、微小血管は青色) 右図(切片のHE染色結果):細胞が立体的に積層 (細胞核は紫色)
3D細胞培養技術により作製した人工組織の標本切片
左図(切片の免疫染色結果):組織内に血管管腔が形成 (がん部は茶色、微小血管は青色)
右図(切片のHE染色結果):細胞が立体的に積層 (細胞核は紫色)

研究予定テーマ

1. がん微小環境を再現する人工組織の構築
2. 人工組織を用いた抗がん剤の効果の評価

共同ラボの概要

代表者:がん化学療法センター所長 藤田 直也
所在地:公益財団法人がん研究会 がん化学療法センター内(東京都江東区有明3-8-31)
役割:【がん研】 臨床、薬理に関する専門的知見と技術ノウハウの提供
   【凸版印刷】 3D細胞培養技術を活用したヒトに近い人工組織の構築・研究および、それを活用した 抗がん剤の評価・検証

※1:分子標的薬
がんの増殖を引き起こす細胞内の特定の分子を狙い撃ちし、その機能を抑制させることにより、効果的にがんを治療する薬

※2:凸版印刷 総合研究所
 凸版印刷の技術開発の中枢を担う総合研究所では、新規事業を創出するための研究開発と既存事業への新商品を提供するための研究開発を推進しています。
名称:凸版印刷株式会社 総合研究所
住所:埼玉県北葛飾郡杉戸町高野台南4-2-3

以  上

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