TOPPANグループの強みと共創力を発揮して新たな価値の創造とサステナブルな社会の実現を目指します 麿 秀晴

新体制、新グループ理念のもと、グローバルなサステナビリティ課題に挑戦

ステークホルダーの皆さまには、TOPPANグループへの変わらぬご支援、ご理解をいただき、心より御礼申し上げます。私は、社長就任以降、様々な変革に取り組んできましたが、2023年という年は、創業120年以上の歴史を持つTOPPAN にとって、大きな節目の年であり、また新たな始まりの年になりました。
既に公表の通り、凸版印刷株式会社は、2023年10月1日をもって、ホールディングス体制に移行し、新生TOPPANグループとして再スタートしました。グループ全体の経営やガバナンスは、TOPPANホールディングス株式会社が担い、各事業会社が事業推進に専念することで、意思決定のスピードアップと経営効率の向上、事業ポートフォリオ変革、シナジー最大化を目指します。
そして、この新体制のスタートを機に、グループ全体の方向性とマインドを合わせるため、グループ理念「TOPPAN’s Purpose & Values」を制定しました。TOPPANグループの全従業員一人ひとりが同じ価値観や思いで仕事に取り組み、新たな課題解決に挑戦していきます。
また、TOPPANグループは、2021年から“Digital & Sustainable Transformation”をキーコンセプトに掲げ、利益拡大のための事業再編と成長分野への投資を行う「中期経営計画」を推進してきましたが、2023年5月には、次なる成果獲得フェーズとして「新中期経営計画」を公表しました。「変革と深化の加速期」として、成長事業の収益モデルの確立とその高収益化、グループシナジーの創出とサステナブル経営の進化により、新たな価値の創造と持続的成長への取り組みを加速しています。
一方、世界に視野を広げると、2023年の夏は、世界中で多発した熱波、山火事、豪雨による自然や産業への打撃、そして過去類をみないと言われた酷暑が人々の生活をさいなみました。また、長期化するロシアのウクライナ侵攻に伴う地政学的、政治経済的なリスクの高まりがエネルギー供給や資源のサプライチェーン全体にインパクトを与え、インフレによる物価上昇が日本でも人々の生活に打撃を与えています。
こうした困難な先行不透明な状況のもと、私たちTOPPANグループは新たな船出をしたわけですが、私自身はこれからの可能性を感じています。長期化したコロナ禍における経済停滞期においても、幸いなことに、TOPPANは業績を維持し、成長することができました。それは、TOPPANが目に見えないポテンシャルを持っていたからであり、私は、このTOPPANが持つ底力を信じています。今後も、グループ企業各社が持つ様々な強みを生かし、価値創造のための連携、協業をさらに進め、TOPPANのイノベーションによってグローバルな社会課題解決に取り組んでまいります。

TOPPANグループならではの強みを生かしたビジネスモデルを推進

ステークホルダーの皆さまには、2000年に定められた、「TOPPAN VISION 21」について、まだ記憶に新しく感じていらっしゃる方もいるかもしれません。以来、TOPPANはサステナブルな社会の実現のため、社会や地球環境と調和しながら成長を続けていく方向性を示し、「印刷テクノロジー」をベースに、これを応用した多様な製品・サービスをソリューションとして提供してきました。
しかしながら、この二十数年間で、私たちを取り巻く事業環境が大きく変化したことは言うまでもありません。IT化、デジタル化の進展やAIの活用、グローバル巨大テック企業の台頭等の一方で、気候変動によるリスクの高まりや人権課題への取り組み、SDGsへの貢献など、様々な社会課題解決のための取り組みが企業に求められるようになりました。こうした変化をビジネスチャンスとして前向きに捉え、社会課題解決と事業を結び付けて新たな価値を創造することがTOPPANにとっても大きなテーマになったのです。
TOPPANは、2021年から“Digital & Sustainable Transformation”を事業のコンセプトに据えました。これまでの受注体質のビジネスモデルから脱却し、「DX」と「SX」を中心に事業を収斂し、グループの強みを生かしたビジネスモデルを推進して、成長分野・重点分野に積極投資し、利益を創出しながら持続的な成長を目指すというのがその主旨です。
TOPPANには、競争優位性の高い「強み」が多数あると思います。例えば、お客さま基盤が厚いことで様々な業界やマーケット全体と関わっていること、伴走型の誠実な営業でお客さまから信頼をいただいていること、さらに、創業以来の技術志向に端を発する高度な技術力、その応用力や専門力などです。
こうしたリソースを、各事業において、あるいは事業会社の間で柔軟に組み合わせ、共有し、協業し、連携を強めて、一気通貫でマネージしていくこと、それを、私たちは「縦ぐし」「横ぐし」を刺す、と表現していますが、この取り組みを新体制のもとで、積極果敢にすすめていきます。
例えば、新事業のひとつであるヘルスケア事業ですが、電子カルテ、健康診断や人間ドックのデータをつなげたデータ分析サービスを医療システムの設計・開発やコンサルサービス、さらに処方せん薬宅配サービスなどにつなげるだけでなく、薬のパッケージや包材材料をつくっている事業と連携したり、バイタルデータをとれるセンサをつくっている事業と組み合わせたりすることで、これまでにない新しいモデルをつくっていくことができます。そして、これをフォーマットとして高度化させて「型化」し、「プラットフォーム化」することで、より収益性の高いビジネスモデルとして社会に提供していくことができるのです。

多様な文化が息づく豊かな未来社会の実現を目指して

印刷業から始まったTOPPANグループは、今、120年以上の時を経て、新しい企業体へと進化しようとしています。社名も新たに、「凸版印刷」から「TOPPAN」に変わりました。ホールディングス化という組織変革と“Digital & Sustainable Transformation”という事業変革に加え、“TOPPAN’s Purpose & Values” という新理念、さらに「TOPPAN」という社名変更により、名実ともに、TOPPANグループは生まれ変わります。
その新生TOPPANグループが目指す社会は、“TOPPAN’s Purpose & Values”でうたわれている「多様な文化が息づく世界」です。
TOPPAN はこれまで、「印刷」という媒体を通じて社会に広く、深くかかわり、文化、教育、芸術という、人間にとってなくてはならない豊かさの実現にかかわってきました。物質的な豊かさだけではない心の豊かさに貢献できる事業を推進してきたことは、私を含めTOPPANグループの全従業員が誇りに感じていることと思います。人類史上、「印刷」によって育まれてきた「知」や文化・文明の発展への貢献には、計り知れないものがありますが、このたび、「印刷」の文字が社名から外れたことについて、一言お伝えしたいと思います。
私は、「印刷」の文字がなくなったからといって、「凸版」の魂が抜けたわけではないことを、皆さまにご理解いただきたいと思っています。1900年に大蔵省印刷局にいた技術者である私たちの創業者が、ベンチャーとしてまさにスピンアウトした時に持っていたテクノロジーそのものが、「エルヘート凸版法」という当時最新の技術でした。「凸版」という技術を持って、世に飛び出したのです。ですから、「凸版」という文字の中には印刷のコアテクノロジーだけでなく、創業者の魂が込められています。また、「エルヘート」は、ドイツ語で「高める」という意味です。「凸版」という魂を持って、常に高みを目指していく、というのが、私たちTOPPANグループの変わらない精神であり志であると思っています。
同時に、今後もTOPPANグループがサステナブルな未来社会の実現に向けて変革を遂げていくためには、それを担う人財の確保や育成、人財開発プログラムを含めた施策の充実、多様性をさらに推進する働き方の制度や仕組みづくりもスピードアップしていかなければなりません。
“TOPPAN’s Purpose & Values”のValuesの冒頭にIntegrityという言葉があります。これは主に、「誠実」「高潔」という意味ですが、従業員がお客さまに対して「Integrity」なだけではなく、企業が社会に対して「Integrity」でなければならないと私は考えています。「誠実」な企業として様々な社会課題解決に挑戦し、グローバル社会から尊敬される存在となるよう、TOPPANグループは今後も精進してまいります。
ステークホルダーの皆さまには、引き続き、ご理解、ご支援のほど、宜しくお願い申し上げます。

2023年10月
麿 秀晴