凸版印刷株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:麿 秀晴、以下 凸版印刷)は、ガラス製マイクロ流路チップのフォトリソグラフィ(※1)工法による製造技術を開発しました。フォトリソグラフィは、凸版印刷が60年におよぶエレクトロニクス事業を通じて培ってきた基幹技術で、半導体回路原版や液晶ディスプレイなどの微細加工に用いられています。この技術を用いたマイクロ流路チップの量産が実現すると、現在一般的なポリジメチルシロキサン(シリコーン樹脂の一種、以下PDMS)を金属製の型に注入する射出成形技術で作られるチップと比べ、大量生産と低コスト化が可能になります。
この技術で製造されるマイクロ流路チップは、がん検診や臨床検査などでの高い需要が見込まれるリキッドバイオプシー(血液など少量の体液を採取して行う身体への負担が少ない診断技術)分野や体外診断薬分野での使用が見込まれます。
本技術は、2021年10月8日(金)から10日(日)に開催される「JACLaS EXPO 2021 臨床検査機器・試薬・システム展示会」(会場:パシフィコ横浜)の凸版印刷ブース(展示ホール、小間番号C-12)に出展されます。
開発の背景
近年、血液などの体液サンプルを用いて、がんの超早期発見を可能とするリキッドバイオプシー検査が注目を集めています。検査には、生体適合性に優れ、光学分析に適したPDMSを材料として、射出成形法で製造したマイクロ流路チップが一般的に使用されていますが、PDMSは微細加工領域での生産性が低く、原材料である液体シリコーンの価格が高いため、チップが高額になってしまうことが普及の弊害になっています。
凸版印刷はこの課題に対して、液晶ディスプレイ用カラーフィルタの製造で培ったフォトリソグラフィ法による微細加工技術を応用し、マイクロ流路チップを製造する技術を開発しました。具体的には、ガラス基板に塗布したフォトレジスト(感光性樹脂)上に幅10μm(マイクロメートル、1μmは0.001mm)~数mm、深さ1~50μmの流路(液体や気体を流すための溝や穴)を形成し、硬化処理されたフォトレジストの上に、分注(検体や試料となる液体を注入)する穴の開いたカバーが装着されます。
この工法によるマイクロ流路チップは、PDMS製のチップと比較して同等あるいはそれ以上の特性を持ち、さらに大量生産と低コスト化が可能になります。
本製品の特長
血液や細菌、細胞などを分析する用途向けのマイクロ流路デバイスでは、深さ50μm程度の「深い溝」を必要とするケースがあります。凸版印刷は、フォトレジストの組成や露光プロセスを見直すことで、幅広い分析用途向けに最適な流路のデザインを提供することを可能としました。
スマートフォンやタブレット、PCなどのデジタル機器向け液晶カラーフィルタ向けの製造装置を使用することで、大型のガラス基板上にマイクロ流路チップを「多面付け」して生産することが可能です。
今後の目標
凸版印刷は、今回試作に成功したガラス製マイクロ流路チップの実用化に向けた実証実験をパートナー各社と行い、フォトリソグラフィ法による量産化技術を2022年3月を目途に確立、製品化に取り組みます。
「JACLaS EXPO 2021」について
名称: JACLaS EXPO 2021-臨床検査機器・試薬・システム展示会-
会期: 2021年10月8日(金)~10日(日)
開場時間: 9:00~17:30(最終日のみ14:00まで)
会場: パシフィコ横浜 展示ホール
主催: 一般社団法人 日本臨床検査機器・試薬・システム振興協会
公式サイトURL: https://jaclas.or.jp/exhibition/
感光性材料(フォトレジスト)を塗布した物質の表面を、紫外線などでパターン状に露光することで、露光された部分と露光されていない部分からなるパターンを生成する技術。主に、液晶ディスプレイパネル、半導体集積回路、半導体パッケージ基板などの製造に用いられる。
* 本ニュースリリースに記載された内容は発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。
以 上