TOPPAN’s Insight

2023年10月、TOPPANはグループ全体でのシナジーを最大化することを目指してホールディングス体制に移行し、新たな変革の道へと踏み出しています。また、体制変更を機にグループの存在意義・価値観として「TOPPAN’s Purpose & Values」を制定しました。
今回は、新生TOPPANグループの展望やサステナビリティ経営の方向性などについて、TOPPANホールディングスの代表取締役 副社長執行役員 COOの坂井和則と社外取締役の中林美恵子氏の対談を通じてご紹介します。

坂井 和則(右)
TOPPANホールディングス株式会社 代表取締役 副社長執行役員 COO

中林 美恵子(左)
TOPPANホールディングス株式会社 社外取締役

社名から「印刷」を外すという決断
~「TOPPAN’s Purpose & Values」に込められた想い~

坂井
TOPPANグループは印刷を祖業とする企業ですが、現在、紙の印刷ビジネスが占める割合はすでに3割を切る状況になっています。以前から、お客さまに「凸版印刷は既に印刷だけの会社ではないよね」と言われることも多々あり、社名変更については長く議論されていました。そうした経緯もあり、ホールディングス化を機に社名から「印刷」を外そうという決断に至りました。
これには、今後DX・SXによる事業ポートフォリオの変革を推し進めようとする中で、グループ全体で方向性を同じくし、印刷業という枠を超えて社会的価値を創造できる企業になろうという決意も込められています。
中林
時代が目まぐるしく変化する中で、グループが一丸となって頑張っていこうという思いが、社名変更からも感じられます。2021年からリ・ブランディングメッセージとして「すべてを突破する。TOPPA!!! TOPPAN」を発信してきたこともあり、祖業をリスペクトしながらもイノベーション力を発揮して新しい時代に挑もうとする姿勢を示すには、絶好のタイミングだと思います。2024年は実行力がより一層問われる年になってくるのではないでしょうか。
坂井
私は以前から、業種柄TOPPANは非常に受け身な社風だと感じています。お客さまのビジネスを支える縁の下の力持ちという立場で、自ら表に出ようとしない風土があったように思います。これからはより積極的に、思い切った提案もできる企業体質や文化に変えていきたい。今回の社名変更にはそのような期待も込めています。
中林
それは「TOPPAN’s Purpose & Values」にも組み込まれていますね。ホールディングス化によってグループ全体に横串を通し、一つになっていくために、この「Purpose & Values」は大切な役割を果たすものだと考えています。
大変興味深かったのは、「Purpose & Values」を策定する過程です。トップダウンで決めるのではなく、社内外のアンケート等を通じて2万人以上から意見を集め、みんなが参画してできあがっている。多くの人の知見を持ち寄って一つのものを作り上げるというやり方は、とてもTOPPANグループらしいと感じました。この過程の中に社会的価値の創出につながるヒントが出てきていると思うので、ぜひもう一度振り返ってほしいです。

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坂井
意見を集約し、まとめ上げるのには相当な労力がかかりましたが、社内浸透という点ではその過程は非常に大きな意味を持つものだったと思います。一人ひとりが「Purpose & Values」の策定に関わることで、理解や受け入れる気持ちにも大きな違いが表れると考えています。
私たちはこれまで「人が持つ感性とイノベーション」が事業成長の源泉であると言い続けてきました。その中の強みや価値観を引き継いだものがこの「Purpose&Values」です。
Purposeにある「人を想う感性と心に響く技術」の根底には、私たちのビジネスを通じて文化、ひいては人の幸せや豊かさにこれからも貢献し続けたいという願いも込められています。そのDNAを引き継ぎながら、ビジネスを広げていこうという想いを、改めて明文化することができました。
中林
印刷は人と人とをつなぐ、まさに「文化」だったということですね。人と文化を中心に据えているというのは、私としても従業員一人ひとりにとっても、非常に納得感のある考え方だと思います。

世界の課題解決に向けた挑戦
~グループの力を結集し、お客さまの期待を超える価値創造を~

坂井
グローバルを見据えるという点で、TOPPANは2020年に「Business Action for SDGs」を設定し、ホールディングス化後も継続して目標達成に向けて取り組んでいきます。事業活動マテリアリティとして「環境」「まち」「ひと」をテーマに挙げ、社会課題に取り組むことが私たちのビジネスの基本路線であるということを明確に示しています。
さらに、これらのテーマを中期経営計画に組み込み、各事業会社や事業部で目標に紐付けて行動しているというところが、最大の特長だと考えています。
TOPPANグループのマテリアリティ

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中林
サステナビリティについてはグループ全体でしっかりと取り組み、サステナビリティレポートでも詳細に報告していて、TOPPANグループのアピールポイントの一つとして打ち出せるものだと感じています。
世界がドラスティックに動く中、日本だけでなくグローバルでも社会課題解決に貢献していくことは非常にチャレンジングで難しいものですが、TOPPANグループは真面目にこつこつと課題解決に貢献できる企業だと思っています。TOPPANグループには、人と人をつなぎ文化で共通言語を作っていけるというポテンシャルがありますので、これまで日本のビジネスで蓄積してきた精神や技術でまずは日本の課題を解決し、それを世界に伝播させていくことが期待されます。従来はそれを印刷分野を中心に実行してきましたが、今後はデジタルも含めてイノベーションを続け、自信をもって発信していくことが重要だと思います。
坂井
TOPPANグループが培ってきた真面目さとひたむきさを、グローバルなビジネスでも大切にしていかなければと思いますね。今年も海外のグループ各社を訪問したのですが、「Purpose & Values」やTOPPANグループのビジネスを深く理解し、将来性を感じて前向きな姿勢を持ってくれていることを感じられたのは、とてもうれしい経験でした。
一方で、長年にわたって多岐にわたるソリューション、商材、サービスを培ってきたが故に、TOPPANグループ全体で提供できる価値の全体像をお客さまに伝え切れていないという課題も感じています。今後はTOPPANホールディングスを中心に体制を整え、グループ全体のシナジーをこれまで以上に発揮できるようにしなければと思います。あらゆる社会課題に対して、TOPPANグループとしてソリューションを提供していきたいですね。
中林
TOPPANグループには、お客さまから「これはできますか?」と聞かれたら何でもできてしまうぐらい、たくさんの技術があり、多くの専門家を抱えています。あまりにも色々なものがあるため、逆に長所を発揮できなくなっているということかもしれませんね。日本が豊かな時は良かったのですが、2022年ですでに一人当たりGDPはG7で最下位にまで落ち込んでいます。そのような中であれもこれもやっている余裕は日本全体になくなっているのではないかと感じます。だからこそTOPPANグループも、グループの力を結集し、課題解決をうまくパッケージ化して効率性を高めながら人々の生活を豊かにできるようなソリューションを考えていく必要があるのではないでしょうか。
例えば、一つの地域を考えたとき、課題が一つしかないということはあり得ません。少子高齢化、医療や教育、住環境など様々な課題を抱えているはずです。それらに対して、TOPPANグループが持つ様々な技術やサービスを組み合わせ、丸ごと解決できるようなパッケージを生み出すことができれば、日本のみならず世界のあらゆる地域に展開できそうです。
坂井
お客さまと向き合う中で、「TOPPANグループにこれをやってほしい」と言われたときに、裏に隠れている本当の課題、本当に解決したいものは何かということを考え続け、提案し続けることこそがお客さまの期待を超える仕事に結びついていくのだと思います。今後はここをもっと強化していきたいです。

「Proactivity」で世界から評価される企業に
~人財や技術などグループの多彩な資本を活用~

坂井
先ほど、専門家を多く抱えているとのお話をいただきましたが、多彩な人財という資本こそが、TOPPANグループの強みです。営業や管理部門、企画やデザイン、研究職など、専業の企業に匹敵するような人財がひしめきあっています。そういった人財の更なる活躍の場を生み出すためにも、まずは企業の理念を一人ひとりに理解してもらうことが一番重要です。
今回、Valuesの一つに「Proactivity(周囲に先がけて考え、スピーディーに行動する)」を入れました。それ以外の3つ(Integrity、Passion、Creativity)は、従来TOPPANが掲げてきた「誠意」「熱意」「創意」が元になっていますが、「Proactivity」は新しく付加した価値観です。これまでは受注型のビジネスでしたので、間違いのないものを確実にお届けしなければという思いから、慎重かつ安全に仕事をすることが多かった。しかしこれからは、失敗を恐れずに挑戦する姿勢を持った人財になってもらいたい、そういう人財を育てていかなくてはと考えています。
中林
同感です。加えて、TOPPANグループがさらにチャレンジングになっていくためには、確固たる経営資源も重要です。日本では今、研究に振り向ける資源がどんどん減少していて、短期的に成果を出すことが求められ、10年、20年、30年かかるような基礎研究ができないと言われています。企業でも、あまりにも目先のことばかりを追い求めると、未来につながる種が育ちにくい可能性も考えられます。そういった意味で、将来を見据えて活動するためにも、強固な財務基盤が求められます。
一方で、時代の流れを捉え、削ぎ落とすべきものを決断することも必要でしょう。TOPPANグループは多くの技術や知見を蓄積してきていますが、今後は芽が出るものがどれなのかを見極める大事な時期に来ていると思います。
坂井
研究開発についてはこれまでも幅広く手がけてきており、数多くのテーマに挑んできました。しかしながら、本当に将来性のあるものに集中すべきという考えもあり、テーマの見直しも始まっています。成長分野に関しては思い切った投資を行い、大学等のパートナーと協力をしながら取り組もうという動きも出ています。
私が今注力したいと考えているのは、サーキュラーエコノミー分野です。カーボンニュートラルの面でも地球資源の面でも避けて通れない課題ですし、TOPPANグループのビジネスにも大きな影響がある領域だからです。TOPPANグループがサーキュラーエコノミーのリーダー的存在となり世界に貢献するために何をすべきなのか、今から準備していかなければなりませんし、業界を超えたグローバルでの連携も視野に入れる必要があると考えています。
中林
TOPPANグループを含め、日本では企業も政府も世界に対してルールメイキングを行うような動きが少なく、他国に追随しているという印象があります。課題に気が付いている企業が他の企業や業界をまとめたり、同じ問題意識を持っている他国・地域の企業と連携したりしてコミュニティを拡大することで、世界における発言力を高めていくということも、将来的には求められるでしょう。

むすびに
~これからのサステナビリティ経営の推進に向けて~

坂井
TOPPANホールディングスは2023年にESG指標の一つである「DJSI World」の構成銘柄に2年ぶりに選定されました。こういったESG指標に対応していく一番の意義は選ばれること以上に、グローバル標準のトレンドを知ることだと考えています。こういった潮流をしっかりと捉え、サステナビリティに対して真剣に取り組んでいかなければならないと思います。
中林
ESG指標に選定されるにはあらゆる項目に対して分析を行い、対応することが求められると思います。もちろんその後のフォローアップも必要になります。しかし、こういった努力を重ねることで世界的に評価されることを期待しています。
ここまでお話ししてきたことを踏まえると、2024年はTOPPANグループにとって大切な1年になると改めて感じています。「Purpose & Values」の下、気持ちを一つにする。そして、チャレンジ精神を発揮し、失敗を恐れず、失敗したとしてもそこから学んで前進していく。そんな企業グループになっていってほしいと思います。
坂井
そのような期待に応えられるよう、グループ一丸で頑張っていかなければと思いを新たにしています。ありがとうございました。

新生TOPPANグループが船出を迎えた2023年は、地政学的・政治経済的なリスクの高まりや酷暑や山火事・豪雨等による自然災害、それらによる産業への打撃などが発生し、今も先行き不透明な状況が続いています。
そのような中にあっても、TOPPANグループ各社や従業員一人ひとりがポテンシャルを発揮することで、事業の成長を実現し、社会に価値を提供し続けることができると、私たちは確信しています。
グループ全体の力を結集することで今までの考え方、やり方を突破し、イノベーションを通じてワールドワイドに社会課題を解決する「社会的価値創造企業」となるために、TOPPANグループはこれからも歩みを進めます。

企画コーディネーターからのコメント

TOPPANホールディングス
株式会社
広報本部
ESGコミュニケーション部

船橋 南帆美

広報本部ESGコミュニケーション部の船橋です。
前回からスタートした連載企画「スペシャルコンテンツ」。第2回目となる今回は「新生TOPPANグループのサステナビリティ経営」について取締役二名の対談です。社内・社外の取締役それぞれの視点からTOPPANグループの事業を通じた世界の社会課題解決に向けた想いを語ってもらいました。非常に活気あふれる議論が交わされ、変革を越えた先のTOPPANグループの未来に期待が高まりました。
第3回以降も「TOPPAN’s Impact」と「TOPPAN’s Insight」の2つのテーマで紹介していく予定です。次回もお楽しみに。