TOPPANグループのデジタル技術で、地域の課題を解決し、「安全安心で豊かなまちづくり」に貢献する。 TOPPAN’s Impact

TOPPANグループは“Digital & Sustainable Transformation”をキーコンセプトに「DX」と「SX」によってワールドワイドで社会課題を解決するリーディングカンパニーを目指しています。特に注力すべきマテリアリティ(重要課題)の一つに「まち(安全安心で豊かなまちづくり)」を掲げ、国内人口減少・都市人口集中などによる多くの社会課題に対して、高度なデジタル技術の推進により、その地域に最適な安全で利便性の高いサービスを提供しています。2030年度までに「地域に最適化された住民サービスを展開する自治体数」を150自治体にすることを目標としています。

今回ご紹介するのは、長野県飯綱町とTOPPANデジタルの拠点の1つである「ICT KŌBŌ® IIZUNA」の連携による、デジタルを活用した地方創生の取り組みです。「エンジニアが職人として集う場所」というコンセプトのもと立ち上げられた「ICT KŌBŌ®」は現在全国5か所に設置され、その土地の産業のDXや自治体との協業による地域のDXなどに取り組んでいます。地方に拠点を構え、深くエンゲージメントを築きながら地域の安全な暮らしやデジタル人財育成を支え、地域特有の課題を解決する取り組みについて、飯綱町長・DX推進室長を交えて対談を行いました。

峯村 勝盛様(右)
長野県飯綱町長

笠井 竜介様(中央)
長野県飯綱町 企画課 企画係 DX推進室長

堀田 瑞穂(左)
TOPPANデジタル株式会社 事業開発センター ボーダレスイノベーション本部 函館サテライトオフィス

学校跡地を活用するアイデアから始まった、デジタル拠点「ICT KŌBŌ®」の取り組み

峯村様
飯綱町は長野市の北に位置する人口約1万人の小さな町です。主要産業は農業で、特にリンゴの生産が有名です。近隣の自治体に比べると名所や観光資源などに乏しく、特徴がないと言えるかもしれませんが、長野市が近くお勤めの方や、農業に従事する方など多種多様な方々が暮らす中でそれぞれの人の顔が見えるような、バランスの取れたちょうどいい規模だと思っています。

飯綱町所在地
(画像出典:飯綱町公式ウェブサイト「長野県飯綱町移住定住支援サイト」)

堀田
私は転勤をきっかけに飯綱町で2年半暮らしましたが、それまで長野県に来たことはありませんでした。飯綱町でどのような生活が待っているのだろうと思っていましたが、何よりも人の温かさを感じることが多かったですね。仕事で知り合った方とプライベートなつながりが深まり、晩ごはんを差し入れていただくなど本当によくしていただきました。自然環境の豊かさも魅力で、きれいな景色を見ながらの車通勤はストレス解消になっていました。
峯村様
町として、美しく豊かな自然環境は維持していきたい要素です。加えて、次世代を育てていきたいという思いが強くあります。ただ、現実として児童数の減少は起きており、平成17年(2005年)に牟礼村・三水村が合併して飯綱町が生まれた際、4つあった小学校を2つに統合する動きがありました。そこで使われなくなる校舎の跡地利用について悩んでいた時、銀行を介し凸版印刷(現・TOPPANグループ)を紹介いただき、現在に至る関係が生まれました。
笠井様
当時のご担当から、「この地域を活性化するのに、学校跡地を利用し、仕事を創出する拠点にしませんか」と提案いただき、複合施設「いいづなコネクト」が誕生しました。「いいづなコネクト」にはオフィスが入居するだけでなく、カフェや店舗、児童クラブや高齢者向けジムなどもあるので、自然と人の交流が生まれるとともに、働く場の確保にもつながっています。
堀田
TOPPANデジタルの拠点「ICT KŌBŌ®」は、TOPPANグループのDX・SXを推進する開発拠点という位置付けであり、「雇用創出/人財採用」「ニアショア開発」「新規ソリューション開発」「新規研究開発」「行政との連携」の5つのミッションがあります。そのなかで「雇用創出/人財採用」は特に重要な取り組みだと考えています。
「ICT KŌBŌ®IIZUNA」は、「いいづなコネクトEAST」内の2つの教室に入居しています。エンジニア人財の獲得競争が激しくなる一方、「地方で働きたい、地元に残りたい」というエンジニアも数多くいました。そうした人財の受け皿になる場所を作ろうという思いから、第1号として2020年に飯綱町に拠点を開設しました。

「ICT KŌBŌ® IIZUNA」が入居する旧三水第二小学校校舎を活用した施設「いいづなコネクトEAST」

「ICT KŌBŌ® IIZUNA」オフィス

笠井様
私は地域振興係としてTOPPANの皆さんと学校の跡地利用に取り組み、その後DX推進室に異動してからもICT KŌBŌ®と一緒に仕事をしています。町の抱える課題を相談し、どのようにデジタルを活用すれば解決や効率化につながるかを協議しながら、様々な取り組みを進めています。
堀田
ICT KŌBŌ® IIZUNAを設けた当初から、私たちは町のことを知ろうと努めてきました。例えば、知り合った農家さんの協力を得て、農作業のお手伝いをさせていただく。そうすると現場作業の大変さに気づきますし、「どんな工夫をされているんですか?」とお尋ねすると様々なことを教えていただけます。そのようなコミュニケーションを通じ、お互いの仕事を理解し、お困りごとも相談いただけるようになります。そうした関わりの中で、まちの情報集約・発信サービス「PosRe®(ポスレ)」が生まれました。

町民や町職員の困りごとに寄り添い、デジタルの力を活用してソリューションを提供

堀田
「PosRe®」は、LINEや住民アプリ等と連携して地域の情報を収集・管理・発信できるほか、IoT機器連携による防災システムとしても利用可能なサービスです。「PosRe®」誕生のきっかけは、ある学校のPTA会長にお話を伺ったことでした。毎年、夏休みなどの前に保護者の方を集めて通学路における危険箇所の聞き取りをしたり、手書きのマップを作成したりしていたそうなのですが、どうしても情報が不正確になったり、実際の状況がイメージできないなどの課題がありました。情報は教育委員会等に報告し、対応を行っていただいていたそうなのですが、PTA会長が変わるとステータスがわからなくなってしまったり、翌年同様の情報が寄せられたりなど、情報管理に課題があったといいます。それをお聞きして、こうした情報を効率的に一元管理できるサービスがあれば、様々な方の業務支援にもつながるはずだと考えました。当時はICT KŌBŌ® IIZUNAができて2年目で、新しいサービスをゼロから立ち上げた経験のあるスタッフもいない手探りの状況でしたが、解決に向けてスタートを切りました。
笠井様
町では道路や水路、防災拠点など様々な施設・設備を管理しており、それぞれに担当職員がいます。遠く離れた場所にある施設も人の目で確認をしなければならず、確認後には庁舎に戻り、デジタルカメラで撮影した現場の画像を保存して書類にまとめて印刷をして…という作業も必要でした。そんな状況をTOPPANの皆さんに伝えたところ「町内にセンサーを置いてみたらどうか」「アプリを使って現場で撮った写真と位置情報を送ればいい」などの提案をいただき、それらが「PosRe®」に反映されていきました。結果として現場に職員が出向く前に、場所が正確にわかり、現場の状況が把握できるので、何人かの職員で対応方法を検討でき、より迅速に現場対応ができるようになりました。
堀田
「PosRe®」を生み出す工程の中で、笠井様にお話しいただいたような課題をたくさんお聞きするとともに、地域の皆さまや社内から様々な力をお借りしました。多くの方々と一緒にものづくりのステップの楽しさを実感しながら作り上げていくという経験は、私たちにとってかけがえのないものになりました。そうして誕生した「PosRe®」は、他の多くの自治体でも活用いただけるものになったと自負しています。
笠井様
TOPPANの皆さんが現場の生の声を聞き、私たちと一緒に考え汗をかいてくださったことは、町としても非常にありがたかったです。「PosRe®」を導入したことで、町民から寄せられた情報を管理するだけでなく、対応状況などをまとめて発信したり、町民それぞれが自発的に情報を取得できる仕組みもできました。自分たちの伝えたことが活かされているということがわかるのは、町民の安心感にもつながると思っています。

PosRe®サービス概要

「安心安全で豊かなまちづくり」を目指し、Win-Winの関わりを深めていく

峯村様
現在は「PosRe®」の活用だけでなく、小学校でのタブレットを活用したデジタル教育プログラムなどでも連携を進めています。近年、若い方が町に多く転入していることは、こうした取り組みと無関係ではないでしょう。省庁や他の自治体からの見学希望もたくさんいただき、「TOPPANのような会社が来てくれるということは、飯綱町にはまだまだ伸びしろがあるということだ」と言っていただけます。特徴のない町に「大きな特徴ができた」という実感があり、非常にうれしく感じています。
また、農産物は「収穫して売るだけ」というイメージの方もいらっしゃるかもしれませんが、農業は実は小さな商社のような仕事です。何をどうやって生産し、どう加工して、どこでどのような売り方をするか。貿易にまでつながる大きな産業として農業を捉えて発展させたいですし、外からさらに人が入ってきてくれるようにもしたいと願っています。農業だけでなく、教育や福祉、日常の買い物なども、ICTの活用によってより便利にできるはずで、TOPPANとの取り組みを通じて町民にもその効果が実感できるようになりつつあるのではないかと考えています。
笠井様
TOPPANとの協働によって、住民目線の課題解決にデジタルを活用するという点では一定の成果が上がったと感じています。一方で、町の職員におけるデジタル人財の育成にはまだまだ課題があります。これからの町のDXには職員の力が不可欠なので、そういった面でもさらに連携できることがあればと考えています。現在も2週間に1回は定例会を実施し、新しいプロジェクトが生まれています。飯綱町がモデルケースとなって地方活性化の好循環ソリューションが全国の自治体に広がっていけばいいですね。
堀田
TOPPANとしても、飯綱町に拠点を構えることによって、地方が有するポテンシャルの強さを実感することができました。この町での取り組みがきっかけとなり、ICT KŌBŌ®は全国5拠点に広がっています。飯綱町の皆さまのお力添えがあったからこそ、最初に素晴らしいモデルケースを作ることができたのだと強く感じています。そうした現場の声や要望に、TOPPANグループのデジタル技術を結びつけて、柔軟な発想で新しいものを作る取り組みを今後も加速させていきます。
峯村様
今、「いいづなコネクトEAST」に隣接する場所で若者向けの住宅の建設を考えています。将来的に、移住とまではいかなくても、TOPPANの社員の皆さんが夏の間にご家族と一緒に飯綱町に来て、夏休みを過ごしながら仕事をするというのもいいのでは、などと考えています。そういう形で交流人口を増やすなど、子どもたちの可能性を広げるような取り組みにもつなげていきたいですね。今後も、飯綱町が抱える課題に対し、TOPPAN独自の技術や知識を融合させ、両者のWin-Winの関係をより深めていければと期待しています。

※掲載内容はすべて2024年12月時点(取材時)の情報です。

日本には792の市、23の特別区(東京都区部)、743の町、183の村があります(2024年10月時点)。それぞれのまちには特有の課題があり、解決の方法も様々です。しかし、ひとつの自治体で生まれた成功事例やソリューションが他のまちの課題解決につながり、よりよい暮らしを実現するきっかけとなる可能性は大いに期待できます。
TOPPANグループは、特に注力すべきマテリアリティ(重要課題)である「まち(安全安心で豊かなまちづくり)」の実現のため、ICT KŌBŌ®をはじめとして、様々な自治体様や地域の皆さまとともに、全国で様々な地方創生の取り組みを進めています。TOPPANグループは、安全安心で豊かなまちづくりの実現を目指し、これからも、それぞれのまちに暮らす皆さまに寄り添い、ともに未来を拓いていきます。

企画コーディネーターからのコメント

TOPPANホールディングス
株式会社
広報本部ESG
コミュニケーション部

西﨑 文茄

はじめまして。広報本部ESGコミュニケーション部の西﨑文茄です。
今回のスペシャルコンテンツでは、長野県飯綱町とTOPPANデジタルの連携による地方創生の取り組みをご紹介しました。学校跡地を活用したデジタル拠点「ICT KŌBŌ® IIZUNA」での活動や、地域課題に寄り添ったサービス「PosRe®」の開発秘話には、地方のポテンシャルを活かしながら新しい価値を創出するヒントが詰まっています。取材を通じ、町と企業が共に課題を乗り越え、未来を拓く姿勢に非常に感銘を受けました。
TOPPANグループはこれからも、地域に寄り添いながら課題解決に挑戦していきます。次回もぜひお楽しみに!