基本的な考え方TOPへ戻る

グローバルな政治・経済情勢の変化や数々の紛争、気候変動に伴う環境問題、デジタル化の進展によるサイバー攻撃の巧妙化、加えて、強制労働をはじめとする人権課題等、企業を取り巻くリスクが多様化、複雑化し不確実性の時代となっています。
全世界で幅広い事業を展開しているTOPPANグループにとって、こうした中から影響の大きい、重要性の高いリスクを的確に認識し、適切に管理し、未然に防ぐことや対応策を講じることは、非常に重要な経営課題であると認識し、年1回のリスクアセスメントを通じて「重大リスク」として把握しています。
なお、リスクが顕在化した場合には、危機管理体制に基づき、情報収集を迅速に行い、総合的かつ戦略的に対応することで損失を最小限におさえ、事業の継続、社会からの信頼の確保に努めています。

平時のリスク管理体制および「重大リスク」選定プロセスTOPへ戻る

TOPPANグループでは、全社的リスク管理体制の第一線である事業会社が各事業に重大な影響を与えうるリスクの洗い出しとその対応策を検討します。次に第二線であるTOPPANホールディングス内の各コーポレート機能部門が、それらのリスクの発生頻度と発生した場合のインパクトの強弱を評価し、対応策の十分性・実効性についても検証します。中間期には期初に立てたリスク対応策について、最新のリスク関連動向を踏まえた上で、進捗状況チェックと適宜見直しを行っています。第三線である経営監査室は、第一線、第二線が適正に機能しているかを分析評価しています。分析評価した内容は、代表取締役社長、取締役会、監査役会に対して報告しています。
上記プロセスを経て、特に経営に与える影響が大きいと考えられるリスクを「重大リスク」とし、サステナビリティ推進委員会(委員長:代表取締役社長)の下部に設置されたコーポレートESGプロジェクトのひとつである「リスクマネジメントWG」(リーダー:リスク管理担当役員、メンバー:リスク担当者、事務局:法務本部コンプライアンス部)で検討し、同委員会の承認を受ける形で毎年度、決定しています。「重大リスク」検討においては、当社が選定している「マテリアリティ」への対応、各事業会社におけるリスクアセスメント結果、社会情勢、中長期視点での顕在化の可能性などを踏まえています。
リスクマネジメントWGは、サステナビリティ推進委員会に対しては定期的に活動を報告しており、同推進委員会では、独立社外取締役も参画する「TOPPANグループESG経営推進会議」と連携して、独立的・客観的視点を踏まえたリスクマネジメントに関する議論が行われています。
リスクマネジメントWGは、リスク管理担当役員の監督のもと、事業部門とは独立したプロジェクトとしてリスクマネジメント活動を推進しています。
2024年度は19項目を重大リスクとして定めました。なお、それぞれのリスクは、コーポレート機能部門を中心に対応計画を策定し、徹底した管理を実施しています。さらに、これらリスクへの対応状況については、定期的にリスク管理担当役員から取締役会へ報告しています。
なお、不確実性の時代となり、これまで以上に「平時のリスクマネジメント」の重要性が増していることを踏まえ、全社的リスクマネジメント体制のさらなる強化を進めました。具体的には、2024年4月1日より、新たにChief Risk Officer(CRO)を任命し、それを補佐する部署としてリスク統括部署(GRC本部)を新設しました。
CROの指揮のもと、リスク管理手続きやリスクマネジメントを議論する会議体のあり方を含め、全社リスク管理体制の検討、見直しを図り、監督側(取締役会レベル)、執行側(経営会議レベル)の双方にリスク管理について討議する委員会を設置する予定です(2024年10月1日予定)。これまで、リスクマネジメントWGはサステナビリティ推進委員会傘下の位置付けでしたが、本委員会は独立した組織となります。

従来の体制
新体制(2024年10月1日予定)

第一線(事業会社)

TOPPANグループの事業会社は、事業の種類ごとに事業部門となっている子会社と、事業部門制になっていない子会社、いずれの場合も製造・営業など顧客接点のある部署・部門(1線)と、事業戦略・経理・法務・総務などの管理部署(1.5線)で構成されます。各部署・部門はコーポレート機能部門が策定したリスク対応計画を踏まえながら業務遂行しています。リスク管理の責任は、各子会社の社長、もしくは事業部・事業本部制を採用している子会社においては経営トップである事業部長・事業本部長が担っています。通常、管理部署の業務は1線業務のサポートを行うこともあり、体制図において1.5線と記載しています。

第二線(TOPPANホールディングスのコーポレート機能部門)

コーポレート機能部門とは、経営企画・財務・法務・人事労政などの管理部門です。平時のリスクマネジメントについて、毎年、各事業会社に対して「リスクアセスメント」実施を指示し、進捗状況を中間期に確認しています。また、コーポレート機能部門がTOPPANグループの重大リスクを毎年選定しており、対応計画の作成・進捗管理を実施しています。選定した内容をサステナビリティ推進委員会、および取締役会に対して報告しています。
危機管理については、事業会社からインシデント報告があった場合、第二線のリスク担当部門(主管部門)が対応指示または直接対応します。インシデント内容に重要性がある場合、危機管理委員会が招集されます。

第三線(経営監査室)

経営監査室は内部監査を行う部署であり、第一線、第二線が適正に機能しているかを分析評価しています。具体的には、法令・会社諸規則の遵守状況や不正防止の仕組みに問題がないかなどの業務監査と、経営目標との整合性やリスクコントロールが必要十分であるか否かについて、プロセスを重視して検証・評価する経営監査を実施しています。その結果を代表取締役社長、取締役会、監査役会に対して報告しています。

2024年度重大リスク

TOPPANグループでは、「重大リスク」を毎年見直しており、事業に重大な影響を与える可能性のある新興リスクも識別・管理しています。洗い出した新興リスクについては、短期・中長期の観点から検討を行い、対策を講じています。
2024年度の重大リスクにおいては、「1. 気候変動および生物多様性の損失に関するリスク(うち、生物多様性リスク)」「19. 海外に関するリスク(うち、地政学リスク)」が、当社の考える新興リスクです。
「1. 気候変動および生物多様性の損失に関するリスク(うち、生物多様性リスク)」に関しては、工場・倉庫など国内外に170カ所以上の拠点を有するTOPPANグループは直接操業によって生物多様性にインパクトを与える可能性があります。また年間100万tを超える紙を調達しているTOPPANグループにおいては、木材を含む自然資本に関しての依存が大きく、潜在的なリスクがあると認識しています。
「19. 海外に関するリスク(うち、地政学リスク)」に関しては、2023年度の海外売上比率が35%であるTOPPANグループは、中近東、アフリカなどへの事業拡大にも取り組んでいる中、現地での法規制違反、公務員への贈賄や国際カルテルなどの不法行為によるペナルティリスクや紛争の勃発、激化、長期化による事業停止、撤退などの影響を受ける可能性があり、潜在的なリスクがあると認識しています。
「1」「19」を含む重大リスクの詳細・対応策は、「事業等のリスク」を参照ください。

重大リスク 主な対応策
1 気候変動および生物多様性の損失に関するリスク
  • SBT認証を受けた温室効果ガス排出の削減目標を設定
  • BCP対策として罹災への備え、被害の軽減策(防風、防水)、
    製造と調達のバックアップ体制構築による供給体制の維持継続
  • 用紙原料の調達での合法性確認、社内外自然共生地域の
    保全への貢献
2 環境汚染リスク(有害物質の漏洩、廃棄物の不法投棄等)
  • 偶発的な汚染等の原因となる有害物質の貯蔵タンクの管理・保全
  • 委託事業者による不法投棄等対策として、マニュフェスト管理の
    徹底、評価シートによる廃棄物処理事業
    者の適正処理の評価や現地視察
3 地震、風水害等の自然災害、感染症による人的・物的被害
  • 事業継続計画(BCP)を策定
  • 外部講師による取引先向けのBCP勉強会を開催
  • セキュア事業でのISO22301の認証取得
4 人権リスク
  • 「人権方針」の制定
  • ステークホルダーへの調査・ヒアリングを通じて人権リスクの
    軽減・是正に向けた取り組みを実施
  • 代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」の
    もと、「人的資本WG」がグループ全体への
    人権尊重浸透の促進
5 グループ統制に関するリスク
  • 「関係会社管理規程」の運用
  • コンプライアンス基本規定として「TOPPANグループ
    行動指針」の浸透
6 不祥事(重大な不正、不適切な行為等)・コンプライアンス違反
(談合、贈賄、その他法的規制違反)
  • 「TOPPANグループ行動指針」を制定
  • 行動指針推進リーダー制度の運用
7 市場環境の変化に関するリスク
  • DX事業、国内SX・海外生活系事業、新事業の3つを
    成長事業に掲げた事業ポートフォリオ変革を推進
8 市場性のある有価証券価格の変動リスク
  • 政策保有株式の定期的検証、保有先の財務状況等の把握
9 外国為替相場の変動
  • リスク管理のガイドライン制定
  • 為替予約等のヘッジ手段の活用
10 戦略的提携、投資および企業買収に関するリスク
  • デューデリジェンス・モニタリング強化、改善プラン策定等
11 研究開発投資の損失等、製品の研究開発上のリスク(市場変化、
投資先・アライアンス先の業績悪化、事業化、
上市タイミング遅れ等)
  • 進捗確認、ステージアップ判断、リスク把握による遅延の防止
12 事業の発展を支える人材の確保
  • 新卒採用と経験者採用の両面において様々な採用チャネルを構築
  • 人材開発プログラムを常に更新し、基礎から実践的スキル
    までを一貫して習得する機会を提供
13 財務に関するリスク
(資金調達、不良棚卸資産の発生、不良債権の発生等)
  • 資金調達手段と調達期間の分散
  • 健全な財務体質の維持・強化
  • 資金計画の見直し
  • 部門の連携を通じた販売促進による回転効率の向上
  • 資産の品質と管理状況の定期的なチェック
  • 与信管理規程に基づく与信限度額設定、定期的な与信見直し
  • 回収遅延、信用不安の場合の債権保全策
14 情報セキュリティにおけるリスク(サイバー攻撃、情報漏洩)
  • セキュリティ対策状況、成熟度の評価・改善指導を実施
  • 従業員等に対しての定期教育による当該規程類の周知や、
    内部監査および委託先監査による遵守状況の確認、
    改善指導の実施
15 製品、デジタルサービスの品質に関するリスク
  • 「製品の安全管理についての基本方針」「サービス品質
    基本方針」のもと、国際規格に基づく品質マネジメント
    システムを構築
16 サプライチェーンに関するリスク
(原材料の供給問題、不適正な発注、取引先の不正行為等)
  • 「TOPPANグループサステナブル調達ガイドライン」を策定
  • 複数のエネルギー供給元の確保によるリスク分散
  • 相談窓口「サプライヤーホットライン」の運用
17 労働安全衛生に関するリスク
(火災、労災、労働法規違反、労務トラブル等)
  • 継続した労働時間短縮に向けた取り組みや、残業実態の分析、
    新たな勤務制度の導入・活用状況の検証を実施
  • 安全師範や安全推進担当者の配置により安全意識の浸透促進
  • 「安全道場」の開場
18 特許権や著作権等の知的財産権の侵害
  • グローバルな視点も含めた他社の知的財産権を継続的に
    調査・経過観察
  • 国や地域に合わせた権利取得を行うことで強固な
    知的財産ポートフォリオを構築
19 海外に関するリスク(規制法違反、地政学リスク、訴訟、労働争議、
国際税務等、前項目に含まれない事項)
  • マネジメント全般について「あるべき姿」を示し、
    それに基づき、各海外子会社とともに体制・仕組みの構築と遵守・
    運用・実践を推進
  • 社内監査や会計監査を通じたガバナンス体制の構築
  • 第三者機関が提供する事業環境リスク評価システムを
    活用したリスク評価実施等

危機管理体制

TOPPANグループは、「危機管理に関する規程」に基づき、それぞれのリスクごとに主管部門を定め、当該主管部門を中心に対応する「主管部門別危機管理体制」を構築しています。
万が一リスクが顕在化した場合には、影響を最小におさえるよう各事業主体と本社主管部門が連携して対応するとともに、重大な事案については取締役会に報告されています。さらに、緊急対応を要する場合には、社長または副社長を責任者とし、主管部門の担当役員、監査役および弁護士などの社外有識者を加えた緊急対策本部を設置し、事態の収拾を図ります。

危機管理連絡会

各部門の危機管理担当者で構成される危機管理連絡会を設置しています。平時においては定期的に連絡会議を開催し、情報の共有化を図っています。リスクが顕在化した際には、関連部門を緊急招集し、事態の対処および再発防止策を検討します。

役員・従業員のリスク管理に関する意識を高める取り組みTOPへ戻る

危機管理に関する規程をはじめリスク一覧や、各リスクの主管部門体制などの関連資料を社内ポータルサイトに掲載し、従業員が常に最新版を閲覧、確認できるようにしています。
また、情報セキュリティ・サイバーセキュリティ、自然災害、感染症、労働災害、環境問題、コンプライアンス違反などのリスクに関しては、主管部門別危機管理体制に基づき、各主管部門が中心となり、従業員への定期的な教育や監査を行い、注意喚起や危機意識の醸成を図っています。
また、TOPPANグループ役員へのリスクマネジメント教育としては、TOPPANグループ各社の役員がESG、SDGsテーマの共有・連携を通じて課題認識を深める場「TOPPANグループESG経営推進会議」において、リスクマネジメントに関する外部有識者による研修が開催されています。
本会議は、社外取締役もメンバーとなっており、リスクマネジメントについて知見を深めるとともに、経営層による活発な議論も行われています。
(リスクマネジメントに関する研修は毎年定期的に開催予定)

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