リスクマネジメント
更新日:2026年9月30日
基本的な考え方
グローバルな政治・経済情勢の変化や数々の紛争、気候変動に伴う環境問題、デジタル化の進展によるサイバー攻撃の巧妙化、AI技術の発展と社会実装に伴う影響、加えて、強制労働をはじめとする人権課題等、企業を取り巻くリスクが多様化・複雑化し、不確実性の時代となっています。
全世界で幅広い事業を展開しているTOPPANグループにとって、こうした中から影響の大きい、重要性の高いリスクを的確に認識し、適切に管理し、顕在化を未然に防ぐための対応策を講じることは、極めて重要です。こうした考え方は、2026年4月に制定した「TOPPANグループ
リスクマネジメント方針」にも定めており、グループ共通の基本方針として運用しています。
TOPPANグループは、関連性の高いリスク項目ごとに第二線(TOPPANホールディングスのコーポレート機能部門)の責任部門を定め、グループ内の管理体制や手続きの構築を担う体制としています。また、第一線(事業会社)および第二線に対して、年1回のリスクアセスメントを実施し、グループ全体に及ぶ重要性の高いリスクを網羅的に確認しています。第一線のリスクアセスメント結果は、第二線の各責任部門が内容を確認した上で適切な指示・指導を行う、平時におけるリスク管理のPDCAサイクルを回します。
リスクマネジメント推進委員会/リスクマネジメント委員会では、重要性の高い外部環境の動向、グループ内のリスク管理状況、顕在化したリスクに対する再発防止策の取り組み状況など、グループ経営に活かすための重要なリスクに関する情報を共有していきます。これらに加え、リスクの観点からグループ全体で優先的に取り組むべき課題(討議テーマ)を明確にし、それらに内在するリスクやリスク対策を、リスクマネジメント推進委員会を中心に検討・モニタリングします。
なお、万が一リスクが顕在化した場合には、危機管理体制に基づき、人命の安全を最優先に迅速かつ的確に行動します。また、事象に応じた体制のもとで早期復旧を図りながら従業員、株主、お客さま、地域社会等のステークホルダーへの影響を最小限にとどめ、事業の継続、社会からの信頼の確保に努めています。
リスクマネジメント体制
TOPPANグループは3線モデルに基づく全社的リスクマネジメント体制を整えています。そのリスクマネジメント責任者としてChief Risk Officer(CRO)を任命し、グループ全体のリスクマネジメントを統括する部門(GRC本部)を設置しています。また、TOPPANグループのリスクマネジメントについて討議する委員会は、執行側と監督側の2つのレベルで構成されています。執行側の「リスクマネジメント推進委員会」がリスクの検討や対策実施・モニタリングを担うのに対し、監督側の「リスクマネジメント委員会」は、その活動に対して十分な監督・けん制を行う体制としています。
リスクマネジメント委員会
取締役会メンバー全員で構成されるリスクマネジメント委員会は、TOPPANグループのリスクに特化して討議する場です。この委員会は、リスクマネジメント推進委員会に対するけん制機能(指導・助言の役割)を果たすほか、TOPPANグループの経営に関連する重大なリスクについて討議する場、さらにリスクやリスクマネジメントに関する最新の動向や情報を共有する場として設置されており、原則として年2回以上開催するほか、必要に応じて臨時に開催します。
リスクマネジメント推進委員会
TOPPANグループの経営に関連する重大なリスクについて討議し、その管理方針を決定する場として、さらにリスク対策の活動状況をモニタリングする目的で、第一線、第二線の役員をメンバーとするリスクマネジメント推進委員会を設置しており、原則として年2回以上開催するほか、必要に応じて臨時に開催します。本委員会はリスクマネジメント委員会と同様に、TOPPANグループの経営に関連する重大なリスクの共有や外部環境の最新動向・情報を共有する場でもあります。
第一線(事業会社)
TOPPANグループの事業会社(ビジネスユニット、子会社等)はコーポレート機能部門が策定したリスク対応計画を踏まえ対策を講じた上で業務遂行しています。リスクマネジメントの責任は、各子会社の社長、もしくはビジネスユニット(BU)制を採用している子会社においては、それらのBU長が担っています。通常、子会社の管理部署(事業戦略・経理・法務・総務)の業務は第一線業務のサポートを行うこともあり、体制図において1.5線と記載しています。
第二線(TOPPANホールディングスのコーポレート機能部門)
コーポレート機能部門は、経営企画、財務、法務、人事労政などの管理部門を指します。平時のリスク管理においては、各事業会社が毎年実施する「リスクアセスメント」の結果を分析・フィードバックすることで、グループ各社のリスク状況を継続的にモニタリングしています。また、コーポレート機能部門は、TOPPANグループに関連する主要なリスク項目を示した「事業等のリスク」を毎年選定し、対応計画の策定および進捗管理を行っています。選定された事業等のリスクは、取締役会に報告され承認を得ます。
危機管理に関しては、事業会社からインシデント報告を受けた場合、第二線の責任部門が対応指示を出すか、直接対応します。インシデントの内容が重要であると判断された場合には、危機管理委員会が招集されます。
第三線(経営監査室)
経営監査室は内部監査を行う部署であり、第一線、第二線が適正に機能しているかを独立した立場から分析・評価ならびに保証と助言の提供をしています。リスクベースの内部監査を実践し、平時におけるリスク管理体制の「第三線」として独立した堅牢なガバナンス体制を構築・維持しています。具体的には、法令・会社諸規則の遵守状況や不正防止の仕組みに問題がないかなどの業務監査と、経営目標との整合性やリスクコントロールが必要十分であるか否かについて、プロセスを重視して検証・評価する経営監査を毎年実施しています。その結果を代表取締役社長、取締役会、監査役会に対して報告しています。
危機管理体制
TOPPANグループは、リスクが顕在化した場合に備え、対応体制および手続きを定めています。グループ内での連絡体制を整備するとともに、リスク種類ごとに第二線の責任部門を設定し、当該部門が中心となって対応する体制を確立しています。万が一リスクが顕在化した場合には、影響を最小限におさえるため、リスクが顕在化した第一線と第二線の責任部門が連携し、事態の対処および再発防止策の検討を行います。重大な事案については関連部門を招集して危機管理委員会を開催し、詳細な討議を行った後、その結果は取締役会およびリスクマネジメント委員会・リスクマネジメント推進委員会に報告されます。さらに緊急対応を要する場合には、社長または副社長を責任者とし、監査役、弁護士などの社外有識者を危機管理委員会に加え、速やかな事態の収束を図ります。
また、第一線・第二線の各組織の担当者で構成される会議体を設置しており、情報の共有および連携の強化を図っています。
平時のリスク管理手続き
「事業等のリスク」項目選定プロセス
「事業等のリスク」の選定プロセスについては、外部環境の変化や新たに高まったリスクを踏まえ、毎年、TOPPANグループに影響する主要なリスク項目を第二線で協議し選定しています。見直し後の「事業等のリスク」については、取締役会に報告され、承認を得ています。
なお、第二線での協議にあたっては、新興リスクや外部環境の影響を評価・分析するとともに、「リスクカテゴリー」(TOPPANグループに関係するリスク項目を網羅的に一覧化したリスクマネジメントを目的とする内部資料)の各項目において、前年度との比較でリスクが大きく高まっている項目がないかを評価・分析します。これらのプロセスを経て、前年度の「事業等のリスク」で選定した項目を見直し、今年度の「事業等のリスク」の項目を決定します。
なお、リスクの概要およびリスク対応策については、後述の「事業等のリスク」の該当項目をご参照ください。
第一線と第二線の平時におけるリスク管理手続き
主に以下の手続きを期中に行い、第一線および第二線が連携して、TOPPANグループに関連する事業等のリスクに適切に対応し、その活動を取締役会に報告しています。
- 第一線を対象としたリスクアセスメントの実施(毎年)
- 「事業等のリスク」の項目ごとに、第二線内で責任部門を決定。各責任部門は、それぞれのリスク項目に対する管理方針や体制構築を計画、実行(毎年)
- 第一線によるリスクアセスメントに対し、第二線による分析、モニタリング、指導・助言(PDCAのプロセス)
- 第二線による「事業等のリスク」の各項目の計画と実績の管理(第二線によるリスクアセスメント)に対し、リスクマネジメントを統括するGRC本部による確認・助言
- グループ全体で優先的に取り組むべきリスクに関する課題を明確化した上で、その対応状況の継続的モニタリング (詳細は、「リスクマネジメント推進委員会/リスクマネジメント委員会での討議」をご参照ください)。
- 監督側および執行側の双方のリスクマネジメント委員会に対するリスク動向や(上記を含む)管理状況の報告
リスクマネジメント推進委員会/リスクマネジメント委員会での討議
2025年度より、グループ全体で優先的に取り組むべきリスクに関する課題(討議テーマ)を明確にし、それらに内在するリスクや対策を、リスクマネジメント推進委員会を中心に討議・モニタリングしています。討議テーマごとに、リスクマネジメント推進委員会メンバーの中からリスクオーナーを指名します。リスクオーナーは、当該テーマに内在するリスクの分析や評価、それに基づくリスク低減や解決に向けた対策の検討を主導し、その進捗状況を次回以降の委員会で報告する責任を負います。
一方、リスクマネジメント委員会は、リスクマネジメント推進委員会で討議された内容の報告を受け、それに対して適切なけん制機能を果たします。
討議テーマは、以下の2つのアプローチ(トップダウンアプローチとボトムアップアプローチ)を組み合わせた計4つの方法でGRC本部(リスクマネジメント統括部門)が情報の収集・分析を行い、第二線との協議を経て決定します。
- ①
- トップダウンアプローチ
- 取締役、執行役員へのインタビュー
- 各事業会社の重要施策に内在するリスクとリスク対策を分析
- ②
- ボトムアップアプローチ
- 第一線を対象としたリスクアセスメントの分析結果
- 第二線を対象としたリスクアセスメントの分析結果
リスクアペタイトの考え方に基づく個別事業案件ごとのリスク許容判断
TOPPANグループは、持続的な成長と企業価値の向上を目指す上で、事業機会を捉えるためのリスクテイクが経営戦略および施策推進の重要な要素と考えています。そのため、組織的な意思決定の際には、リスクアペタイト(TOPPANグループが許容できるリスクの種類と量)を適切に評価できる体制・手続きを整えています。
具体的には、TOPPANホールディングスおよびグループ会社による重要な事業活動の種類(投資・出資、固定資産取得、契約締結などのうち重要性の高い事項)ごとに、関連する様々なリスク(例:財務リスク、カントリーリスク、新規事業リスクなど)を勘案した「承認を要する閾値」を予め設定しています。これらの閾値は、設定時に財務状況、市場環境、関連法令などを総合的に勘案した上で、TOPPANホールディングスが定めた関係会社を管理する社内規程などに明文化されています。
この閾値を超える重要な案件については、経営会議または取締役会において、リスク特性、リターン、そしてTOPPANグループ全体のポートフォリオへの影響などを多角的に討議・審議した上で承認の可否を決定します。これにより、TOPPANグループ全体として許容できるリスクの範囲内で重要性の高い事業活動が実行され、資本効率の最大化と企業価値の向上に貢献することを確実にしています。
一方、上記閾値を超えない事業活動については、リスクアペタイトの範囲内であるとみなし、グループ会社の自律的な経営判断に委ねています。これにより、迅速な意思決定を可能とし、市場機会への機動的な対応を実現する、効率的かつ実効性のあるリスクマネジメント体制を構築しています。
事業等のリスク
2026年度の「事業等のリスク」は定期的な見直しを実施した上で19項目を網羅的に選定しており、項目としては2025年度から大きな変更はありません。
| 事業等のリスク | 主な対応策 | |
|---|---|---|
| 1 | 気候変動および生物多様性の損失に関するリスク |
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| 2 | 環境汚染に関するリスク(有害汚染物質の漏洩、廃棄物の不法投棄等) |
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| 3 | 地震や風水害等の自然災害およびパンデミックに関するリスク |
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| 4 | 人権に関するリスク |
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| 5 | グループ統制に関するリスク |
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| 6 | 不祥事(重大な不正、不適切な行為等)、コンプライアンス違反(談合、贈賄、その他法的規制違反)に関するリスク |
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| 7 | ビジネス環境や他社との競争等、市場環境の変化に関するリスク |
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| 8 | 市場性のある有価証券の価格変動に関するリスク |
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| 9 | 外国為替相場の変動に関するリスク |
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| 10 | 提携や企業買収等、事業戦略やグループ戦略に関するリスク |
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| 11 | 研究開発投資の損失等、製品・サービスの研究開発上のリスク |
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| 12 | 事業の発展を支える人材確保等に関するリスク |
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| 13 | 財務に関するリスク |
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| 14 | 情報セキュリティに関するリスク |
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| 15 | 製品、デジタルサービスの品質に関するリスク |
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| 16 | サプライチェーンに関するリスク(原材料の供給問題、不適正な発注、取引先の不正行為等) |
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| 17 | 労働安全衛生に関するリスク(火災、労災、労働法規違反、労務トラブル等) |
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| 18 | 特許権や著作権等の知的財産権を侵害するリスクまたは侵害されるリスク |
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| 19 | 地政学に関するリスク |
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新興リスク
TOPPANグループは、「事業等のリスク」として認識しているリスクに加え、現時点ではその発生可能性や影響度が高くないものの、将来的にTOPPANグループの事業に重大な影響を及ぼす可能性のある新興リスク(Emerging Risks)についても、その動向を継続的に注視し、認識に努めています。リスク環境を定期的に見直した結果、現在認識している主な新興リスクは以下の通りです。
米国における政策および経済情勢の変化による影響
米国の自国優先の姿勢、および他国への厳しい姿勢は一段と強まっています。これまでの制裁措置にとどまらず、ベネズエラ、イランで発生した事象に見られるような直接的圧力も生じています。こうした不透明な地政学的リスクの拡大は、世界経済の不安定化を招く懸念があり、TOPPANグループのグローバルな事業環境に深刻な影響を及ぼすリスクとして、重大な関心を持って注視しています。
また、中国に対しては極めて厳しい対応が継続されており、現地の製造業をはじめとする実体経済に多大な影響を与えていると認識しています。TOPPANグループは、中国国内の拠点に大きく依存する事業構造ではありませんが、取引先の多くがサプライチェーンや販売において同国市場と深くかかわっていること、さらに、経済安全保障の観点から米国による対中規制のさらなる強化、およびそれに各国政府が追随する事態も想定されることから、その動向を注視していきます。
これら不透明な外部環境に備え、関連情報の収集体制の強化およびサプライチェーンにおけるリスク把握を継続して進め、いかなる事態においても経営のレジリエンスを確保できる体制整備に努めていきます。
AI技術の発展と社会実装に伴う影響
TOPPANグループでは、AI技術の急速な発展に伴う倫理的・法的課題やビジネスモデルの変容を早期から新興リスクとして認識し、グループ横断での対策を講じています。これまで「TOPPANグループAI倫理方針」の策定と役職員への教育、各事業部門での事業影響分析などを通じて、適切なガバナンス体制の整備・運用を続けてきました。
こうした対応が浸透する一方で、TOPPANグループ内の各組織へもAIによる業務変革が浸透しており、その活用方法次第で、組織のレジリエンスや長期的な競争力に負の影響を及ぼすリスクが内在していると捉えています。AIのメリットを最大化しつつ、以下の新興リスクを適切に認識・コントロールすることで、持続的な企業価値の向上を目指します。
- 業務の正確性と継続性: AI特有の誤情報(ハルシネーション)に起因する判断ミスや、社内基幹業務への過度な依存によるシステム障害時の事業継続リスク。
- 人的資本と組織力: AIに対する行き過ぎた依存が社員の思考プロセスや経験蓄積を阻害することで、人財育成が停滞し、不測の事態に臨機応変に対処できる組織の柔軟性が失われるリスク。
- 社会的責任の遂行: AI活用による必要以上の効率化により、地域雇用や人財開発といった社会的役割を果たす機会が損なわれ、中長期的な社会との共生に影響を及ぼすリスク。