朝霞工場 環境省等の地域生物多様性増進法に基づく「自然共生サイト」認定を取得(2025年 9月)

 2025年9月、テクセンドフォトマスク株式会社※1(以下、テクセンドフォトマスク)およびTOPPANグループの朝霞工場敷地内にあるビオトープを含む緑地が、環境省等の地域生物多様性増進法に基づく「自然共生サイト」に認定されました。

※1 テクセンドフォトマスクは半導体用フォトマスクの製造・販売を手掛けており、2022年に旧凸版印刷株式会社(以下、凸版印刷)からの会社分割により設立、2025年10月に上場。
関連リンク:https://www.photomask.com/index.html

「自然共生サイト」とは

 2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする、昆明・モントリオール生物多様性枠組の国際目標「30by30」。この実現に向けて環境省等は、⺠間の取り組みなどによって⽣物多様性の保全が図られている区域を「自然共生サイト」として認定する制度を展開しています。

 TOPPANグループは「生物多様性の保全」を重要な経営課題と捉え環境目標の一つとして掲げています。今回は、朝霞工場において第一線で活躍する4名の担当者に自然共生サイト認定についてお話を聞きました。生物多様性保全活動に懸ける想いと挑戦をご紹介します。

Q. テクセンドフォトマスクの皆さんは凸版印刷時代から長年に亘って朝霞工場内の緑地管理を進めて来たということですが、今回の認定に至ったビオトープ造成の経緯について教えてください。

(テクセンドフォトマスク 鈴木さん)

 朝霞工場では、2013年より敷地内の旧排水処理設備をビオトープ※2として活用し、環境省レッドリスト※3や埼玉県レッドリストの絶滅危惧種である動植物の保護活動を続けてきました。こうした長年にわたる生態系保全の実績と、持続可能な維持管理体制が評価されたことが今回の認定に繋がったと思います。
 発端は13年前、当時の朝霞工場長が生物好きということもあって、「地域に根ざした環境活動」を何かできないかと話があったことです。初めての取り組みで右も左も分からず、まずは埼玉県生態系保護協会へ相談しました。そこで専門家から、使用されていなかった工場内の排水処理場の跡地の池を活用して、「地域の絶滅危惧種の保全をやってはどうか」という提案があり、生物保護のための池の整備から始めました。対象種は、「朝霞工場近隣地域で今後絶滅が危惧される生物」に定め、戦略的に保護活動を実施しています。

※2 ビオトープ:都市化などによって失われた生態系を復元し、本来その地域にすむ生物が生息できるようにした空間
※3 レッドリスト:絶滅のおそれのある野生生物リスト

上空から見たビオトープ

 手始めに、富士見市で埋め立て予定地となっていた「水谷田んぼ」に生息するメダカの引き取り、保護に成功。これを皮切りに、同じく富士見市で開発等によって個体数が減少していたホトケドジョウ、川島町で護岸工事を控える田んぼの水路に生息していたキンブナ、埼玉県立川越女子高校で研究中のヌカエビなど、保護対象を拡大してきました。
 並行して、植物保護にも取り組んでおり、ハンゲショウなどの希少植物のモニタリングはTOPPANで実施してもらっています。その結果、現在ではビオトープ全体で保護する動植物は希少生物3種+希少植物7種となりました。

ビオトープに生息するキンブナやヌカエビ

Q. 認定につながった評価ポイントはどこだと思いますか?

(鈴木さん)

 10年以上にわたる実績はもちろんですが、継続的な維持体制とモニタリング計画がポイントになったと思います。
 企業による保全活動では、人事異動などで人の手がなくなったときに同じ生態系を維持できるか、という点が課題になります。そこで朝霞工場では継続的に生態系を維持させるため、人の手を介さない状態でも希少生物が繁殖を繰り返す仕組みを構築しています。例えば、池に水生植物を繁茂させ、太陽光を当てることで、希少生物の栄養源となる微生物を大量に増加させています。水生植物は希少種の稚魚や稚エビの隠れ家にもなるので、生物の個体数の増加に役立ちます。さらに、池では井戸水を使っているのですが、冬場は水温を上げることで水生植物がすべて枯れないようにしています。その結果、春先に残った水生植物がまた増殖を繰り返してくれます。
 こういったサイクルによって、人の手を介さずとも5~10年程度は保持できる生態系を成立させているんです。

井戸水が流れ込み、水生植物が繁茂する池

(TOPPANホールディングス 片岡さん)

 この水の常時監視モニタリングでは、TOPPAN株式会社がサービス提供している「e-Platch™」が活躍しています。低消費電力・長距離通信ができるLPWA(Low Power Wide Area)規格「ZETA」を活用して、環境保全に必要なデータの収集・可視化を実現するサービスで、ビオトープの管理にも有用と考えています。これにより水の流量と水温を遠隔でも常時チェックできるような体制を実現することができました。

関連リンク:https://www.toppan.com/ja/electronics/solution/environment/

「e-Platch™」によって可視化された流量計

Q. 希少生物保護においては、近隣の市や学校と連携されていると思いますが、具体的にどのような活動をされたのですか?

(鈴木さん)

 環境保全の取り組みは地域との共生なしには成り立ちません。保護する希少生物は、いずれも埼玉県内の様々な事情で棲み処を追われる形となった生物で、埼玉県生態系保護協会を通じたマッチングにより保護に至っています。引き取り前には、元の棲み処の保護関係者による現地視察なども実施し、安心感をもってもらえるよう丁寧な保護活動を推進してきました。直接感謝の言葉をいただく機会も多く、地域貢献の意味合いでも意義を感じています。
 また、2023年7月には、埼玉県生態系保護協会、テクセンドフォトマスク、凸版印刷が共同で、凸版印刷の従業員とその家族を対象とした「生物多様性イベント」の一環として「かいぼり※4」を実施しました。15組18人の参加があり、生息していた淡水魚の捕獲調査をしました。繁殖に成功していたギンブナやミナミメダカについては、それぞれ近隣の小学校と小学生グループに寄贈しました。希少魚類の保護活動について説明し、自然学習の機会に活用いただいています。

※4 水を抜き、底に溜まった泥を取り除いて干す作業

(片岡さん)

 私たちが共同で実施した朝霞工場「かいぼり」のイベントに限らず、TOPPANホールディングスでは、主に従業員とその家族を対象とした生物多様性イベントを年に2回ほど実施しています。昨年は埼玉県生態系保護協会と共同で埼玉県富士見市の水路で生き物探しイベントを開催しましたし、東京都港湾局主幹の「東京都海の森倶楽部」にも参加し、東京湾のかつての埋め立て処分場を美しく豊かな森へと再生する活動にも貢献しています。

かいぼりの様子

ギンブナ寄贈での自然学習の様子

水路での生き物探しイベント

運営を支援した東京都海の森公園 イベントの様子

Q. これまでの取り組みを踏まえて生物多様性に対する想いをお聞かせください。

(鈴木さん)

 これまで推進してきたビオトープや希少生物保護の取り組みはまさに「30by30」をはじめとする、ネイチャーポジティブの動きに合致するものです。埼玉県主催のネイチャーポジティブ推進分科会(NP分科会)をはじめ、各種意見交換の場に参加する中で、行政の熱意を強く感じています。NP分科会の目的である「ネイチャーポジティブの実現に向け企業や行政、NPO等の交流を促進し、官民連携・協働の取組を拡大する。」に賛同し、貢献していきたいと思います。
 活動を始めた当初はなかなか評価されないながらも、専門家からいただいた「活動自体は地味ではあるが、企業があえて誰も行わないことを成すことに意味があると思う」という言葉に共感し、13年間活動を積み上げてきました。その成果が、今回の「自然共生サイト」認定をはじめ、結実したことを非常に嬉しく思います。

(片岡さん)

 ビオトープをはじめとしたこのような生物多様性の活動は表面的な「地域貢献」や「社会貢献活動」と見られがちなのですが、将来的な企業価値の向上につながるものだと考えています。製品・サービスなどの事業活動を通じた社会課題解決への貢献はもちろんのこと、従業員が自分事化できる場として、自然資本の恩恵を実感してもらう場として生物多様性イベントの機会を重視しています。
 また今後は、地域社会の一員として、TOPPANグループの所有する区域の生物多様性保全に留まらず、外部の非営利法人などと積極的に関わり協働していくことで、所有敷地外での自然保全や「自然共生サイト」認定取得の支援をしていきたいです。さらに、専門家と協力しながら他の企業と取り組む活動も増やしていきたいと考えています。

2025年12月公開
※会社名、所属部門名等は11月取材時点のものです