子どもたち一人ひとりにあった学習環境の必要性

VUCA(※)の時代と呼ばれる現代。日本は情報社会と言われるSociety 4.0から、アナログとデジタルが融合するSociety 5.0を迎えようとしています。最新技術を用いた設備・サービス、蓄積される膨大な分析データ、それをもとに最適化される便利な生活。人々の生活スタイルは多様化し、100人いれば100通りの人生の楽しみ方が生まれる。そんな新しい時代は変化し続ける世界であり、子どもから大人まで生涯にわたって学び続けることが求められるでしょう。

それに伴い、教育にも変化が起きています。これまで主流だった一斉授業のやり方が見直され始め、個々のレベルに合わせた習熟度別学習、グループで議論したり学び合う協働学習、設定した課題に向き合い自分なりの答えを導く探究学習など、様々な授業スタイルが出てきています。
また、国際的なウイルス感染の流行を受けて、オンライン授業の需要が拡大。学校現場のICT整備が急速に進み、子どもたちの状況や様々な場所に合わせて学びが進められる学習教材・ツールのニーズが高まってきているのです。

(※)Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)の頭文字。現在の社会経済環境の予測困難性が高いことを指します。

来たる教育現場の大きな変革にTOPPANグループとして出来ること

「質の高い教育」はSDGsでも掲げられている世界的な課題です。日本においても家計の格差が子どもの学力格差を生み、学年が上がるとその差が開いていくいわゆる”学力の二極化”が問題視されています。

TOPPANの教育事業は国内の学校で多く使用されている教科書会社「東京書籍」や幼児教育に関する教材・遊具を展開する「フレーベル館」などをグループ会社に持っているのが強みです。

また、TOPPANの教育サービス開発にご協力をいただいている慶應義塾⼤学の中室牧子教授によれば、将来の賃金にはどの高校・大学に行くかではなく、幼少期に育まれる意欲・忍耐力・社会性などの「非認知能力」が重要であることが明らかになっています。

これらの教育課題と中室教授から示唆いただいたことを背景に、我々は「教育を通じてすべての人に人生のチャンスを提供する」ことを目指し、2014年に教育事業の部門を立ち上げました。豊富な知見を有するグループ会社の支援を受け、子どもたちや先生にとって本当に良いものを追求した結果、最初に生まれたのがドリル学習サービス「やるKey」です。

子ども一人ひとりに寄り添うドリル学習サービス「やるKey」とその課題

「やるKey」は「レコメンド機能」「教科書準拠の問題」「非認知能力の育成」「学習履歴確認機能」等の特徴をもつ、個別学習の最適化により基礎学力の向上をサポートする小学校向けドリル学習サービスです。
児童がタブレット端末を活用して学校の単元に沿った学習を行いながら、先生が児童の学習状況データをすぐに把握することで、効果的かつ効率的な学力の向上に繋げています。

「やるKey」は子ども1人1人に寄り添う工夫が高評価を得て、学校の授業や家庭学習など様々なシーンで活用いただきました。しかし、結果としては高学力層には安定した効果が現れたものの、低学力層には期待通りの効果を出すことができませんでした。

リリースから既に4年が経つ「やるKey」ですが、問題のレコメンデーションレベルでは未だに最高水準にあります。しかし、問題のレコメンドだけでは、間違えた子どもに対してまた問題を提示することになり、つまずいている子どもに対し必ずしも「そういうことか!分かった!」という前向きな体験を提供できるとは限りませんでした。「ドリルを解く」というアプローチだけでは、学習に対して既に苦手意識を持っている子どもを十分に支援してあげることは厳しいと我々は気づきました。

そこでさらにサービスを進化すべく、やるKeyの高品質なドリルに加え、子どもたちの様々な学びの場面を支える多様な機能を複合させた全く新しいサービスを創ることを決断しました。学びは誰かに「やらされる」ものではありません。自分から取り組み、「できた!」という成功体験と「もっとやりたい!」という能動的な姿勢から、学びの中心に入っていくことが大切です。その想いをのせた新しいサービス名も検討しました。
それが、子どもが「主役」のまなびを実現するデジタル教材プラットフォーム「navima」です。

子どもたちの「学びたい!」が溢れ出す、新サービス「navima」の誕生

自分にあった学びのスタイルを見つけ、自分のペースで意欲をもって自ら育つ、子どもが「主役」のまなびを実現するデジタル教材プラットフォームが「navima」です。
子どもたちは自分のペースで学びに向かいながら、先生から教わったり、自分で決めた目標に向けて思い思いに学習したり、時には友だち同士で勉強を教え合います。
先生はそんな子どもたちの様子を自分の目と耳とデータで確認し、一人ひとりを理解、子どもたち主体の学びを一番近くで見守る大人としてサポート。
「navima」は子どもが自分だけの学びを自分で描き、先生はその子どもたちを見守りながら支える、教室全体をオープンで積極的な学びの空気で満ちたものにしていきます。

「navima」は2021年4月にリリースし、様々な機能・コンテンツを搭載しています。その一部を紹介すると、①授業で学んだ内容をきちんと習得するためのドリルや動画コンテンツ、②子どもが課題に対して自分の考え方を自由に表現し回答できる機能、③子どもたちの学びの状況を先生側に見える化する画面など。
子どもがなにか分からないことにぶつかった時、やるKeyではおすすめの問題を届けることしかできませんでしたが、navimaではそれに加えてドリル以外の様々な選択肢を用意することで自分に合った方法を取り入れてもらえるようにしています。

子どもは学ぶことへ前向きに取り組み、自分に合った方法で学びを進めていく力を高めることを、先生は子ども1人1人を理解しその学びをサポートできることを「navima」が支援します。

更に前進 「探究的学びの支援」「非認知能力醸成」へ

TOPPANの教育事業の使命は「子どもたちが社会で活躍するために必要な力を身につけ、将来自分らしく羽ばたけるように背中を押す」ことです。そのためにTOPPANは、子どもたちが学びに向かうために必要な意欲・能力の育成と、それを支える先生たちの指導力向上を支援していきます。

navimaが完成することはありません、これから先もずっと進化を続けます。
例えば、読解力などの学びの基礎力を育むコンテンツや、視点や考え方を養う探究学習コンテンツなどを現在開発中です。また、中室教授から示唆を頂いて以降、研究し続けている「非認知能力の醸成」に関しても近い将来有効なコンテンツを提供してゆく予定です。

これらのコンテンツの中の何かが子どもたちの心と頭を動かし、子どもが自分の学び方を見つける。そして、その経験の中で得られた気づきや成功体験が、次の「学びたい」を増やしていく。そのような内面から湧き上がる「学ぶ意欲」が子どもたち1人1人の行動に繋がり、教室にいる子どもたち全員が「主役」の授業が実現されると考えています。

子どもたちや先生方の笑顔が溢れ、社会課題が解決された明るい未来へと繋がっていくことを信じています。TOPPANが創る「教育のミライ」に、ぜひご期待ください。

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