世界中が注目する「メタバース」の現在地

現在、世界中で脚光を浴びるメタバース。「メタ」は「超越」を、「バース」は「世界」を指すユニバースを組み合わせた造語で、時間や空間の制約を超える新たなコミュニケーションフィールドとして注目を集めています。

現在のインターネットやソーシャルネットワーキングサービスのように、次世代のサービスの基盤になると予想され、世界的な大企業だけでなく国内でも参入が相次いでいます。その市場はメタバース推進議会によると、2024年には90兆円規模にまで上ると予測されています。急速に広がりを見せる一方で、ビジネスや産業用途での活用には、情報の品質管理やセキュリティの面での課題が多く、発展途上にあると言えます。

印刷業界を牽引してきたTOPPANが実現するデジタル空間コミュニケーション

印刷業界のリーディングカンパニーとしての歴史は、コミュニケーションにおける技術革新の歩みと言っても過言ではありません。TOPPANの創業者たちは、当時最先端の技術を基礎に、証券印刷やパッケージ印刷などの分野に可能性を見出し、日本の近代化を推し進めました。常に未来を見据えながら、新しい技術と安全性への熱心な姿勢は、創業当時より変わることなく受け継がれています。

デジタル空間においても、先見性を持ち、多くの技術者たちが研究開発に取り組んでいます。時代がメタバースと呼ぶ以前から、多様なコミュニケーションを実現するテクノロジーの研究、プロダクト開発をしています。例えば、1990年代から前身となる「World Chat/J」や「トッパンVR」などのサービスをリリース。近年は先端表現技術を核に、正確な空間再現をはじめ、デジタルと現実世界をつなぐ、上位のデジタルコミュニケーションを実現しています。
すでに企業向けにメタバース導入プロジェクトを進めるなかで、精緻な空間表現や、顧客情報の管理といったセキュリティのニーズが高まっています。ここから、デジタル空間と現実社会とのシームレスな次世代コミュニケーションを加速させる、TOPPANのソリューションをご紹介しましょう。

ビジネス向けメタバースサービス基盤「MiraVerse®」を開発

TOPPANでは2022年4月よりメタバースサービス基盤「MiraVerse®(ミラバース)」の提供を開始しました。「MiraVerse®」は現実空間を仮想空間へ正確に取り込み、その中で商談や協調作業などのビジネスコミュニケーションを可能にします。

例えば、ショールームにおいては、様々な商品を自分の目線で確認しながらお客さまの購買意思決定を対話型でサポートするほか、製造分野ではリアルタイムシミュレーションを使った設計やデザインなどの協調作業を実現します。新たなビジネスモデルの創出だけでなく、観光や教育、ミュージアム、防災訓練など、TOPPANの総合力で企業のメタバース導入や社会実装を推進しています。

「MiraVerse®」の強みは、なんと言っても高精細な画像データ処理や、形状を正確にデジタル化する3D計測を始めとした先端表現技術。TOPPANが従来培ってきた技術で、現実の色や質感を忠実に再現する真正性を追求しています。さらに、今まで培ってきたデータマネジメントなどの機能面のノウハウを組み合わせることで、ビジネスのお客様のニーズにお応えします。

アバター管理基盤「AVATECT®」

メタバース市場への関心が高まる一方で、アバターのなりすましや不正利用といったリスクが課題となっています。TOPPANでは自分の分身として生成されたアバターに対し、真正性を証明する「AVATECT®(アバテクト)」を開発、2022年2月より試験提供を始めています。

「AVATECT®」は、アバター本体の管理や本人認証に加え、アバターにNFT(非代替性トークン、Non-fungible token)や電子透かしを付与。これによりアバターの不正利用やなりすましを抑止し、メタバース上でのプライバシーや著作権を保護する管理基盤です。

メタバースの活用において欠かせない、アバター生成管理基盤「AVATECT®」は「MiraVerse®」と合わせて、安全・安心なデジタル空間を構築し、参加する個人や企業に新たな体験をワンストップでの提供を可能にします。機密性を有する高度な共同作業から、多数のユーザーに向けたプロモーション、さらには大型イベントまで、ワールドごとの用途に合わせた最適なセキュリティ環境を叶えるでしょう。

TOPPANが目指すメタバースの姿。距離や身体的な制約を超えた、新しい世界。

「MiraVerse®」と「AVATECT®」の両輪で加速する、距離や身体的な制約を超えた「新しい世界」。それはメタバース内にとどまらず、現実社会とのシームレスなつながりをもつ世界だと捉えています。

日本の科学技術政策の中で生み出されたコンセプト・未来社会(Society 5.0)はご存じでしょうか。世界の未来の社会像として世界中に広まりつつあるコンセプトであり、政府のみならず産業界や学術界が連携を深めながら推進しています。未来社会(Society 5.0)とは、狩猟社会をSociety 1.0とすると、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、デジタル空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムによって開かれる社会と定義されています。

「MiraVerse®」と「AVATECT®」による精緻なメタバース空間は、現実社会のデジタルツインと言えます。豊かな表現やコミュニケーション機能を生かして、現実の社会問題に対してシミュレーションの実施も視野に入れています。長期的なビジョンで目指すのは、メタバース空間での活動が現実に還元される社会。TOPPANがデジタル空間とフィジカル空間、メタバースと現実社会のシームレスなつながりを加速させます。

デジタル変革で「買う側」の生活も「売る側」のビジネスも豊かにするミライ