「買う側」と「売る側」。2つの視点から見た流通の世界の課題

「ものを売る」ということ。

今、このビジネスの根本的な活動である流通の世界は、大きな変革期を迎えています。その変化の中心にあるのは消費行動の急速なECシフト。経済産業省の調査によれば、日本国内における一般消費者向けのEC(E-Commerce)の市場規模はおよそ15兆円以上にまで拡大しています。

こうした状況は、一見すると「買う側」である顧客に便利で豊かな生活をもたらしたかのようにも見えますが、多様化する購買チャネルの中で選択肢は大幅に増え、自分が本当に欲しいものと出会い、的確に商品を購入することが難しくなる……そんな問題も生み出しています。
また、その一方で、「売る側」である小売の現場は、店舗数が「買う側」の需要を上回るオーバーストア状態による、顧客獲得競争の激化や、少子高齢化による働き手不足、長期的な内需縮小への不安など多くの経営課題を抱えています。

そんな、顧客と働き手を奪い合う厳しい状況の中で、長く流通の事業課題に携わってきたTOPPANが、新たに取り組んでいること。「買う側も」の生活も、「売る側」のビジネスも、同時に豊かなものへと変えていく、TOPPANの「デジタルトランスフォーメーション支援」の最前線をご紹介します。

TOPPANが考える「デジタルトランスフォーメーション」

まずは、印刷会社であるTOPPANが、これまで、流通の世界とどのように関わってきたかを紐解いていきましょう。やはり多くの方が、チラシをはじめとする印刷物による販売促進活動を思い起こすのではないでしょうか。

しかし、チラシづくりという仕事は、単なる印刷という業務にとどまるものではありません。TOPPANでは、チラシを配布する店舗、地域、商品、顧客の特性などをとらえるマーケティング活動はもちろん、会員システムの運営、顧客情報の管理、ダイレクトメールの発送など、多岐にわたる仕事を手がける中で、さまざまなテクノロジーとソリューションを生み出し、ご提案してきました。

中でも今、TOPPANが特に力を入れているのが、ITの活用によって流通に関する膨大な情報を統合・管理・活用し、流通の課題を解決していく「デジタルトランスフォーメーション」の分野。流通の現場を深く知る印刷会社だからこそできる、革新的なデジタル変革の取り組み……その一部を見ていきましょう。

「マーケティングオートメーション」がもたらす新しい顧客体験

実際にTOPPANが「デジタルトランスフォーメーション支援」の一環として取り組んでいる「マーケティングオートメーション」の一部をご紹介しましょう。

従来、ITを活用した販売促進活動では、大まかなセグメントに基づいたメールマガジン配信等のアプローチが主流でした。しかし、顧客一人ひとりに「自分ごと」だと感じてもらえる情報の配信は難しかったのが実情です。

こうした課題に対してTOPPANが目指したのは、顧客一人ひとりの姿をデータで高精細にとらえ、最適な情報を、最適なタイミングで提供する顧客中心のマーケティング手法。

例えば、スポーツショップでサッカー用のスパイクシューズを購入した顧客に対し、購入後の期間、天候、商品の利用状況などをデジタルデータで把握。最適なタイミングでシューズケア関連のコンテンツを配信し、興味関心をつなぎながら自然な再来店を促す……といった、「シナリオ型マーケティング」。

また、店内ビーコンやWi-FiとLINEなどのアプリケーションを連動させ、商品コーナーごとにレシピ情報やお得なクーポンなどをプッシュ通知で伝える仕組み。

さらには、ICタグを活用し、その商品の産地や生産者、カロリーや成分といった食品表示などの情報を瞬時に提供し、顧客それぞれのこだわりにスムーズに応えるサービスなど、快適で無駄のない買い物ができる……そんな革新的なサービスが実用化されつつあります。

もちろん、これらの「マーケティングオートメーション」の裏側には、膨大な顧客情報・商品情報の管理と活用、配信すべきコンテンツの制作や、天候情報などのオープンデータとの関連づけ、万全の情報セキュリティなど、TOPPANならではの高度なテクノロジーが存在することも忘れてはいけません。

デジタルデータを最大限に活用しながら、カスタマージャーニーを理解し、魅力的な顧客体験としてデザインしていく。それがTOPPANが目指す「マーケティングオートメーション」のかたちです。

販売の現場を劇的に変える「デジタルトランスフォーメーション」のかたち

在庫管理や、競合店の動き、季節・天候の変化、顧客の動向などを読み取りながら、毎週のように販売施策を打ち出し、成果を検証して次の施策を考える……スーパーマーケットやアパレルショップをはじめとする小売店の店長職が担う仕事は多岐にわたります。

そんな多忙な販売現場に対してTOPPANが目指したのは、ITによる業務の効率化。そのひとつに、電子決済プラットフォームがあります。

このサービスは、電子マネーの導入を容易にし、釣銭のやりとりなど、オペレーションの手間を解消します。また、ポイントサービスとの連携やECサイトでの決済、最近急増しているスマートフォン決済にも対応。オムニチャネル時代の決済サービス基盤として、150社・30万店舗で採用されています。

また、流通・小売業界の省力化を実現する自動認識技術として注目されている「RFID(ICタグ)」を使ったソリューションも積極的に提案。電子決済やPIM(商品情報管理システム)などを統合し、次世代の店舗形態として注目されている無人店舗の実用化に向けて対応を進めています。
「RFID」は店舗什器のIT化による新しいマーケティングの可能性も広げています。販売棚にRFIDリーダーを備えた「スマートシェルフ」を使えば、POSレジで把握した購入データだけでなく、購入を迷って棚に戻す「買わない行動」も記録し、新商品への関心度や陳列の効果測定などが実現できるのです。

さらに、TOPPANは小売業・サービス業で顕在化しはじめた働き手不足の解決のために、さまざまな店舗オペレーションを支援する「販売支援アプリ」を開発。在庫、陳列、迷子や落とし物の情報共有、シフト管理、レジ操作の動画マニュアルなど、店舗運営と接客に関わるさまざまな機能を一元化し、販売の現場の負荷を軽減する取り組みをはじめています。

TOPPANが実現する「デジタルトランスフォーメーション」の未来

今回は「買う側」と「売る側」を巡る世界……流通の現場にスポットを当ててさまざまな取り組みをご紹介してきましたが、これはTOPPANの「デジタルトランスフォーメーション支援」のごく一部に過ぎません。TOPPANでは、消費財メーカー、金融、サービス業など、業界ごとに異なる課題と向き合いながら、それぞれに最適化した提案を進めています。

そこで共有して目指すのは、「顧客を中心に新しい価値体験を創造すること」「業務の生産性を飛躍的に高めること」。そのために長年にわたってさまざまな事業課題を解決してきたノウハウを結集し、実効性の高いソリューションを提供することが私たちの使命です。

ビッグデータとAIによる情報処理の高度化、IoTやロボティクスによる業務の効率化……進化し続けるテクノロジーをひとつにつなげ、ビジネスに変革をもたらすこと。「買う側も」の生活も、「売る側」のビジネスも、より豊かなものへと変えていく。TOPPANの未来への挑戦はこれからも続きます。

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