今道香織:1996年京都大学修士課程卒。入社後は総合研究所に配属し、建材関連の研究開発に携わる。その後、現在の環境デザイン事業部に異動し、化粧シートの仕様設計や品質管理、工場の移転や効率改善等、一貫して建材分野の技術員として従事。2019年よりグローバル戦略室にて海外拠点との連携業務を担当。

「木の風合いや表情」までも印刷で再現する環境デザイン事業部

TOPPANグループ 生活・産業事業本部 環境デザイン事業部 グローバル本部 グローバル戦略室で室長として働くのは今道香織。彼女は大学院では、林で採れる木をどのように産業に活用していくかを研究する林産工学(当時)を専攻していました。その後、TOPPANグループで研究開発を担う総合研究所の配属に。今もその知見を活かし、木や建材に携わり続けています。

「大学院では、木材を素材として活用する方法や、今でいうセルロースナノファイバーやパルプなどの研究をしている学科に所属していていました。その中でも木の風合いや表情が好きだったんです。それでご縁もあって、近しい事業を扱っている凸版印刷に就職しました。それからはずっと建材や環境デザインの仕事に従事しています。」(今道、以下同様)

当初は総合研究所で研究に没頭していた今道ですが、工場の技術担当や新商品開発担当など、次第に市場に近い仕事を増やしていきます。そして現在、その活躍の場はグローバルにまで広がりました。

2023年5月にドイツで開催された展示会での一コマ。TOPPANグループの世界中の拠点から仲間が集まり総力を挙げて取り組んだ)

世界中の知見の異同に驚く

家具や床材、住宅を取り扱うお客さまをもつ環境デザイン事業部。その商材は、木や石、その模様といった非言語商材です。それもあって、お客さまは国内だけでなく海外企業が多いことも特徴となっています。

またTOPPANグループは2019年、ドイツを中心に世界で建装材印刷事業を展開するINTERPRINT社の買収を敢行しました。これにより世界中の生産拠点や販売網をさらに広げています。しかし、買収しただけでグループが一丸となるわけではありません。仕事の進め方や研究の仕方、将来ビジョンに至るまで、ありとあらゆる意識のすり合わせが、TOPPANグループには必要でした。

この統合作業で、先頭に立ち汗をかいている人物こそが、グローバル本部戦略室室長である今道です。

「こんなに遠くにある会社が、同じことを、こんなに違うやり方でやっていたんだ。」

経営統合のために各拠点の話を聞いた今道はそう感じたそうです。しかし、過去と同じことだけをやっていては、進化は望めません。出会い、語り合い、交流し、お互いを高めていく。今道はTOPPANグループを一つにまとめるべく、次のステップへ歩を進めようとしています。

「海外企業の買収もあり、グループの海外生産拠点が一気に増えました。それにより社内に新たなノウハウや知見がたくさん生まれたんです。お互いに『そんな方法があったんだ!』『こうやればもっと品質が上がるんだ!』という情報があって、私も驚いています。現在は人材交流をしたり技術を紹介しあうことで、新商品開発に繋げたり、生産性を向上させようとしているところです。

拠点毎の知見やリソースを、TOPPANグループという大きな枠で共有し、高め合い、新しいものを生み出す。ひいては、よりよい製品をよりリーズナブルにお客さまに届けられるようにする。それが今の私の仕事です。」

今道の語る企業買収があったのは2019年。そのためすぐにコロナ禍に陥ってしまい、その期間は拠点間の交流が途絶えていました。しかし今、世界中で往来が再開。今道のかけ声で、活発な交流がまた始まっています。

長時間かけていた作業が、短時間でできるようになる。ある拠点の技術を使えば、建材の可能性が広がる。世界中の知見を集めることで、こんな事例が、TOPPANグループでは次々と生まれています。

グローバルのシナジーを、少しずつでも、前へ。

近年、サステナブルへの意識が世界的に高まっています。見た目は同じなのに表面がサステナブルな紙やフィルムで覆われている。より健康や環境に配慮した生活を豊かにする製品を提供する。TOPPANグループはグローバルな知見を結集することで、こういった動きを加速させています。

世界に貢献できる新たな建材を、グローバルで開発していく。想像に難くなく、大変な仕事です。

「単純に思える作業も本当に一筋縄ではいかないことだらけです(笑)。『グローバルで考える』と一口に言っても、各拠点で言語や文化、常識、法律などの状況が違うので、画一的な管理はできません。いかに各拠点の状況を理解し、尊重し、支援できるか。そういったコミュニケーションを図ることが、今は一番重要かもしれません。

困難はありますが、シナジーが少しずつでも前に進んでいることを日々実感し、嬉しく感じています。これがこの仕事のやりがいです。」

TOPPANグループの技術を世界に広げるための、2つの視点

日本とグローバルの技術を結集し、サステナブルな新建材の開発や生産拠点の効率改善の指揮を取る今道。手探りで進めながらも、少しずつ、具体的な方向性が見えてきたようです。

「ある地域で使われているサステナブルな建材が、他の地域では全然使われていない。グローバル単位でみると、こういった事例が山ほどあることがわかってきました。こんなもったいないことはありませんよね。世界中に拠点をもつTOPPANグループなら、この課題も解決できるはずです。

また世界中の技術を結集して知恵を出し合えば、人々の生活をより豊かにできる新建材を開発できる可能性も十分にあります。そういった開発ができる体制を整え、できた建材を広めることも、グルーバル戦略を担当する私の責務です。」

今あるものを、世界中に広げる。新しいものを開発して、世界中に届ける。世界を股にかける今道の挑戦は、これからも続きます。



※2023年10月公開。所属等は取材当時のものです。

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