大倉実穂:2014年大学を卒業後、調剤薬局に就職し栄養指導を担当。6年間勤務した後、2020年に凸版印刷に入社。現在はTOPPANホールディングス株式会社が100%出資する「おかぴファーマシーシステム株式会社」において、処方せん薬の宅配サービス「とどくすり」のカスタマーサポート部門の立ち上げ・運営を支援している。管理栄養士資格保持。

写真:記者に『栄養』や『健康』について興味を持った経緯を説明する大倉実穂。

薬と食事、両方が揃わないと健康はつくれない

TOPPANグループには様々な分野の企業が所属していますが、その中に『薬局』があることはご存知でしょうか。TOPPANホールディングス株式会社が100%出資して設立した『おかぴファーマシーシステム株式会社』です。同社が目指しているのは、これまでにない処方せん薬の流通スタイル。そして、その挑戦をリードしているのが、TOPPANホールディングス株式会社 事業開発本部オンラインヘルスケア事業推進センターの大倉実穂です。

「小学生の頃、給食の献立表に『歯や骨になる食事』『熱や力になる食事』など、栄養に関する説明が書かれているのを見て、『栄養』や『健康』に興味を持ちました。」(大倉、以下同様)

大学では薬学と栄養学を学び、卒業後は調剤薬局で患者さんの栄養指導などを行っていた大倉。しかし「外出が困難な方や、普段薬局に足を運ばない方をはじめ、もっと多くの方を健康にするお手伝いがしたい」という思いで転職を決意。その時ヘルスケア分野への事業拡大を進めていた凸版印刷に入社し、おかぴファーマシーシステムでの業務にあたっています。

『とどくすり』ご利用フロー

『とどくすり』が実現する、新しい処方スタイル

そんな大倉が現在携わっているサービスが『とどくすり』。オンラインによる服薬指導に対応した調剤薬局サービスの先駆けであり、処方せん薬を宅配し患者さんの手元に届けるという、これまでの処方せん薬に関するあり方を変えるサービスです。

医師から処方せんを受け取り、薬局で調剤してもらう『処方せん薬』は、これまで薬局に出向いて、薬を受け取る流れが一般的でした。

「実際に薬局へ出向く必要があるため、忙しい方、外出が困難な方、近所に薬局がない方などは、来局が難しくなります。また、多くの薬局は待合室があまり広くないので、デリケートな病気に対する服薬指導の内容が、ほかの患者さんの耳に入ってしまうかもしれません。そういったことが重なると、病院や薬局へ行くハードルが高くなってしまいます。」

そこでスタートしたのが『とどくすり』です。患者さんはオンラインまたは来院して診察を受け、医師に「とどくすりを使う」と伝えることで、病院から提携薬局へ処方せんが送られます。次に、薬局の薬剤師からテレビ電話で服薬指導を受けると、後日自宅宛に処方せん薬が送られてくる、という仕組みです。患者さんは、来局することなく、自宅で薬を受け取ることができます。

「病院や薬局に行くことが億劫な人もいると思います。その結果、早くから適切な治療を受けられず、健康を損なってしまうケースもあります。医療アクセスを少しでも向上させることができれば、より健康に生きられる社会づくりに繋がると思っています。」

オンライン診療など、様々なサービスにおいてオンライン化が普及しつつある現在。自宅にいながらオンライン上で処方せん薬の申し込みから服薬指導、薬代の決済、薬の受け取りまでを完結できることに大きな意味がある、と大倉は考えています。

写真:ノートパソコンに向かいお問い合わせの対応をする大倉実穂。
写真:『とどくすり』チーム配属当時について記者に説明する大倉実穂。

オンライン化に、感じる手応え

大倉が『とどくすり』のチームに配属されたのは、サービス開始から3か月が経過したタイミング。サービスはローンチしたものの、アナログな作業も多く残っており、オペレーションには課題が多い状態でした。大倉は薬局勤務の経験を活かし、よりシステム化を含めた、オペレーションの再構築を進めました。

「入社当時はまだサービスが始まったばかりで、みんな手探りで試行錯誤していました。トライ&エラーを繰り返して、ようやく形になってきたように思います。今でもまだ、試行錯誤は続いていますが、開発チームとの連携も進み、新しいものが自分たちの手でだんだんと形になってきて、日々『とどくすり』の進化を感じています。」

チーム一丸となってシステム・オペレーションを改善する一方で、営業チームをはじめとした、様々なチームの奮闘があり、徐々に軌道に乗り始めた『とどくすり』。大倉が転職の際に目標としていた『手の届かなかった人に、健康を届ける』という夢に、少しずつ近づいている、手応えを感じています。

そんな大倉に、最近うれしい出来事がありました。

「とどくすりの問い合わせ窓口には、医療機関や薬局からの問い合わせ、あと患者さんからの質問などが寄せられるのですが、先日、『足が悪く外出ができずに困っていたが、とどくすりのおかげで、薬を楽に受け取れた、ありがとう』というお礼のメッセージが寄せられたんです。感謝のみのご連絡ってなかなか電話してまで伝えないと思うんですが、わざわざお電話をくださって感激しました。」

写真:とどくすり薬局の前で笑顔で立つ大倉実穂。

全ての人に、健康を届けたい

「これから、医療のオンライン化はもっと進んでいくでしょう。オンライン診療や電子処方箋はさらに普及していくと思います。その中で、『とどくすり』ももっと多くの人に知ってもらい、私たちのサービスを必要とする方に、サービスを届けていきたいと考えています。」

そのために、『とどくすり』もさらなるサービスの拡充を計画中。提携薬局の数を増やし、外部のパートナーとの連携も模索しながら、申し込みを受けてから薬が手元に届くまでの時間を、さらに短縮しようとしています。

「転職活動を始めたばかりの頃、『TOPPANグループがヘルスケア?』と不思議に思いました。実際に働いてみると、TOPPANグループには専門性の高い部署が存在し、様々な経歴、スキルを持った人も多く、事業領域の広さを実感しました。日々、他部署との連携によって助けられることも多いです。ゆくゆくは、グループの力を活かして、薬を受け取るサービス以外にも健康を支援するプラットフォームを作りたいと思っています。」

『全ての人に健康を届ける』という大倉の夢は、いま着実に実現に向かっています。



※2024年4月公開。所属等は取材当時のものです。

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