大塚浩之パッケージの新しい価値 「サステナブル」に挑む
大塚浩之:2003年、日本大学大学院理工学研究科を卒業後、凸版印刷(当時)に入社。パッケージ事業本部に配属され、食品、医薬品、トイレタリー製品の包材開発・製造に携わる。2023年4月に、自ら異動願いを出しグローバルパッケージ事業部イノベーションセンターへ。現在、パッケージ・セールス・エンジニアとしてグローバル開発案件を担当。2012年と2013年には、公益社団法人日本包装技術協会の「木下賞」受賞品の開発にも携わる。
「宝箱みたいなパッケージ」を作りたい
「子どもって、ちょっといいお菓子が入っている缶を、宝箱みたいに大事にしたりしますよね。そういう宝箱みたいなお菓子箱を作りたい、という想いが、パッケージに興味を持ったきっかけかもしれません。」(大塚、以下同様)
そう語るのは、TOPPAN株式会社グローバルパッケージ事業部イノベーションセンターに所属する、大塚浩之です。2003年凸版印刷(当時)に入社して以来、20年以上もパッケージの開発・製造を担当してきた、まさに『パッケージのプロフェッショナル』。長年にわたり、食品、医薬品、トイレタリー製品のパッケージ開発・製造に携わってきました。また、包装技術の研究・開発や、包装の合理化・改善・向上に顕著な業績をあげたものに与えられる、公益社団法人 日本包装技術協会の『木下賞』受賞品の開発にも携わっています。
そんな大塚ですが、2023年4月には、自ら希望して、グローバルパッケージ事業部イノベーションセンターへ移籍。現在は、技術的な面で販促活動をサポートする『パッケージ・セールス・エンジニア』として、世界中を飛び回っています。
いま、パッケージに求められる「サステナブル」
パッケージにはいくつもの機能が求められます。商品の中身をしっかりと保護すること。持ち運びを容易にし、流通しやすくすること。商品の魅力を伝え、売り場で目立たせること。輸送中の衝撃などで中身が漏れたりこぼれたりしないこと…。それらに加え、最近では『サステナブル(持続可能であること)』という、新しい価値が求められています。SDGsやESGといった考え方が一般にも広く浸透し、環境配慮という考え方が、企業姿勢を判断する指標の一つになっている現在、製品やサービスを開発する際にも環境への配慮があらゆる場面で求められています。それはパッケージにおいても例外ではありません。いま、注目を集めているのが、大塚が担当する『サステナブルパッケージ』です。
「サステナブルパッケージという言葉が徐々に広まっていますが、一方で、サステナブルパッケージの明確な定義というのは、まだ定まっていません。」
パッケージをサステナブルなものにするための考え方の一つに、単一素材でパッケージを作ることでリサイクルを容易にする『モノマテリアル』があります。
「たとえば、シャンプーなどの詰め替えパウチは、複数の異なる機能を持つフィルムで構成されています。印刷に適したフィルム、中身を保護するバリア性を有するフィルム、液体が漏れないように密封するためのフィルムなどです。」
このパウチをリサイクルするという視点で考えると、モノマテリアル(単一素材)のフィルムの組み合わせで作ることが理想ですが、それぞれ異なる機能をもつフィルムをモノマテリアル(単一素材)化するには課題があるのが現状です。
「従来のパッケージをモノマテリアル(単一素材)化する際に、機能の一部が満たされない、コストが上がってしまうケースもあります。機能やコストを従来品に出来るだけ近づけること、そしてお客さまや社会に理解いただくことが課題と考えています。」
商品を守るというパッケージ本来の機能を果たしながら、リサイクルを視野に入れた環境性能を高めるという課題に、いま世界の企業が取り組んでいます。
グローバルに、パッケージの拠点をつくる
TOPPANグループではこれまでに、多くの商品を彩るパッケージをつくってきました。ニーズが高まりつつあるサステナブルパッケージにおいても、生産体制を整備中。そのグローバル市場に向けての旗振り役が大塚です。
「サステナブルパッケージの取り組みの一つである、パッケージの水平リサイクルについては、企業、流通業者、生活者、回収業者、リサイクル業者など、社会全体のエコシステムが必須となります。パッケージが作れたとしても、回収・再生の仕組みが整備されていなければリサイクルはできません。日本でも、PETボトル等で仕組みが確立している分野もありますが、他の全ての包材での展開にはまだ時間がかかりそうです。」
一方、ヨーロッパでは環境に関する社会的な関心も高く、すでにパッケージメーカー、フィルムメーカー、リサイクル業者などが一体となって、サステナブルパッケージを運用するトライアルが始まっています。ヨーロッパの取り組みが、今後のグローバル・スタンダードになっていくと考えられています。日本市場においても、今後この流れは確実に訪れると考えられる為、グローバルトレンドをつかみ、国内外のニーズに対応したサステナブルパッケージの生産体制を創り上げていきます。
TOPPANグループでは現在、フィルムの生産拠点をインドに、バリアフィルム拠点は北米と欧州(チェコ:2024年操業予定)、そしてパッケージは北米、欧州、中国、ASEANと世界中に生産拠点を設けており、グローバルなサプライチェーンの構築を目指しています。現在、『イノベーションセンター』を立ち上げ、国内外に対応する開発基盤も整備しています。TOPPANグループが目指す、サステナブルパッケージのサプライヤーとして、着実な歩みを進めています。
パッケージの新たな可能性
「昔からTOPPANグループは、お客さまの要求に応えたクオリティの高いパッケージを作り続けてきました。その知見や技術を活かして、世界でも通用するパッケージを作りたいです。いつか世界中で、自分が手掛けたパッケージを目にできるようになったらいいですね。」
パッケージのサステナブル化。それは、パッケージの新しい『可能性』です。従来のパッケージ機能とリサイクルのしやすさ等の環境適性を両立し、日本だけでなく、生活者、世界の企業、社会のニーズに応え、期待を超える価値を提供したい。
大塚の目指すサステナブルパッケージへの挑戦はこれからも続きます。
※2024年5月公開。所属等は取材当時のものです。