芝川サイト、TOPPANグループで3拠点目となる自然共生サイト認定を取得(2026年3月)

 2026年3月、TOPPANホールディングスが所有する芝川サイト(静岡県富士宮市)敷地内の緑地が、環境省等の地域生物多様性増進法に基づく自然共生サイトに認定されました。

自然共生サイトとは

 環境省等は、民間の取り組み等によって⽣物多様性の保全が図られている区域を「自然共生サイト」として認定しています。これは、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする、昆明・モントリオール生物多様性枠組の国際目標「30by30」の実現に寄与する取り組みです。
 令和7年度の今回の認定によって、自然共生サイトは日本全国で合計569カ所となり、これまで環境省が掲げていた「早期に自然共生サイトを500以上認定する」という目標が達成されました。

 TOPPANグループとしての認定は、2023年の総合研究所(埼玉県杉戸町)、2025年の朝霞工場(埼玉県新座市)に続く3カ所目となります。
 ※朝霞工場の認定取得については以下の記事をご覧ください。
 https://www.holdings.toppan.com/ja/sustainability/info/202512-1.html

 今回は、総合研究所や朝霞工場の自然共生サイト認定にも携わったTOPPANホールディングス製造本部エコロジーセンターの片岡さん、芳住さんをはじめとする担当者に取り組みへの想いについて聞きました。

自然共生サイト認定証授与式―認定取得者の集合写真

自然共生サイト認定証授与式―認定取得者の集合写真

TOPPAN芝川サイト紹介の様子

TOPPAN芝川サイト紹介の様子

芝川サイトから加速するネイチャーポジティブTOPPANホールディングス株式会社製造本部エコロジーセンター片岡実織さん芳住啓さん
Q. 今回認定を受けた芝川サイトは、どのような場所なのでしょうか。

 (片岡さん)芝川サイトはJR富士宮駅から車で20分、山の一角に位置しています。周囲に水田が広がるような土地に3.35ヘクタールの面積を有し、グラウンドだった場所が草地に、調整池には水が保たれたまま水生昆虫が生息するなど、多様な自然環境が広がる場所です。

上空から見た芝川サイト

上空から見た芝川サイト

草地(元グラウンド)の様子

草地(元グラウンド)の様子

Q. 芝川サイトの自然共生サイト認定までの経緯を教えてください。

 (芳住さん)芝川サイトは、かつて宿泊可能な研修センターとして利用されていましたが、現在はその役目を終えた非開放区域です。社有地として有効活用策を模索しているなかで、環境目標との親和性や、経営層からの助言もあり、生物多様性観点での活用が検討されるようになりました。そして制度が開始された2023年度頃から、自然共生サイトの認定取得を目指し、具体的な活動を開始しました。

 一方で、芝川サイトのように多様な生物が存在する可能性のある場所の保全活動には、専門的知見に基づく調査が不可欠です。そこで環境省の支援マッチング試行事業に参加し、出会ったのが、環境教育の提供を主な事業として展開されているNPO法人ホールアース自然学校さん(以下、ホールアース自然学校)でした。富士宮市を拠点としているために地域の特性をよく理解されているうえで、生物の「同定」のスキルを持っているのが大きな強みで、連携の決め手となりました。

※同定:対象生物がどの種別に属するのか調査すること。

 芝川サイトは山間部に位置し常駐者がいないため、管理全般の負担が大きく、人的リソース確保といった課題があります。そうした中で、地域に根ざしたNPOと連携できたことは今回の認定にとって非常に重要な要素でした。

NPO法人ホールアース自然学校 富士山本校

NPO法人ホールアース自然学校 富士山本校

 (片岡さん)ホールアース自然学校の協力を得て、2024年から本格的な保全活動を開始しました。年に3回ほど実施している「生物モニタリング」では現地を地道に歩きながら記録を重ね、希少種を含む多様な動植物を確認しました。
 角を研いだ痕跡などからシカの生息が確認され、希少植物への食害対策として防鹿柵を設置しました。現在は柵の内外で植生の違いを比較し、植物相への影響の把握にも取り組んでいます。
 このようなモニタリングを重ねて、芝川サイトの生物多様性のポテンシャルが認められたことから、令和7年度第3回の自然共生サイト認定申請に踏み切りました。総合研究所や朝霞工場での認定取得経験から、自然共生サイトの要件についてポイントを掴めていたこと、さらに社内理解も進んでいたので申請プロセスが円滑に進んだことも、今回の認定実現の一助になったと感じています。

設置した防鹿柵

設置した防鹿柵

Q. 今回の認定で芝川サイトが評価された点を教えてください。

 (片岡さん)芝川サイトは里地里山のような二次的な自然環境が維持されている点と、国や静岡県のレッドリストに指定されている複数の希少種が生息している点が評価されました。また、人の出入りが少ない非開放区域であることから、植物の踏み荒らしや動植物の捕獲といった人的な影響が少なく、自然状態が良好に維持されているのも芝川サイトならではの特長です。
 ただし、非開放区域といっても、自然のまま放置するのではなく、より適切な環境を維持していくために、倒木処理や草刈り、落葉除去などの植生管理は継続的におこなっています。こうして維持しているサイトのモニタリング結果は環境省が公開している「生物多様性見える化マップ」にも今後登録する予定であり、客観的なデータとして蓄積されていきます。

Q. TOPPANグループとして3つ目の自然共生サイト認定を実現しましたが、今後はどのように生物多様性の取り組みを展開していきますか。

 (片岡さん)TOPPANグループでは、2030年度中長期環境目標として「製造拠点面積10%に相当する社内外自然共生地域の保全への貢献」を掲げています。これまでの3つの自然共生サイト認定もこの目標に寄与する活動ですが、目標達成のためにはさらに保全活動を加速させる必要性を感じていました。
 そこで、2025年度中に、生物多様性保全の取り組みを各事業所に広げるためのガイドラインを策定しました。まだ保全活動を始められていない拠点でも初期活動の進め方が分かるよう、保全活動対象地域の選び方やNPOとの連携手順、活動時に配慮すべき事項などを示しています。さらに、自然共生サイト認定のノウハウを活かし、審査項目をガイドライン中に落とし込むことで、環境省の活動意図に沿ったものになるよう配慮しています。
 また、自社が所有する敷地だけを保全対象としてしまうと、取り組みを行える事業所が限られてしまいます。従業員のモチベーション向上の観点からも、認証は取れずとも活動している事業所の成果を評価できるような仕組みにしたいと考えていました。そこで、外部のNPOなどが主催する取り組みへ参加することも保全活動として認められるよう、社内外の保全活動への「参加人数」を面積換算する枠組みを導入しました。
 外部認証の有無にかかわらず、実質的な活動を評価できるようになったことで、環境担当部門に限らず幅広い従業員を巻き込める仕組みになりました。
 一企業の努力だけでは「30by30」実現は成し得ません。今後も地域のNPOと協働しながら、これをグループ全体へと拡げていきたいと考えています。

2026年5月公開
※会社名、所属部門名等は2026年4月取材時点のものです