識字とは

識字とは、一般的に日常生活に必要な文字の読み書きや計算が出来ることを言います。識字能力を身につけることは、貧困からの脱出や、健康で文化的な生活をおくるためには必要不可欠な能力です。世界では識字能力を身につけていない成人(15歳以上)は7億7,200万人とも言われており、そのうち2/3以上が女性です。(UNESCO 2018年調査)これらの女性が識字を身につけることは、本人はもちろん、子どもや家族の健康、生活を力強く支えます。

識字能力向上に向けて

TOPPANは2008年からチャリティーコンサートを通じて識字能力の向上を目指して支援しており、このコンサートの収益金を、途上国の女性、特に幼い子どもを育てる母親や妊産婦の識字能力の向上を支援するために、公益財団法人ユネスコ・アジア文化センター(ACCU)が、カンボジアで実施している「SMILE ASIAプロジェクト」の活動資金として寄附しています。プロジェクトでは、識字教育のほかにも母子のための保健衛生やライフスキルに関わるカリキュラムを実施することで、生活レベル向上に向けた支援も行っています。

カンボジアの識字問題

カンボジアにおける識字能力の問題は、1970年代におきた内戦、ベトナム戦争の影響や、ポル・ポト政権(クメール・ルージュ)によって教育施設が壊されたり、教育関係者の多くの命が奪われたことで、多くの女性が教育を受けられる機会を失ったことに起因しています。現在も多くの女性が子供の育児や家計を助けるために途中から学校に通えなくなり、識字能力を身につけられていません。今なおカンボジアに残っている社会的課題です。

SMILE ASIA プロジェクト

SMILE ASIAプロジェクトは、カンボジアの女性を対象にした識字学習支援プロジェクトです。識字教室を開催し、読み書きや計算能力の習得、保健衛生に関わる知識の習得、ライフスキル学習の機会を提供することで、女性のエンパワーメントを促進し、更には家庭と地域の教育・保健環境をより良くしていくことを目指しています。
 現地ではカンボジアにおけるパートナー団体であるカンボジア女性開発機構(CWDA)と識字教室が運営されている地区のステークホルダーと連携しながらプロジェクトを推進しています。本プロジェクトは2008年より始まり、これまでに60の村で1,340人以上の女性が参加しています(2019年1月時点)。

識字教室開催地区における地区長、村長、CWDA、ACCU、凸版印刷による意見交換

識字教室開催地区における地区長、村長、CWDA、ACCU、凸版印刷による意見交換

■ SMILE ASIA プロジェクトの詳細

実施地域はACCU、CWDAのニーズ調査の結果に基づき、基礎的教育の推進が必要とされる地域を選定し、定期的に8か月に渡るプロジェクトを実施しています。

【活動内容】

  1. 1.学習者の選定及びファシリテーター(先生)の選定・研修
  2. 2.識字教室の運営※1教室あたり学習者15名で構成
  3. 3.識字教材の進呈と識字環境の整備
  4. 4.衛生保健学習とライフスキル(野菜の栽培など)学習支援
  5. 5.モニタリング・評価
  6. 6.旧学習者の追跡調査
  7. 7.現地ステークホルダーとの連携強化

【これまでの実施地域】

  • カンボジア周辺地図

    カンボジア周辺地図

  • 首都プノンペンより車で約3時間に位置するコンポンスプー州、プレイベン州において識字教室を開催。

【識字教育の様子】

  • 識字教室で学習者に教えるファシリテーター(先生)

    識字教室で学習者に教えるファシリテーター(先生)

  • 識字教室での学習者

    識字教室での学習者

  • 保健衛生(デング熱予防)を学ぶテキスト

    保健衛生(デング熱予防)を学ぶテキスト

  • 学習者や子どもが閲覧できる書物・絵本

    学習者や子どもが閲覧できる書物・絵本

  • 自分の名前を書いた学習者

    自分の名前を書いた学習者

  • 母親と一緒に学ぶ子どもたち

    母親と一緒に学ぶ子どもたち

■ 旧学習者の声

  • ホワン・サビーさん
  • ホワン・サビーさん(40歳、2児の母)

    小学校4年の時に家の仕事を手伝わなくなり学校を辞めてしました。その後は文字の読み書きは忘れてしまいました。識字教室に通うまでは、農業や牛を育てていて生計を立てていましたが、商売をしたくても出来ませんでした。「SMILE ASIAプロジェクト」に出会い、文字の読み書きと計算が出来るようになったことで、米の商いが出来るようになりました。私も家族も感謝しています。

  • ボー・イェットさん
  • ボー・イェットさん(57歳、4児の母、孫8人)

    ポル・ポト時代の影響で小学校4年までしか学校に通えませんでした。識字教室に通えたことで、忘れていた文字の読み書きや簡単な計算を思いだすことが出来ました。それまでは子供にお願いしていた農業による収支計算を自分でも出来るようになりました。私は、家族や先生の理解と支えがあり、8ヶ月間通うことが出来ました。これから識字教室に通うひとには一生懸命勉強してもらい、文字の読み書きが出来るようになって欲しいです。

  • ルック・サムアウンさん
  • ルック・サムアウンさん(36歳、3児の母)

    親の仕事を手伝うまでの小学校3年まで学校に通っていました。その後も、少しは覚えていましたが、あまり字を書く機会はありませんでした。
     識字教室に通えることになった時は、とても嬉しく思い、教室に通っている時は、解らないことがあれば先生に聞いて、一生懸命勉強しました。今でも読み書きの問題はなく、年間で20回ほどある村の結婚式のご祝儀の記録をつけています。私や家族のために知識を授けてもらい、とても感謝しています。

  • ACCU 公益財団法人ユネスコ・アジア文化センター
    • 公益財団法人 ユネスコ・アジア文化センター
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