TOPPANグループの
これからのサステナビリティ経営の方向性

社外取締役中林 美恵子

国内と海外の事業体を連携させ、グループとして一貫性あるアクションを

TOPPANにおいても、国内外のグループ企業各社が一丸となってサステナビリティ経営を推進する必要性が、ますます高まると考えられます。それは投資家がESG(環境・社会・企業統治)に実効性を求め始めているからです。世界の機関投資家でつくる団体も、いかに企業に具体的な対応を迫るかという視点に運営方針を変更しつつあります。例えば国際的な投資家がイニシアチブ「クライメート・アクション100プラス(CA100+)」を策定して、企業に脱炭素の加速を求めています。これに世界700超の機関投資家が参加しています。他にも脱炭素への移行に着目したファンドもあります。これからは、口約束だけではなく脱炭素に必要な設備投資計画などを吟味するようです。企業は今後、見せかけの環境対策(グリーンウオッシュ)でないことをアピールしなければならなくなる可能性があります。
TOPPANはこれを好機と捉え、投資計画など率先して開示していくとともに、海外事業体に対しても方針を浸透させていく必要があるでしょう。ガバナンスの面からも、国内と海外の事業体を連携させ、サステナビリティ経営に向けグループとして一貫性を持つことが重要になってきます。容易なミッションではありませんが、ホールディングス化を契機に、挑戦する価値あるテーマであると考えます。

激動する世界で、グローバルな社会課題解決をリードするための人財育成が急務

企業が生き残り、かつ発展を続けるには、絶え間ない変革が必要となります。“Digital & Sustainable Transformation”をキーコンセプトにしたDXとSXの推進は、TOPPANの覚悟そのものです。事業ポートフォリオの変革を促し、企業価値を高めるだけでなく、世界規模の社会課題を解決するリーダーとしてTOPPANが躍進することにコミットしているからです。
今年開催されたG7広島サミットは、その重要性から世界の注目するところとなりましたが、その議題の中に初めて「経済安全保障」が掲げられました。生成AIのルールづくりの必要性も合意されました。特にデジタル部門はその発展が急速であり、国家の安全保障にも直結します。ロシアや中国への圧力は分断ではなくリスク軽減のためであると表明されましたが、一方で日本や米国の半導体は、中国など第三国を経由してロシアに流れて戦争の継続に繋がっているようです。グローバルサウスの存在も含め、企業によるサプライチェーン再構築は、重要課題です。
このような激動する世界情勢の中でTOPPANは、法の支配に基づく世界秩序に目を配りながら、グローバル人財を獲得し、また育てていくことが重要であると考えます。世界をリードする企業として貢献するためにも、真のダイバーシティを目指した人財育成が望まれます。

サステナビリティと経済活動を両立し、豊かさや幸福に貢献するのがTOPPANグループの使命

ロシアによるウクライナ侵略やコロナ禍後の高インフレなど、世界は複雑で相互に関連する様々な課題を抱えており、歴史的な分水嶺に立っています。このような状態はVUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)と称されますが、ビジネス界で急速に注目されるようになったのは2010年代です。
VUCAが加速する世界で、TOPPANグループは今年に入り、パーパス&バリューズを策定して長期視点での経営を推進することを表明しました。昨今はSDGsへの反発や短期的な思考に戻る傾向も見られますが、VUCA時代の企業の強じん性(レジリエンス)を長い目で知りたいという資本市場の要請に応えようとすれば、過去の経営成績である財務諸表だけでは足りません。長期視点でのサステナビリティ経営は、未来を先読みする企業の力と言い換えるほうがよさそうです。
TOPPANが、社会的インパクトを創出するには、矛盾に満ちたサステナビリティと経済活動の両立を克服する知恵が必要でしょう。そこで重要なのは、ステークホルダーや市民社会とのコンセンサスづくりです。積極果敢に非財務情報を開示する姿勢こそが、その力になると思います。人類の真の豊かさや幸福の実現とともに、それが経営と両立することを証明するのがTOPPANの重要な役割であると考えます。

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