基本的な考え方TOPへ戻る

A. パーパスの設定

TOPPANグループはグループパーパスを「人を想う感性と心に響く技術で、多様な文化が息づく世界に。」としています。地球と生きとし生ける者とが織りなす彩りに満ちた世界、ふれあい豊かな暮らしのために使命を果たすべく、お客さまはじめ、社会やパートナー企業、従業員、地域コミュニティなど、幅広いステークホルダーと連携し、お客さまのニーズに応える製品やサービスの提供だけでなく、社会課題への取り組みや環境保全活動を通じ、持続可能な未来を築いていきます。

B. 環境方針の制定・環境課題の特定

1992年策定の「TOPPANグループ地球環境宣言」に掲げた「持続可能な社会の実現」を具体的に進めるため、2024年に「TOPPANグループ環境方針」を制定しました。取り組むべき環境課題、コミットメント、そして実現するための仕組み・取り組み、の3要素を示しており、本方針に基づき、環境課題の解決を通じて企業価値の向上と持続可能な社会の実現に努めていきます。

C. TCFD/TNFD 対応

TOPPANグループは、気候変動がグローバルで事業を展開しているグループ全体に与える影響の大きさを認識し、気候変動を当社グループのサステナビリティ経営における重要課題のひとつとしています。
金融安定理事会が設立したTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に対し、2019年に賛同を表明しています。2020年から提言に基づいたシナリオ分析を開始し、TCFDの提言に沿った気候変動に関する財務インパクトおよびその対応について継続して開示を行っています。
一方、気候変動と並び生物多様性を含む自然関連課題(自然資本全般に係る課題)についても、企業経営に与える影響の重大性を認識しています。TOPPANグループは、多様な製品・サービスをグローバルのお客さま2万社以上に提供しています。持続可能なサプライチェーンと、自社のみならずお客さま・地域社会への貢献に寄与する製品・サービスの提供をさらに推進するため、2023年には、「TOPPANグループ環境ビジョン2050」に「生物多様性の保全」を追加しました。2024年1月にはTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)最終提言への賛同を表明し、アーリーアダプターとして企業報告をTNFDに沿った形で開示する意向を登録しています。
気候変動対策と生物多様性の保全は相互に関連する目標であり、根本的に解決するには統合的なアプローチが必要となります。企業運営においてその点を重視していきます。一方、気候変動の緩和・適応策と生物多様性への対策には、win-winのシナジー効果だけではなく、トレードオフの効果もあります。気候変動のみに焦点を当てると生物多様性の観点からは負の影響を与えるケースも生じることから、気候変動と生物多様性との相乗効果/トレードオフに配慮し、双方の視点を踏まえ対応策を検討していきます。

D. 全社活動・事業活動両面でのアプローチ

2019年11月に策定した「TOPPAN SDGs STATEMENT」において、SDGsの経営への統合を宣言。その中で、TOPPANグループがSDGsの取り組みを通じて実現したい社会を「ふれあい豊かでサステナブルなくらし」とし、事業基盤を支える「全社活動マテリアリティ」と、事業を通じて取り組むべき「事業活動マテリアリティ」それぞれで気候関連課題と生物多様性を含めた環境課題を選定しています。事業基盤とビジネスの両面から、気候関連課題と生物多様性を含む自然関連課題への取り組みを進めています。

「自然資本」とは、動物、植物、水、土壌、大気等から構成されており、生態系サービスを通じて企業や社会に便益をもたらすストックのことです。一方「生物多様性」とは、自然資本の一部である動物、植物の多様性を意味し、洪水や干ばつといった自然災害からの回復、炭素循環と水循環、土壌形成を下支えることで自然資本を健全で安定な状態に保つ役割があるため、水資源や土壌とも深くかかわります。このページでは「生物多様性」という言葉に「自然資本」の意味を含めて表現しています。また「自然関連課題」を、生物多様性を中心とした自然資本全般にかかる課題を意味する用語として、「気候関連課題」とともに使用しています

TNFD提言の一般要件に対するアプローチTOPへ戻る

A. マテリアリティ:

TOPPANグループは2019年、事業を通じた社会課題解決への取り組みをさらに加速させるため、サステナビリティ活動において特に注力すべきマテリアリティ(重要課題)を選定しました。事業活動を通じて重点的に取り組むべき課題を「事業活動マテリアリティ」、良き企業市民を目指して企業活動全体で取り組む課題を「全社活動マテリアリティ」としています。これらのマテリアリティの中で、生物多様性を含めて環境課題を選定し、取り組んでおります。

B. 開示スコープ :

TOPPANグループでは、バリューチェーン全体(直接操業、上流、下流)を評価と開示の対象としております。直接操業では、自社全拠点であるグローバル175拠点、全事業を対象とし、サプライチェーンにおいては、主要事業である情報コミュニケーション事業(コミュニケーションメディア)へのインパクトが強い原材料(木材調達)におけるリスク・機会の把握を優先的に検討していきます。上流の他要素については今後並行して検討を予定しており、下流についても今後具体的なインパクト評価、事業戦略への組み込みも行っていきます。
私たちは、グローバル生物多様性フレームワーク(GBF)ターゲット15に準拠し、生物多様性に係るリスク、生物多様性への依存およびインパクトを定期的にモニタリング・評価し、透明性をもって開示することを目指しております。

C. 他のサステナビリティ関連の開示の統合:

気候関連課題と、生物多様性を含む自然関連課題とはお互いに影響を及ぼし合う関係であると認識しています。今回、TCFDと統合した形で開示を行っておりますが、「ガバナンス」の「生物多様性におけるステークホルダー・エンゲージメント」は自然関連課題固有の記載として、また「戦略」「指標と目標」については、気候関連課題と自然関連課題それぞれの要素があるため、分けて記載しています。

D. 考慮する対象期間:

TOPPANグループの事業活動計画である年度計画(短期・1年以内)、中期計画(中期・2~3年 )、長期ビジョン(長期・4~30年以上)に「生物多様性の保全」など自然関連目標を設定しています。

E. 先住民族、地域社会と影響を受けるステークホルダーとのエンゲージメント:

人権は、事業活動やサステナビリティの取り組みを推進するに当たり、最も重要なテーマと考えています。また、地域住民や先住民族の人々へのエンゲージメントの重要性も認識しております。各種団体・コンソーシアムへの参画により、生物多様性を巡る外部動向やステークホルダーの声を収集し、課題の設定・整理や実際の生物多様性保全活動に活かしております。年次の統合レポートやサステナビリティレポート等において、様々なステークホルダーに対して情報を開示しています。

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A. 依存・インパクト、リスクおよび機会に関する取締役会の監督について

1) 組織的な取り組みと取締役会の責任

TOPPANグループは、中期経営計画(2023~2025年度)において、“Digital & Sustainable Transformation” をキーコンセプトとする中長期の重点施策のひとつとして「ESGへの取り組み深化」を設定し、気候変動・生物多様性を含むESG課題に関するガバナンスを強化しています。取締役会は、気候関連課題を経営戦略における重要課題のひとつと認識し、気候変動のリスク・機会は事業成長のための成長投資(社会課題の解決に向けた「DX」「SX」を柱とする事業ポートフォリオの変革を含む)として考慮しています。
気候変動を含むESG課題についての具体的な取り組み施策については、サステナビリティ推進委員会において検討・審議された活動内容について経営会議を通じて取締役会が報告を受けており、取り組みの目標設定および進捗を議論・モニタリング・監督しています。取締役会は、自然関連課題に関しても経営戦略における重要課題のひとつと認識しています。今後、気候関連課題とならび自然関連課題においても、サステナビリティ推進委員会にて検討・審議された活動内容について経営会議を通じ報告を受け、取り組みの目標設定および進捗を議論・モニタリング・監督していきます。

2)取締役会が報告を受けるプロセスと頻度

取締役会は毎年4月に、「TOPPANグループ環境ビジョン2050」達成に向けて設定された「TOPPANグループ2030年中長期環境目標」における「温室効果ガス排出量」、「生物多様性の保全」、「資源循環型社会への貢献」、「水の最適利用」の前年度実績および当該年度の単年度目標について報告を受け、承認を行っています。また、気候関連課題についての重要なリスク・機会と取り組みの進捗についての評価や状況についての報告を受けるとともに、気候関連の課題を考慮し、経営戦略の策定などについて総合的な意思決定を行っています。さらに、気候関連課題に関する新しい規制や制度などが公表された場合は、四半期ごとにサステナビリティ推進委員会を通じて報告を受け、対応について議論・決議を行っています。
今後は、自然関連課題においても気候関連課題と同様の対応を行っていきます。

気候関連・自然関連課題に関するガバナンス体制図
2024年9月末時点

B. 依存・インパクト、リスクおよび機会を評価・管理する上での経営者の役割

取締役会は、サステナビリティ推進委員会(委員長:代表取締役社長)に気候関連課題を担当させ、その活動を監督しています。委員会はその下部に主管部門およびグループ会社事業部門が参画する地球環境WGを設置し、地球環境WGが取り組みを主導しています。地球環境WGは分科会TCFD SWG(サブワーキンググループ)において、SDGs推進プロジェクト、リスクマネジメントWGと連携して気候関連課題の評価と対応策の取りまとめを行っています。
取締役会は、サステナビリティ推進委員会より経営会議を通じて、気候関連課題の評価や状況、目標管理についての報告を受けるとともに、気候関連の課題を考慮し、経営戦略の策定などについて総合的な意思決定を行っています。自然関連課題についても、取締役会は、サステナビリティ推進委員会に担当させ、その活動を監督しています。委員会下部の地球環境WGにおいて、2023年10月より、その分科会としてTNFD SWGを新たに設置しました。自然関連課題についてはこのTNFD SWGが取り組みを主導しています。今後、気候関連課題と連動し、地球環境WGにて経営会議への報告を行っていきます。
また、将来的なサステナビリティ課題について意見交換を行う場として、エグゼクティブ・サステナビリティ推進委員会を設置しています。気候関連課題、自然関連課題を含むESG課題について、外部有識者と取締役が定期的に議論を行い、重要な課題についてはサステナビリティ推進委員会と連携して、検討しています。

C. 生物多様性におけるステークホルダー・エンゲージメント

1)人権に対する考え方

人権は、事業活動やサステナビリティの取り組みを推進するにあたり、最も重要なテーマだと考えています。TOPPANグループは、「人間尊重」の精神を基本に事業活動を行っており、この基本精神を基に、2021年10月に「TOPPANグループ人権方針」を策定しました。また、「TOPPANグループ地球環境宣言」「TOPPANグループ環境方針」「生物多様性に関する基本方針」に基づき環境保全活動を行うなど、事業活動が地域の人々の生活に悪影響を与えることによって人権侵害が発生しないように配慮した取り組みを推進しています。

2)人権デューデリジェンス

TOPPANグループは、「ビジネスと人権に関わる指導原則」を支持するとともに、人権デューデリジェンスの重要性を認識しています。2021年10月に「TOPPANグループ人権方針」を策定し、業界における人権リスクの洗い出しと評価を行い、5つの人権リスクを特定しました。2022年度および2023年度に、特定した5つの人権リスクを中心に、TOPPANグループのステークホルダーへの調査・ヒアリングを実施。調査・分析結果については、サステナビリティ推進委員会に報告し、今後の取り組みについて議論を行っています。
自然関連項目(土壌、水汚染等)についても、周辺コミュニティに関連する人権リスク(周辺住民の健康、先住民の権利等)を特定しています。

3)エンゲージメントプロセス

TOPPANグループは、地域住民や先住民族の人々へのエンゲージメントの重要性も認識しています。事業活動のために土地を取得、利用などする際には、現地の法規制を遵守することはもちろん、影響を受ける地域住民や先住民族の人々の理解を得ることを重視しています。また、自然関連課題の把握、対応において、幅広いステークホルダーの声を聴くことが重要と認識しており、TNFDフォーラム、環境省「30by30アライアンス」をはじめ、各種団体・コンソーシアムに参画しています。参画により、生物多様性を巡る外部動向やステークホルダーの声を収集し、TOPPANグループの自然関連課題評価に向けたLEAPアプローチにつなげるとともに、事業所緑地の利用や近隣地域の保全、修復活動など、実際の対策にも活かしています。

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A. TOPPANグループの環境価値相関

TOPPANグループの事業活動における自然資本との依存・インパクトについて、以下の通り整理しています。
主力事業のひとつであるコミュニケーションメディアやパッケージの製造において、紙への依存度が高く、原材料となる森林資源(木材)への依存が高いと想定しています。また、情報コミュニケーション、生活・産業、エレクトロニクスの各事業における地下水の使用が多く、依存・インパクト共に高いと想定しています。さらに、製造過程のみならず、使用後のプラスチック包装資材、販促物等の河川・海洋等自然への流出による生物多様性へのインパクトも想定しています。事業全般において、気候変動対策と企業の持続可能性との両立は重要な課題であり、GHG排出についても重要なインパクトと考えています。

TOPPANグループの環境価値相関図

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B. リスク・機会一覧

気候変動については、シナリオ分析において重要な気候変動の物理的リスクと移行リスクを認識し、財務インパクトの評価および対応策の検討を行っています。自然関連課題については、シナリオ分析の実施は今後となりますが、外部環境変化の把握や有識者との対話を踏まえたリスク・機会特定を想定しています。

気候関連課題および自然関連課題におけるリスク・機会一覧

※ 自然関連課題における下表の主な対応策については、10月以降に順次開示予定

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中期経営計画のキーコンセプト“Digital & Sustainable Transformation”「DX」「SX」関連製品・サービス


移行リスク・機会:1.5℃および4℃シナリオにおいてIEA World Energy Outlook 2023のNZE、およびSTEPS(APS)により評価
物理リスク・機会:1.5℃および4℃シナリオにおいてIPCCが採用するRCP(1.5℃: RCP1.9、RCP2.6、4.0℃: RCP8.5、RCP7.0)により評価
リスクおよび機会の時間軸については、短期1年以内、中期2~3年、長期4~30年以上として、TOPPANグループの事業活動計画である年度計画、中期計画、長期ビジョンの時間軸との整合を図り、気候関連課題・自然関連課題におけるリスクと機会について関係部門による検討を行っています
財務インパクト:小10億円未満、中10億円~100億円、大100億円以上

C. 気候変動に関するシナリオ分析、ビジネス・戦略・財務計画に及ぼす影響

1)組織が識別した、短期・中期・長期の気候関連のリスクおよび機会

① 組織に重要な財務的影響を与えるリスクおよび機会を特定するプロセス
TOPPANグループは、シナリオ分析実施に際してサステナビリティ推進委員会下部に地球環境WGを設置。本WGに関連部門およびグループ会社が参画し、気候変動に関する重要リスク・重要機会の洗い出し、財務面のインパクト評価、その評価に基づいた対応策検討を行っています。2023年度の分析においては、関連部門・グループ会社の事業戦略担当メンバーが参画しています。シナリオ分析の検討を各グループ会社の中期計画と連動させ、より具体的なビジネスを想定した財務インパクトの評価と対応策の検討を行いました。シナリオ分析は、日本国内拠点および海外拠点を対象に、研究開発から調達、生産、製品供給までのバリューチェーンに対して、1.5°Cシナリオ、4°Cシナリオで、2050年までの長期想定で考察しました。

②財務影響の大きい気候関連課題
1.5°Cシナリオでは、炭素税導入や購入エネルギー価格上昇に伴うコスト増のリスクがある一方、消費者選好の変化による低炭素排出製品・サービスの売り上げ増や企業価値向上の機会があることを再確認しています。
4°Cシナリオでは、気温上昇による風水害増加が、TOPPANグループの事業を支える主要工場の操業停止などのリスクにつながる可能性を確認していますが、長期想定の代替生産計画の継続検討、浸水防止技術の定期的な情報収集・施策化などの対応策を進めています。

2) 気候関連のリスクおよび機会が組織のビジネス・戦略・財務計画に及ぼす影響

① 組織のビジネスと戦略に対する影響の検討
「TOPPANグループ環境ビジョン2050」が目指すネットゼロ社会実現へのさらなる貢献に向け、中期経営計画において「DX」と「SX」を柱とした事業ポートフォリオ変革を進めています。「DX」「SX」関連の成長領域でのM&A などの事業投資や導入期・成長事業設備投資に、2023年度から2025年度まで約3,000億円を計画しています。

② 複数の気候関連シナリオに基づく検討を踏まえた組織の戦略のレジリエンス
シナリオ分析の実施にあたっては、「国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)World Energy Outlook 2023(以下IEA WEO2023)のNZE(Net Zero Emissions by 2050)シナリオ」「IEA WEO2023 のSTEPS(Stated Policies)」「気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)第6次報告書における共有社会経済経路(SSP)シナリオと放射強制力を組み合わせたシナリオのSSP1-1.9、SSP1-2.6及びSSP5-8.5」等の複数シナリオを利用し、定性的・定量的の両方で分析を行っています。
対象期間は2030年から2050年としています。

シナリオタイプ
1.5°C 4°C
移行シナリオ IEA NZE 2050 IEA STEPSもしくはAPS
物理シナリオ RCP 1.9
RCP 2.6
RCP 7.0
RCP 8.5

③移行リスクおよび物理リスクへの適応計画
シナリオ分析の結果、グループの移行リスクとして、世界全体におけるカーボンニュートラル実現に向けたカーボンプライシング制度の規制拡大を背景に、運用コスト負担の増加などが認識されました。またグループが認識する物理的リスクでは、生産事業所の洪水などの浸水被害による生産停止や復旧費用の増加等が挙げられます。その対応として、再生可能エネルギーの段階的な導入等によるScope1+2およびScope3での温室効果ガス排出量削減、防災対策の強化などに取り組んでいきます。Scope1+2およびScope3の温室効果ガス排出量削減については、2050年カーボンニュートラルに向けた移行計画を策定しています。将来を見据えた長期的視野での低炭素投資や対策の意思決定にICP(インターナルカーボンプライシング)制度を活用し、さらなる省エネ・再エネ設備の導入を推進していきます。
TOPPANグループの機会として、このような変化に対し、“Digital & Sustainable Transformation”をキーコンセプトとした事業ポートフォリオ変革と連動させ、事業機会の創出・拡大を図ります。具体的には、サプライチェーンの温室効果ガス排出量削減に貢献するDX支援サービスの開発、リサイクル適性の向上や食品ロスの削減ができるサステナブルパッケージの充実化を図っていきます。
TOPPANグループは今後も、継続的にシナリオ分析を実施することでその精度を高め、経営戦略への統合をさらに推し進め、不確実な将来に向けたレジリエンス(強靭さ)を高めていきます。

ICP制度概要
社内炭素価格 130USドル/t-CO₂(導入時)
適用範囲・方法 設備投資によるCO₂増減量に対し、社内炭素価格を適用し、
CO₂削減効果の高い施策に優先投資する。
ICP 制度対象 CO₂排出量の増減を伴う設備投資

D. 自然資本・生物多様性の依存・インパクト分析

1) 分析範囲の設定

TOPPANグループの事業と自然環境との関係性(依存・インパクトの整理)に基づき、今回は直接操業とサプライチェーン上流(木材調達)に絞り、LEAPアプローチのL、Eを実施しました。直接操業については、TOPPANグループの事業領域が幅広く、拠点を網羅的に検討するため、日本国内124カ所、海外51カ所の合計175カ所についてシンク・ネイチャー社の生物多様性・自然資本ビッグデータを使用しLocate調査(生物多様性の重要性・生態系の完全性・水リスク等)、およびEvaluate調査(生態系への依存・インパクトの程度の分析)を実施しました。サプライチェーンについては、事業活動において調達量が年間100万t超と最も多い紙の原材料である木材の調達について、優先的に検討する必要性があると判断し、製紙会社から回答を得た調達国21カ国について、Locate調査(生物多様性の重要性・生態系の完全性・水リスク等)、およびEvaluate調査を実施しました。
直接操業およびサプライチェーンの評価に関しては生物多様性に関するリスク管理ツールENCOREおよびシンク・ネイチャー社の生物多様性・自然資本ビッグデータを使用しています。直接操業は拠点の操業タイプを16種類に分類し、それぞれの生産プロセスを定義してENCOREによる操業の自然への依存とインパクトの程度を確認した上で、それぞれの拠点におけるリスクの程度をロケーションベースで可視化しました。サプライチェーンについては木材調達が木材生産と直接的に関連していることから、生産プロセスを大規模または小規模林業と定義し、ENCOREを用いて自然への依存とインパクトの程度を確認した上で、それぞれの拠点におけるリスクの程度をロケーションベースで可視化しました。

LEAPアプローチとは:TNFDが開発した自然との接点、自然との依存関係、インパクト、リスク、機会など、自然関連課題の評価のための統合的なアプローチ。「LEAP」は、以下のプロセスの頭文字をとったもの
・自然との接点を発見(Locate:L)、依存と影響を診断(Evaluate:E)、リスクと機会を評価(Assess:A)、リスク・機会への対応と開示を準備(Prepare:P)
今回の分析範囲
2)分析
① 直接操業分析
目的 分析 結果 課題および対応
Locate 国内外の事業拠点175カ所に対して、拠点周辺の生物多様性および生態系
の現況を評価し、事業活動における生物多様性への
インパクトを調査することで、要注意地域に該当する拠点を
把握しました。

ロケーションの特定:直接操業の拠点は15kmグリッドレベルでの位置評価が
可能なようにマッピングしています。

重要指標の設定:生態系状況評価のための指標については、
TNFDのガイダンスを参考として7項目を採用した上で、
「生物多様性の重要性」、「生態系の完全性」の2点は他項目の
基盤となることから、特に重視して分析しました。

分析内容:各事業拠点、および操業内容別の生物多様性の重要性と生態系の
完全性評価を実施しました。

要注意地域(センシティブロケーション)の特定:TOPPANグループの位置する拠点において生物多様性の
重要性・生態系の完全性が高い地域は、海外ではアメリカ、
東南アジア、UAE、南米、国内では北海道、沖縄、兵庫、
広島であることがわかりました。

TOPPANグループ重要課題との紐づけ:水に関する生態系サービスの依存度が高く、
水消費による生態系へのインパクトが高いこと、また
ほとんどの事業内容において、水質汚染、土壌汚染へのインパクトが
高いことが示唆されました。TOPPANグループ環境方針では
「水の最適利用」、「有害物質管理」を掲げており、
本領域において、取り組みを強化していきます。

今後の対策:地理的に留意する必要ありと特定された各拠点について、
事業活動と自然との接点(依存・インパクト)を精査し、現地の住民への
ヒアリングや地域コミュニティの生態系への依存状況の把握、
トレーサビリティ精度の向上も行った上で、リスクと機会の特定、
対策の設定・実施につなげていきます。特に水源については、
今回重要性が再確認されたため、水リスクの高い拠点における
水最適利用(節水、排水利用等)に取り組んでいきます。

Evaluate 全拠点の事業活動が、どのような生態系サービスに依存し、
どのようなインパクト要因により自然の状態に変化を
与えているかを把握し、Locateの要注意地域の特定結果と掛け合わせて、
重要な環境課題を特定するための依存・インパクトを評価しました。

操業内容のグルーピング:TOPPANグループの事業セグメントである「情報系」「生活・産業系」
「エレクトロニクス系」をベースにしつつ、
「生活・産業系」については水消費が多いと想定される「飲料充填」
を別グループに分類しました。

関連深い依存要因(生態系サービス)・インパクト要因の特定:ENCOREを用いて、事業所の操業内容に対応した生産プロセスに
関係のある14の生態系サービス、および7つのインパクト
要因を特定しました。

依存とインパクトの評価方法:上記項目として、ENCOREで特定した依存項目
およびインパクト項目のうち、インパクトの程度が「M(中程度)」
以上となっているものを抽出した後、それぞれの項目に紐づく
地球全体の地図データと重ね合わせ、特に留意が
必要な拠点を特定しました。

依存(生態系サービス)の特定:特定した生態系サービスの中で、拠点の操業に特に
関連深く注視すべき項目として、情報系、生活・産業系事業
における地下水と表流水の供給が挙げられました。

インパクト要因の特定:特定したインパクト要因の中で、拠点の操業に特に関連深く
注視すべき項目として、情報系、一部生活・産業系事業に
おける水消費による生態系へのインパクトが挙げられました。
またほとんどの事業内容において、水質汚染、
土壌汚染へのインパクトが高いことがわかりました。

TOPPANグループ事業拠点の分布
生態系状況評価のための指標
No TNFDの要求項目 項目名 概要
1 生物多様性の重要性 生物多様性の重要性(Biodiversity importance) 脊椎動物と樹木の種の豊富さと希少性から計算した、
各地点の生物多様性の重要性を示した指標
2 生態系の完全性 生物多様性の完全性(Biodiversity intactness) ハビタットと自然林の分布データをもとに、
原生自然の状態がどの程度失われているかを示した指標
3 森林面積変化(Forest area change) 各グリッド(周囲約15km)を森林が占める
割合の過去20年での変化量
4 人間活動量変化(Human footprint increase) 様々な人間活動による環境への影響の近年の増減量
(フットプリント増減)
5 コミュニティにおける生態系サービスの重要性 -(レイヤー未整備のため、今回は対象外) -(レイヤー未整備のため、今回は対象外)
6 水リスク 水質汚染度(Water pollution) 水の汚染度(BOD)
7 洪水頻度(Flood frequency) 1985年から2019年までの洪水発生頻度
8 水不足度(Water scarcity) その土地の水資源の供給量と利用量のバランスを
計算した指標(AWARE Index)
生態学的センシティビティ評価
ENCOREで特定した拠点の依存項目と影響項目
No 依存項目 依存度
1 地下水(Ground water) VH
2 表流水(Surface water) VH
3 繊維などの原料
(Fibres and other materials)
M
4 洪水及び風害防止機能
(Flood and storm protection)
M
5 騒音光害抑制
(Mediation of sensory impacts)
M
6 水循環の維持
(Water flow maintenance)
M
7 水質
(Water quality)
M
8 生物浄化
(Bio remediation)
L
9 希釈機能
(Dilution by atmosphere and ecosystems)
L
10 濾過機能(Filtration) L
11 地盤安定化と浸食抑制
(Mass stabilisation and erosion control)
L
12 気候調整
(Climate regulation)
VL
13 土壌の質
(Soil quality)
VL
14 換気機能
(Ventilation)
VL

ENCOREの重要度評価:VH:Very high、H:High、M:Medium、L:Low、VL:Very low の5段階

No 影響項目 影響度
1 水消費(Water use) VH
2 GHG排出
(GHG emissions)
H
3 GHG以外の大気汚染
(Non-GHG air pollutants)
H
4 水質汚染
(Water pollutants)
H
5 土壌汚染
(Soil pollutants)
H
6 固形廃棄物
(Solid waste)
H
7 生息地のかく乱
(Disturbance)
M
直接操業 依存・インパクト要因の特定

ENCOREの重要度評価:VH:Very high、H:High、M:Medium、L:Low、VL:Very low の5段階

②サプライチェーン分析
目的 分析 結果 課題および対応
Locate 木材調達先21カ国における生物多様性および生態系の現況を
調査し、サプライチェーンにおける要注意地域との
接点の有無を把握しました。

ロケーションの整理:木材(パルプ・チップ)調達先について21カ国(一部州・
県レベル)の地理的領域と林業地の領域を重ね合わせ、
木材調達地データとして整備しました。

対象事業の依存・インパクト関係のスクリーニング:
木材調達は、木材生産と直接的に関連している
ことから、生産プロセスを大規模または小規模林業と定義し、
ENCOREツールを用いて、自然への依存・インパクトが
あることを確認しました。

木材調達ロケーションにおける生態系の状況評価:
調達地の地理的領域を、地球全体の生物多様性ビッグ
データと重ね合わせ、生態学的センシティビティに関連する7つ
の指標のスコアを抽出し、要約値(平均)を計算しました。

分析内容:拠点ごとに抽出した7つの指標値のうち特に重要な
生物多様性の重要性と生態系の完全性の二軸で各拠点に着目し、
要注意地域との接点の特定を行いました。

要注意地域の特定:生物多様性の重要性、生態系の完全性双方が
高いのは、南アフリカ、フィジー、マレーシア、
ベトナム、オーストラリアであり、特に留意が必要である
ことがわかりました。

TOPPANグループ重要課題との紐づけ:依存する生態系サービスとして
有害生物抑制機能が関連深く、
陸域生態系利用による生態系へのインパクトが大きい
ことが確認されました。TOPPANグループ環境方針では「生物多様性の保全」
が掲げられており、本領域において、取り組みを強化していきます。

今後の対策:実際の害虫問題の発生状況把握や、林業による森林
劣化の状況把握等を通じ、要因を特定し、実際に対処すべき問題の
設定や対処方法を明らかにしてまいります。
また、当該地域において、木材調達によって実際に
どの程度陸域生態系へのインパクトが生じているかを
把握(詳細調査)していきます。

Evaluate 木材調達先21カ国における要注意地域において、
重要な環境課題を特定するための依存・インパクトを評価しました。

関連する依存要因(生態系サービス)とインパクト要因の特定:
ENCOREを用いて、木材調達に対応した
生産プロセス(大規模または小規模林業)
に関係のある14の依存要因(生態系サービス)および4つのインパクト
要因を特定しました。

依存とインパクトの評価方法:
上記項目として、ENCOREで特定した依存項目およびインパクト
項目のうち、インパクト度「M(中程度)」以上となっている
ものを抽出しています。また、14の依存項目、4つのインパクト項目に
対応する地球全体の地図データを、人工林、木材調達地と重ね合わせることで、
調達地における関連する依存・インパクト項目の現況を評価しました。

依存(生態系サービス)の特定:
特定した生態系サービスの中で、木材調達に特に関連が深く、
注視すべき項目として、有害生物抑制機能、次いで地下水供給機能が
挙げられました。

インパクト要因の特定:特定したインパクト要因の中で、木材調達に特に関連が
深い項目として、陸域生態系利用による生態系へのインパクトが
挙げられました。

木材調達地の生態学的センシティビティ評価
生物多様性の完全性・重要性評価
ENCOREで特定した調達の依存項目と影響項目
No 依存項目 依存度
大規模林業 小規模林業
1 水循環の維持
(Water flow maintenance)
H VH
2 動物エネルギー
(Animal-based energy)
VL VH
3 濾過機能
(Filtration)
VL VL
4 生物浄化
(Bio remediation)
M M
5 有害生物抑制
(Pest control)
H VH
6 病害抑制
(Disease control)
H VH
7 ポリネーション
(Pollination)
H H
8 土壌の質
(Soil quality)
H H
9 繊維などの原料
(Fibres and other materials)
VH VH
10 地下水
(Ground water)
VH VH
11 表流水
(Surface water)
VH VH
12 地盤安定化と浸食抑制
(Mass stabilisation and erosion control)
VH VH
13 洪水及び風害防止機能
(Flood and storm protection)
VH M
14 気候調整
(Climate regulation)
VH VH

ENCOREの重要度評価:VH:Very high、H:High、M:Medium、L:Low、VL:Very low の5段階

No 影響項目 影響度
大規模林業 小規模林業
1 陸域生態系利用
(Terrestrial ecosystem use)
VH VH
2 GHG排出
(GHG emissions)
H H
3 水質汚染
(Water pollutants)
H M
4 土壌汚染
(Soil pollutants)
M
サプライチェーン(木材調達) 依存・インパクト要因の特定

ENCOREの重要度評価:VH:Very high、H:High、M:Medium、L:Low、VL:Very low の5段階

生態系状況評価:
(依存項目)一定閾値以下のスコアをリスク可能性と判断 S:スコアが最も低い A:スコアが2番目に低い B:スコアが3番目に低い
(インパクト項目)一定閾値以上のスコアを影響が大きい可能性と判断 S:スコアが最も高い

木材調達におけるL/E統合分析

■目的
LおよびE統合分析:Lの要注意地域の特定、およびEの依存・インパクト分析の結果を踏まえ、双方の評価結果を組み合わせることで、どの地域の、どの活動を、どのような観点で深掘りし、リスク・機会評価を行うかの検討材料を整理しました。

■分析と結果
「生物多様性の重要性」と「陸域生態系利用」とのL/E統合分析:生態学的センシティビティの代表的な指標である「生物多様性の重要性」と、木材調達先が与える最も大きなインパクトであった「陸域生態系利用」でLE統合分析を行ったところ、南アフリカ、マレーシア、ベトナムでは、場所としての生物多様性の重要性が非常に高いにも関わらず、陸域生態系利用による生態系の脅威が卓越していることが分かりました。
「過去20年の森林面積減少割合」と「有害生物抑制機能」とのL/E統合分析:生態学的センシティビティの指標としては最も現地の自然環境の変化を数値で示していると考える「過去20年の森林面積減少割合」と、「有害生物抑制機能」とでLE統合分析を行ったところ、有害生物抑制機能は全体的に低い傾向があるが、特に日本、スウェーデン、フィジー、マレーシア、フィンランドでは、この20年間で森林面積が減少傾向にあり、生態系サービスの劣化に特に留意が必要であることが分かりました。

調達における依存のLE統合分析
調達におけるインパクトのLE統合分析
3) 機会の考え方

a) 事業機会としての生物多様性
世界経済フォーラムは、ネイチャーポジティブへの経済の移行に伴い、2030年に世界で10兆ドルの市場機会が創出されると試算しています。※1
Nature4Climate(米国の気候変動イニシアティブ)は、自然関連の技術開発に取り組むスタートアップへのプレシード、シード、アーリーステージの合計投資額は、2020-2022年の間で倍以上に増加と算出しています。※2

※1
出典:World Economic Forum, “The Future of Nature and Business”
※2
出典:Nature4Climate, “The state of nature tech: Building confidence in a growing market“

b)TOPPANグループの貢献可能性
TOPPANグループの目指す姿、「『DX』と『SX』によってワールドワイドで社会課題を解決するリーディングカンパニーに」と、自然課題の解決には親和性があります。DX技術を活用した自然資本・生物多様性への貢献機会は、顧客の自然関連課題解決に向けたソリューションの提供という観点からも少なくなく、今後検討を強化していきます。

TOPPANグループ 事業機会のユースケース・関連事例

①サステナブルパッケージ(リサイクル可能なプラスチック製品等)
TOPPANグループは、お客さまの製品のライフサイクル全体を通して、パッケージの最適化設計や持続可能な資源の利用を行うことで、製品の環境負荷低減とお客さまの事業の成長を両立させる環境配慮型パッケージを提供しています。複合素材で構成されているパッケージを単一素材化したモノマテリアルバリアパッケージにより、リサイクル適性の向上を図ります。また、原料の調達においてリサイクル材を使用した製品(メカニカルリサイクルPETフィルム等)では、資源を有効活用するとともに、再資源化スキームも考慮することで、使用後のプラスチック包装資材の河川・海洋等自然への流出による生物多様性へのインパクトを軽減します。

モノマテリアルバリアパッケージ

メカニカルリサイクルPETフィルム

②木材代替建装材商品・化粧シート
1956年の建装材事業開始以来、約60年にわたり家具・建具・床などに使用される化粧シートをはじめとする、くらしを彩る建装材を提供してきました。デザイン開発と技術開発の両輪によって、より高い意匠性と機能性、耐久性をもつ魅力的な建装材商品・空間の開発を行っています。木材代替となるこれら建装材商品が、森林資源(木材)への依存軽減につながり、生物多様性保全に貢献します。

内装用化粧シート

化粧シート 空間デザイン

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A. 組織が気候・自然関連リスクを識別・評価するプロセス

気候関連リスクの識別・評価は、地球環境WG が担当しています。TOPPANグループの事業活動および提供する製品、サービスに対する現行規制、新規規制、技術、法制、市場、評判、急激または緩慢な物理変化といったリスクタイプから識別しています。それらの識別されたリスクタイプから想定されるリスクと機会を、研究開発から調達・生産・製品供給までの上流・下流を含むバリューチェーン全体において抽出し、短期(1年以内)・中期(2~3年)・長期(4~30年以上)の時間軸で評価しています。
また、自然関連の依存・影響、リスク・機会の識別・評価は、地球環境WGの分科会として2023年10月に設置されたTNFD SWG が担当し、今後気候関連リスクと同様に識別・評価、さらに財務インパクトや対策の精査を進めていきます。

B. 組織が気候・自然関連リスクを管理するプロセス

影響評価を踏まえた気候関連リスクの対応計画の策定・推進は、地球環境WGが担当しています。影響評価にあたっては、財務的な観点から重要性を判断しています。評価および対応計画はそれぞれ、サステナビリティ推進委員会に報告・検討された上で、取締役会が報告を受け、気候変動リスクの管理および管理プロセスの監督を行っています。
自然関連の依存・影響、リスク・機会についても、今後TNFD SWGにおいて同様に進めていきます。

C. 総合的リスク管理における気候・自然関連リスクを識別・評価・管理するプロセスの位置付け

TOPPANグループの気候変動を含むESG 課題についてのリスク管理は、取締役会の管理のもと、担当部門とリスクマネジメントWG(責任者:リスク管理担当取締役、メンバー:主管部門リスク担当者、事務局:法務本部コンプライアンス部)が密接に連携して推進する総合的なリスク管理に組み込まれています。リスクマネジメントWGは、年1回のリスクアセスメントを実施し、グループの経営に重大な影響を与えるリスクを「重大リスク」として特定しています。「重大リスク」は、サステナビリティ推進委員会に報告・検討した上で、取締役会が報告を受け、取締役会の管理のもと毎年見直しています。
「重大リスク」の特定にあたっては、グループ全体でのアセスメント結果および中長期視点での顕在化の可能性、発生頻度やインパクトの強弱などを踏まえています。「重大リスク」はTOPPANグループが事業を展開するグローバルな社会・経済環境の変化に加えて、気候変動に伴う環境問題を含むサステナビリティ経営推進の観点からも十分に検討しています。2024年度の「重大リスク」としては、そのひとつとして「気候変動および生物多様性の損失に関するリスク」「環境汚染リスク(有害物質の漏洩、廃棄物の不法投棄等)」を特定しています。
生物多様性損失の重大リスクについても、気候関連課題と同様なリスク管理プロセスを構築していきます。

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A. 気候変動における指標・目標

1) 戦略とリスク管理プロセスに即して、気候関連のリスクおよび機会を評価する際に用いる指標

気候関連リスクにおいては、「Scope1+2およびScope3排出量」「使用電力における再生可能電力の比率」を指標に設定しています。気候関連機会においては、気候変動を含む社会課題への事業貢献の指標として、中期経営計画における「成長事業(DX/SX 領域を含む)の営業利益構成比率」、「TOPPAN Business Action for SDGs」における「温室効果ガス削減に貢献するサービス数」を設定しています。取締役の業績連動型の賞与については、財務指標に加えて温室効果ガス排出量削減目標も評価指標に組み入れられており、気候関連の考慮事項への経営者の役割を明確にしています。

2) 組織が気候関連リスクおよび機会を管理する目標、および目標に対する実績

「TOPPANグループ環境ビジョン2050」を2023年に拡充し、新たなテーマとして「Scope3での温室効果ガス排出実質ゼロ」を掲げ、環境課題への取り組みをサプライチェーン全体や地域社会との協働で進めていくことを宣言しました。また本ビジョンの更新とともに、SDGs目標年に合わせ設定している「TOPPANグループ2030年度中長期環境目標」について、Scope1+2、Scope3それぞれの温室効果ガス排出削減目標を世界共通目標となる「1.5℃水準」に見直しました。

TOPPANグループの気候関連課題における指標・目標および2023年度実績
指標 目的 2023年度実績
目標設定年度 目標値
温室効果ガス排出 Scope1+2 2030年度 2017年度(1,552千t)比
54.6%削減(再エネ比率25%)
2017年度(1,552千t)比
32.7%削減(再エネ比率2.5%)
2050年度 排出実質ゼロ
温室効果ガス排出 Scope3 2030年度 2017年度(6,904千t)比
54.6%削減
2017年度(6,904千t)比
17.3%削減
2050年度 排出実質ゼロ
成長事業の
営業利益構成比率
2025年度 60% 43%
温室効果ガス削減に
貢献するサービス数
2025年度 40 36
2030年度 50

B. 自然関連における指標・目標

TOPPANグループでは、2030年度中長期環境目標を設定し、自然関連課題においてもその達成に向け活動を進めています。

TOPPANグループの自然関連課題における指標・目標および2023年度実績
TOPPANグループ環境課題 関連するグローバルコア指標 目標 対応状況
データ取得状況 今後の対策
生物多様性の保全 土地/淡水/海水の利用と改変

①現時点で管理する総面積

②事業により改変した総面積(土地、淡水、海)

③修復、復元された総面積(土地、淡水、海)

(2030年度中長期目標)
  • 社内外の自然共生地域への貢献
    (TOPPAN株式会社の製造拠点の面積の10%相当)

①TOPPAN株式会社の製造拠点面積:2,302千m2

②データなし(今後に集計、調査の予定)

③修復、復元された総面積:自主的:96千m2

①グループ・海外拠点のデータ取得

②地歴情報の収集・整理

③NPOとの連携拡大

資源の利用/補充
  • 高リスク天然物質の調達量(木材)
  • 用紙原料の調達における合法性確認を2025年度100%
  • TOPPAN株式会社の用紙原料の調達における合法性確認100%
    用紙調達量:474,962t
  • 国別の調達量把握
  • 持続可能な管理計画、認証制度のもとで調達される量の把握
資源循環型社会への貢献 汚染/汚染除去

①土壌汚染物質の排出量

②排水量と、排水中の汚染物質の排出量

③有害・非有害廃棄物の発生量、処理量

④GHG以外の大気汚染物質排出量

③廃棄物最終埋立量:2017年度(8,739t)比 60%削減(5,296t減)
廃プラスチックのマテリアルリサイクル率:2017年度(56%)比 9%pt増(65%)

①データなし(今後に集計、調査の予定)

②総排水量:8,616千m3、BOD負荷量32,799kg、COD負荷量:1,344kg、
窒素排出量:24,793kg、燐排出量:8,626kg

③有害廃棄物排出量:22,295t(うちマテリアルリサイクル量
16,145t、熱回収量3,825t、単純焼却量1,192t、埋立量1,134t、その他0t)
非有害廃棄物排出量:266,666t
(うちマテリアルリサイクル量222,302t、熱回収量37,490t、
単純焼却量3,057t、埋立量3,816t、その他2t)

④VOC大気排出量:3,616t

①集計対象とする土壌汚染物質の特定

②ー

③ー

④ー

  • 再利用可能なプラスチックの使用(販売)量
  • 目標設定なし
  • データなし(今後に集計、調査の予定)
  • 自社調達分、得意先支給材に含まれる場合の調査
水の最適利用 資源の利用/補充

①総取水量と消費量

②水不足地域からの取水量と消費量

③削減/再利用/補給に貢献した水の量

②水リスクの高い(水ストレス40%超)拠点(7拠点)の
取水量削減目標:達成拠点数50%以上(4拠点)

①総取水量:11,316千m3、総消費量:2,700千m3
取水量内訳:工業用水:581千m3(うち、海水由来:3,761m3
上水道:4,760千m3
地下水:5,952千m3
利用雨水:22千m3

②総取水量:661千m3、総消費量:31千m3

Aqueduct4.0での水ストレス40%以上の地域に拠点がある事業所の実績

③循環利用量:2,301千m3

①ー

②水リスク地域の特定

③ー

その他のグローバルコア指標、追加指標につきましても、順次検討していきます

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